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1章:癒しを求めたはずが

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 はい、という事で…いつもの様に車でキャンプ場へと向かい、駐車場に車を止めて、受付を済ませた。車に積んでいたキャンプ道具を背負い、いざ。と振り向いたら、見えていたキャンプ場のロッジというか…受付すら消え去り、車さえもなくなって、日も差さない…というと語弊はあるけど、薄暗く、木々が鬱蒼と生い茂る森…?山…?の、中にぽつんと立ってた。

「えーと…」

 なんでいきなり!?まさか気でも失って夢でも!?まさか立ったまま気を失った…いやそんなまさか。…いくらキャンプ場で、山の中に作られていると言っても、駐車場は平坦だったし、足場が悪いとかじゃなかったし。コンクリではないけど、砂利で整地されてたし!?転んで頭打った、なんて事もない、はず?

「とりあえずほっぺたを…痛い」

 よく夢か確認する手法としてある頬をつねってみる。痛い。夢にしては…木々の匂いとか、風の感じとかすごくはっきり分かる。え、夢じゃないの?まさか…いや、それはちょっと待とうか。違った場合、痛い人になっちゃう。
 とりあえず…

「突っ立っててもしかたないし…歩いてみよう」

 夢ならそのうち醒めるはずだし。いやでも…夢見てる時ってそんな事考えないよねぇ。
 歩き出すと、なんというか…今までのキャンプって、本当に整えられたものだと分かる。だって…木とか石とかで足場が悪いし…
 でも、しばらく進んだら、誰かが通ったのか、道っぽい…ような、まっすぐではないけど草が生えずにいる場所があった。だから、その通りやすい場所を歩く。

 多少は歩きやすくなったとはいえ、疲れと喉の渇きを感じた。そういえばどれ位歩いてるんだろう。立ち止まって、背負っているリュックから水を取ろうとしたら、ガサガサという音と共に、

「ガアアアア!」
「!?」

 音がした方を見たら、叫ばれた!その正体は、く、くまー!?いやいやまって、こわっ!

「ぎゃああぁぁあ!」

 そんな叫び声をあげて、猛ダッシュ!夢でもめっちゃ怖い!現実だとしたらこんな叫び声上げたら駄目なんだろうけど!でも無理叫んじゃう!クマとの距離は結構離れてたし、がさがさばきばきと音がするけど…かなり身体が大きくて木が邪魔してすぐには追いつけないみたいだけど、どうすればいいのこれ!?

「グガア!ガアア!」

 背後でめっちゃ叫ばれる!怖い!夢なら早く醒めてよ!てか、良く走れてるな私!?リュックも背負ってるのに!!

「おい、そのまま走ってろよ!」

 は?なんで男の人の声?と、考えたのも束の間で、ぐしゃ、とかズドンとか…叫び声とか聞こえるんだけど。

「もういいぞ。止まっ…て、るな」
「あの、げほっ、けふ」
「あー落ち着いたらでいい。ああ、それか。かなり遠くまで聞こえたから助かったな」

 男性が足元の草をがさがさとかき分けて来る。お礼を言いたいのに、息が切れて話せないし、顔も上げられない。助かった、の?
 何か言ってるけど、膝に手をついて息をする事しかできない。それって何とか、聞こえたって何とか聞きたい事あるけど、無理!

「あの魔物を回収したい。ここで待っててくれ」

 まだまだぜーぜーしてるからこくこくと頷くと、その人はまた離れて行った。近くの木に手をついて、ずるずると座り込んでしまった。
 座った事であの男の人の背中が目に入ったけど…なんか…ファンタジーっぽい恰好。背中に剣に、髪は金髪…あれ。日本語話してた、よね。染めてるとかかな。

 なんてのんきに考えていた私だけど、この出会いにより異世界転移であると知らされる事になるとは思いもよらなかったわよ…
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