辺境の娘 英雄の娘

リコピン

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第三章(最終章)

8-1.

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8-1.

「…大夜会での騒ぎが噂になりはじめています。べブスファーの一員ともあろうものが、本当に、とんでもないことをしでかしてくれましたね、サリアリア」

ため息とともに、お義母様の口から吐かれる辛辣な言葉。

「何とか沈静化を図ってはいますが、完全に後手に回ってしまっています。どうしてすぐに報告しなかったの?マクライド、貴方は一体何をしていたの?」

でも、お義母様はそう言うけれど、そんなつもりは、本当になくて。

「先日の夜会では、カミラ夫人に叱責を受けたばかりだと言うのに」

深い深いため息。でも、私が悪いわけじゃないのに。わかってもらえないのが悲しくて、涙が込み上げてくる。

―本当に、どうしてこんなことになっちゃったんだろう





子どもの頃の夢は、お父さんみたいな英雄になること。みんなが憧れて、みんなに頼られて。私も、そんな風になりたいって思った。

士官学校に入ったのも、そんな夢を叶えるため。お父さん譲りで、魔力はみんなよりずっと高かったし、勉強も嫌いじゃなかったから。

学校ではいじめられることもあったし、それよりもっとひどいこともされたけど。だけど、負けたくない!って思ったから。勉強も、訓練も、絶対に手を抜かないで努力し続けて。そうしたら、それを認めてくれるお友達はたくさん出来た。

一生懸命頑張って、そんな私をずっと支えてくれたマクライドに、士官学校の卒業間近に「結婚しよう」って言われたときは、すごく嬉しくって!

マクライドには、「家に入ってもらうから、軍には入らないで欲しい。サリアがせっかく勉強してきたのが無駄になるけれど」って謝られたけど。

そんなの全然、問題じゃなかった!だって、大好きな人とずっと一緒にいられるんだから!

それに、今まで頑張ったことも全然無駄になんかなっていない。一緒にここまで頑張って来たお友達は、一生の宝物だから!

でも、そのお友達や家族には、次男とは言え、公爵家の人間と結婚したら苦労するって、たくさん言われた。家族にも、簡単には会えなくなるって。

みんな、たくさん心配してくれて。有りがたいなって思ったけど。でも、それでもいいと思ったんだ。

卒業して直ぐに軍人さんになって、色んな所に遠征に行ってたラギアスくんとは、その頃には、ほとんど会えなくなっていたし。

クレスト君も、お父さんのお仕事のお手伝いがとっても忙しくて、たまに夜会で会えればいいくらいで。

それでも、ディノールくんは、学校に用があるからって、たまに遊びに来てくれてはいたんだけど。

マクライドと結婚すれば、ずっと彼と一緒に居られるし、ラギアスくん達ともまた仲良く出来る。家に招いて、懐かしい話をいっぱいして。ずっと皆で仲良くしていこう!そう思ってた。

だけど、やっぱり学生時代みたいには、皆に会えなくて。寂しかったけど、でも、マクライドのお嫁さんになって、新しい出会いもたくさんあった。

結婚してからは、高位貴族の人が集まる夜会に出席するようになって。今まで知らなかったような世界も、たくさん知ることが出来た。

意地悪を言ってくる人も、やっぱり居たけど、仲良くなれたお友達はみんな優しかったから、負けずに顔をあげていられた。それでも、たまに挫けて泣いちゃった時は、マクライドが側に居てくれて。

そんな風に過ぎていく毎日。キラキラしてて、楽しくて。マクライドと結婚できて、本当に幸せだった。

それなのに―




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