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五言目・貴方は対象外
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嘆息するアイリを見て、セシルは軽く眉を顰めた。
「色気を身につけてどうするつもりだ。異性に興味を持ったのか?」
「聞き捨てならないわ、興味が無いとどうして思っていたの」
「男のように短い髪で、化粧もせず、身体に合わない服を着て、私を一切誘おうとしなかったからだ」
何か間違っているかと言わんばかりの彼に、アイリが反論できない。
「そ、そうね⋯⋯でも、確かにそういう事になるのかしら。性的な目で見られて、私は色々と気付いてしまったわ」
娼婦となって、あるいはこの世界で誰かと結ばれて、避妊具を使うしかないと覚悟をしてきたのに、今日酔っ払いから性欲の相手として見られたと思ったとき、嫌悪感で鳥肌が立った。
昼の時間は、アイリの働いている店は閉まっている。娼婦達の自由時間でもあるので、食事や休息に充てる者も多かった。そして、一階にある娼婦達専用の大風呂は人気が高く、湯が沸かされる時間になると、一階は特に賑わっていた。
アイリも娼婦達と一緒に入浴し、気分もさっぱりして、着替えを済ませて浴室を出た直後――あの酔っ払いと鉢合わせたのだ。湯上りの身を舐めるように見たあの男の視線が、どうにも気色悪くて凍りついてしまった。
そして、男はアイリに手を伸ばし――居合わせた娼婦達に袋叩きにあって、駆け付けた老婦人に『出入り禁止』と通達されて追い出されている。
男がいなくなると、ぶわっと冷や汗が噴き出して、涙ぐんでしまった。
自分が情けなくて仕方がなかったからだ。
どこの世界でも嫌な客というのはどうしてもいるものだ、とアイリは思う。
慰めてくれた娼婦達は日頃そんな男達の相手をして、笑顔で接している違いない。収入を得るためと割り切って演技しているのだろうし、自分も娼館で働く一員であるというのに、完全なるお荷物だった。
ルール違反をした男に腹もたち、自分自身にも怒りを覚え――そして、落ち込んだアイリを見て言った老婦人の言葉が胸に刺さった。
『貴女、向いてないわねぇ』
かつて、審査員から散々言われた台詞である。セシルが払ってくれた金は、既にアイリの生活費を越えていたらしく、この期に辞めてもいいとも言われた。
だが、自由の身になれたとしても、元の世界に戻れないままであるし、異世界でどう生きていけばいいというのか。改めてそんな事に気付かせてくれた酔っ払いにまた怒りが沸々とこみ上げたが、娼館の人々にこれ以上迷惑をかけられないので口を噤んで、頷くしかなかった。
それでも感情が押さえられそうになかったとき、今日はセシルと逢う日だと気付いた。
彼に逢って話したい、聞いてほしい――そんな想いに駆り立てられて、彼に会う時間を今か今かと待ち、全力疾走してきたものである。
彼のお陰で気持ちは落ち着いたが、痛感した『色気のない我が身』と『大根役者』問題は解決しないままである。
――やっぱり、どうにかして、純潔を散らしてみるべきかしら!
と、アイリの思考は妙な方向へ走っている。
頭を悩ませていたアイリは、ふと眼前のセシルの顔が引きつっていることに気付いた。清廉潔白なセシルにしてみれば、男女関係の話は敬遠したいものだろう。
「ごめんなさい、貴方にする話じゃなかったわね!」
「⋯⋯私は対象外⋯⋯」
「えぇ!」
すると、何故かセシルの目が据わった。
「それは⋯⋯私が男として終わっているからか? 朝の生理現象すら起きていないからか?」
「あ、やっぱりそうだったのね!」
役立たずの烙印を押された自分の悩みも尽きないが、アイリは彼の将来がもっと心配になった。ぐっと言葉に詰まったセシルの眉間に深い皺が寄る。
「⋯⋯思い当たる男は、もういるのか?」
「まだいないけど――」
セシルは相手として考えてはいけない、とアイリは真っ先に思った。彼を困らせるようなことはしたくなかった。誰というのは思い浮かばなかったが、持参してきたモノは頭を過った。
アレは確かごく一般的な大きさの物に適合するはずだ。家のベッドに転がっているブツもだ。
「――普通の大きさの人がいいわね!」
「⋯⋯っ」
セシルが固まったので、アイリは慌てた。何が、とは言わなかったが、これ以上話すのは酷だろう。
「ごめんなさい、もう止めましょう」
「⋯⋯確かに私は⋯⋯普通ではないな⋯⋯」
「待って、落ち着いて。諦めないで⁉」
明らかに気落ちしていく彼に、アイリは懸命に慰める。すると、セシルの目が憂いを帯び、頬が薄っすらと赤く染まった。
――あぁもう、麗しいわ!
どうして彼はこうも色っぽいのだ。
「アイリ、私は⋯⋯役立たずな男のままでいたくない」
どうして彼は声までいいのだ。
アイリの全身がぞくりと震えた。覚えた事のない感覚は酷く甘く、かっと熱くなる。
「そんなことないわ。貴方は素敵な人よ、いつかきっとできるわ!」
「今できなくては意味がない」
「貴方も切羽詰まっていたの⁉」
仲間だ、とアイリがちょっとばかり思ってしまったとき、セシルから目を離せなくなった。何かを訴えるような熱い眼差し。薄っすらと頬を赤らめているのは、もはや反則ではないだろうか。
「貴女に触れても⋯⋯いいか?」
処女歴二十四年とはいえ、何を問われているのかわからないほど、アイリは子どもではない。
それに、彼のブツは使えないとはいえ、『酷い』代物で『女を嘆かせる』という。つまり、アイリが異世界に持ち込んでしまったモノが、十分収まるはずだ。
ならば、一度試みてみるのも、いいかもしれない――。
アイリはそんな事を考えてしまい、立ち上がったセシルの手を取った。
隣の寝室に入ると、三人は寝られそうな大きなベッドが中央に陣取っていた。セシルに促されて靴を脱いでベッドに上がってアイリは、まず悩んだ。
自ら脱ぐべきか、脱がされるべきか。このまま座っていて押し倒されるのを待つべきか、自ら寝るべきか。それとも、彼をリードするべきなのか。
娼婦のお姉様たちが『男性の好みによるから空気を読むといいわ』とアドバイスしてくれたことを思い出す。
それも場の空気をおかしくしないよう、より性的な興奮を誘うように……。
――よし、やるわよ!
意気込んで、セシルに視線を向けたアイリは、「ぎゃあ⁉」と思わず叫んで、早々に空気をぶち壊した。
ベッドに立ったセシルが、もう既に上半身裸だったからだ。
肩幅は広く、細身でありながら引き締まり、腹部は美しく六つに均等に割れている。肌理が細かく、色白でありながら、胸の頂は仄かに赤く、たいへんに扇情的である。
顔立ちからして秀麗であるにも拘らず、脱げば上半身もお美しい。ついうっかり魅入ってしまったアイリだが、セシルは顔を曇らせた。
「すまない、最近少し太ったんだ。脇腹に贅肉が付いた気がする――」
どこをどう見ても本気らしいセシルに、アイリは顔を引きつらせた。
――ダイエット不要と全身が語っている貴方は、言ってはいけない台詞だわ!
心の中で絶叫したアイリを見て、セシルは焦ったように続ける。
「――これは、私の自己管理が不足していただけだ。貴女は何も気にしなくていい」
「気になるわ⁉」
この麗しい身体を前に、自分の裸体を晒せというのか。
アイリは罰ゲームのような気がしたが、見るからにセシルが落ち込んだものだから、すぐに続けた。
「わ、分かった。大丈夫よ」
「⋯⋯もっと落胆させると思うが⋯⋯」
セシルはそう言って、ズボンのベルトを外した。性行為の進め方としては、あまりにぎこちない。女性が苦手な彼は、経験が浅いか、もしくは無いのだろうとアイリも察する。今もアイリを気遣って、自ら先に脱ごうとしてくれているのが分かった。
――貴方のその優しさだけで、十分だと思うわ⋯⋯。
経験を積んで、女性への苦手意識が無くなれば、たとえセシルの下半身が『酷く』、『女を嘆かせる』モノであっても、好きになった女性と良好な関係が築けるはず。
不意に何故かアイリの胸がずきりと痛む。彼は娼婦として自分を見ているだけに過ぎないと分かっているのに、悲しく思うなんておかしい。
心中に過った葛藤は、一瞬にして別の事で吹き飛ばされた。
「え」
「やはり⋯⋯ひどいか?」
全裸の姿を晒したセシルの中心は――たいへん立派なものだった。
「色気を身につけてどうするつもりだ。異性に興味を持ったのか?」
「聞き捨てならないわ、興味が無いとどうして思っていたの」
「男のように短い髪で、化粧もせず、身体に合わない服を着て、私を一切誘おうとしなかったからだ」
何か間違っているかと言わんばかりの彼に、アイリが反論できない。
「そ、そうね⋯⋯でも、確かにそういう事になるのかしら。性的な目で見られて、私は色々と気付いてしまったわ」
娼婦となって、あるいはこの世界で誰かと結ばれて、避妊具を使うしかないと覚悟をしてきたのに、今日酔っ払いから性欲の相手として見られたと思ったとき、嫌悪感で鳥肌が立った。
昼の時間は、アイリの働いている店は閉まっている。娼婦達の自由時間でもあるので、食事や休息に充てる者も多かった。そして、一階にある娼婦達専用の大風呂は人気が高く、湯が沸かされる時間になると、一階は特に賑わっていた。
アイリも娼婦達と一緒に入浴し、気分もさっぱりして、着替えを済ませて浴室を出た直後――あの酔っ払いと鉢合わせたのだ。湯上りの身を舐めるように見たあの男の視線が、どうにも気色悪くて凍りついてしまった。
そして、男はアイリに手を伸ばし――居合わせた娼婦達に袋叩きにあって、駆け付けた老婦人に『出入り禁止』と通達されて追い出されている。
男がいなくなると、ぶわっと冷や汗が噴き出して、涙ぐんでしまった。
自分が情けなくて仕方がなかったからだ。
どこの世界でも嫌な客というのはどうしてもいるものだ、とアイリは思う。
慰めてくれた娼婦達は日頃そんな男達の相手をして、笑顔で接している違いない。収入を得るためと割り切って演技しているのだろうし、自分も娼館で働く一員であるというのに、完全なるお荷物だった。
ルール違反をした男に腹もたち、自分自身にも怒りを覚え――そして、落ち込んだアイリを見て言った老婦人の言葉が胸に刺さった。
『貴女、向いてないわねぇ』
かつて、審査員から散々言われた台詞である。セシルが払ってくれた金は、既にアイリの生活費を越えていたらしく、この期に辞めてもいいとも言われた。
だが、自由の身になれたとしても、元の世界に戻れないままであるし、異世界でどう生きていけばいいというのか。改めてそんな事に気付かせてくれた酔っ払いにまた怒りが沸々とこみ上げたが、娼館の人々にこれ以上迷惑をかけられないので口を噤んで、頷くしかなかった。
それでも感情が押さえられそうになかったとき、今日はセシルと逢う日だと気付いた。
彼に逢って話したい、聞いてほしい――そんな想いに駆り立てられて、彼に会う時間を今か今かと待ち、全力疾走してきたものである。
彼のお陰で気持ちは落ち着いたが、痛感した『色気のない我が身』と『大根役者』問題は解決しないままである。
――やっぱり、どうにかして、純潔を散らしてみるべきかしら!
と、アイリの思考は妙な方向へ走っている。
頭を悩ませていたアイリは、ふと眼前のセシルの顔が引きつっていることに気付いた。清廉潔白なセシルにしてみれば、男女関係の話は敬遠したいものだろう。
「ごめんなさい、貴方にする話じゃなかったわね!」
「⋯⋯私は対象外⋯⋯」
「えぇ!」
すると、何故かセシルの目が据わった。
「それは⋯⋯私が男として終わっているからか? 朝の生理現象すら起きていないからか?」
「あ、やっぱりそうだったのね!」
役立たずの烙印を押された自分の悩みも尽きないが、アイリは彼の将来がもっと心配になった。ぐっと言葉に詰まったセシルの眉間に深い皺が寄る。
「⋯⋯思い当たる男は、もういるのか?」
「まだいないけど――」
セシルは相手として考えてはいけない、とアイリは真っ先に思った。彼を困らせるようなことはしたくなかった。誰というのは思い浮かばなかったが、持参してきたモノは頭を過った。
アレは確かごく一般的な大きさの物に適合するはずだ。家のベッドに転がっているブツもだ。
「――普通の大きさの人がいいわね!」
「⋯⋯っ」
セシルが固まったので、アイリは慌てた。何が、とは言わなかったが、これ以上話すのは酷だろう。
「ごめんなさい、もう止めましょう」
「⋯⋯確かに私は⋯⋯普通ではないな⋯⋯」
「待って、落ち着いて。諦めないで⁉」
明らかに気落ちしていく彼に、アイリは懸命に慰める。すると、セシルの目が憂いを帯び、頬が薄っすらと赤く染まった。
――あぁもう、麗しいわ!
どうして彼はこうも色っぽいのだ。
「アイリ、私は⋯⋯役立たずな男のままでいたくない」
どうして彼は声までいいのだ。
アイリの全身がぞくりと震えた。覚えた事のない感覚は酷く甘く、かっと熱くなる。
「そんなことないわ。貴方は素敵な人よ、いつかきっとできるわ!」
「今できなくては意味がない」
「貴方も切羽詰まっていたの⁉」
仲間だ、とアイリがちょっとばかり思ってしまったとき、セシルから目を離せなくなった。何かを訴えるような熱い眼差し。薄っすらと頬を赤らめているのは、もはや反則ではないだろうか。
「貴女に触れても⋯⋯いいか?」
処女歴二十四年とはいえ、何を問われているのかわからないほど、アイリは子どもではない。
それに、彼のブツは使えないとはいえ、『酷い』代物で『女を嘆かせる』という。つまり、アイリが異世界に持ち込んでしまったモノが、十分収まるはずだ。
ならば、一度試みてみるのも、いいかもしれない――。
アイリはそんな事を考えてしまい、立ち上がったセシルの手を取った。
隣の寝室に入ると、三人は寝られそうな大きなベッドが中央に陣取っていた。セシルに促されて靴を脱いでベッドに上がってアイリは、まず悩んだ。
自ら脱ぐべきか、脱がされるべきか。このまま座っていて押し倒されるのを待つべきか、自ら寝るべきか。それとも、彼をリードするべきなのか。
娼婦のお姉様たちが『男性の好みによるから空気を読むといいわ』とアドバイスしてくれたことを思い出す。
それも場の空気をおかしくしないよう、より性的な興奮を誘うように……。
――よし、やるわよ!
意気込んで、セシルに視線を向けたアイリは、「ぎゃあ⁉」と思わず叫んで、早々に空気をぶち壊した。
ベッドに立ったセシルが、もう既に上半身裸だったからだ。
肩幅は広く、細身でありながら引き締まり、腹部は美しく六つに均等に割れている。肌理が細かく、色白でありながら、胸の頂は仄かに赤く、たいへんに扇情的である。
顔立ちからして秀麗であるにも拘らず、脱げば上半身もお美しい。ついうっかり魅入ってしまったアイリだが、セシルは顔を曇らせた。
「すまない、最近少し太ったんだ。脇腹に贅肉が付いた気がする――」
どこをどう見ても本気らしいセシルに、アイリは顔を引きつらせた。
――ダイエット不要と全身が語っている貴方は、言ってはいけない台詞だわ!
心の中で絶叫したアイリを見て、セシルは焦ったように続ける。
「――これは、私の自己管理が不足していただけだ。貴女は何も気にしなくていい」
「気になるわ⁉」
この麗しい身体を前に、自分の裸体を晒せというのか。
アイリは罰ゲームのような気がしたが、見るからにセシルが落ち込んだものだから、すぐに続けた。
「わ、分かった。大丈夫よ」
「⋯⋯もっと落胆させると思うが⋯⋯」
セシルはそう言って、ズボンのベルトを外した。性行為の進め方としては、あまりにぎこちない。女性が苦手な彼は、経験が浅いか、もしくは無いのだろうとアイリも察する。今もアイリを気遣って、自ら先に脱ごうとしてくれているのが分かった。
――貴方のその優しさだけで、十分だと思うわ⋯⋯。
経験を積んで、女性への苦手意識が無くなれば、たとえセシルの下半身が『酷く』、『女を嘆かせる』モノであっても、好きになった女性と良好な関係が築けるはず。
不意に何故かアイリの胸がずきりと痛む。彼は娼婦として自分を見ているだけに過ぎないと分かっているのに、悲しく思うなんておかしい。
心中に過った葛藤は、一瞬にして別の事で吹き飛ばされた。
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