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第四章 永遠の凍雨

永遠に…

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この空気の中に、僕がいるのは変で。
この場を離れようと、樹さんの手をそっと解く。
……と、それを許さないと僕の手を追い掛け、掴んで引き止める。

「実雨……」
「………お茶、煎れてくるね」




台所に捌け、入口の壁にもたれ掛かると、胸に手を当てて大きく深呼吸をする。

「………」

今日だけでも、沢山の事がありすぎて……
どうしよう……まだ、全然落ち着かない。

やかんに火を掛け、少しここで落ち着こうと、冷蔵庫と壁の隙間に収納された折り畳みの椅子を引っ張り出す。……と、視界の端に映る小窓が、やけに明るく感じて──


……カタンッ

窓を開けて見れば、外は眩い程真っ白な──雪景色。


はぁ……
窓枠に両手を掛け、外に向かって息を吐けば……白い息が空気中に広がって、儚く消えていく。

ピンと張り詰めた空気。
静かで、幻想的な世界。
サッシに触れる手のひらと、外気に触れた鼻先が直ぐに冷え、頬が切れそうな程寒くてぶるっと身体が震える。
けど……構わず窓から顔を出し、灰色の空を見上げた。


「……」

──雪って、氷の結晶だよね。

確か、:凍雨(とうう)って名前の雪があった気がする。
雲から降る雪が、一度上空で溶けて、雨粒になって……それから再び凍ったものだって……

……何だか、樹さんと父の事みたい。


徐に、窓から片手を伸ばす。
でも中々届かなくて。窓枠に掛けた手に力を込め、爪先立ちをし、思いっ切り身を乗り出す。
その指先──薬指の腹に、雪がふわりと舞い落ちる。



──ねぇ、大空……


大空が逝なくなって……あの時言えなかった想いはもう、二度と伝える事はできないけど……

……でも、だから……
大空を好きだったこの気持ちを、永遠に閉じ込めて……胸の奥に、大事に仕舞っておくね……


──この雪のように。






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