アラカルト -a la carte-

真田晃

文字の大きさ
36 / 49
6rd

商店街×猫の鳴き声

しおりを挟む
※こちらの作品は、『橋×靴紐』まで一連のストーリーとなっております。




──鈴の音色は、嘘を暴く

輪廻の果てに、真実まことはあるか──







……リンッ、

猫の鳴き声が聞こえた後、弾むような鈴の音が遠くで鳴る。

リンリン、リンッ……

その音が次第に近付く。



古びた商店街。その入り口付近にある肉屋の路地裏。名物コロッケの匂いにつられ、青いポリバケツに群がる野良猫どもなら見慣れている。
が、ソイツらは大概毛並みが悪く、飼い猫の印である首輪などはしていない。
ましてや、可憐な鈴の音を鳴らす猫など──


「お前には……女難の相が出ている」


リンッ……

一瞬で張り詰める空気。
その中で響く、若い女の声。
感情の一切を感じさせない話し方は、鋭利な金属で心臓をひと突きされたような気分だ。何より、気配を感じなかった事も助長しているが。

「……」

振り返れば、直ぐ背後にいたのは──制服姿の女子高生。
ストレートの長い黒髪。それなりに色気のある年頃の身体付き。目元には、猫の半面マスク。被っている……というより、その周辺の皮膚が盛り上がり、食い込んで一体化していると言った方が適切だろう。

「このままだとお前は、不幸な末路を辿る」
「……」

仮面の下から感じる、鋭い視線。
咥えていたしけもくが、ポロッと足元に落ちる。
獣人……いや、異形ともとれるそれを目の当たりにし、瞼が自然と大きく持ち上がる。

「一体何があったか、答えろ」

女が一歩、近付く。
その時、丈の短いスカートが僅かに捲れ、剥き出された生の太腿──絶対領域が目に付く。
こんな異様な状況にも関わらず、男の性というのは健在で。つい視線を向けてしまった行為に呆れながらも、後悔はなかった。

「……」

顔を見なけりゃ、美味そうなただの女子高生。丁度年上の女に辟易していた所だ。ちょっと話に付き合って、上手いことやり込めちまうか。

「女難、かどうかは解らねぇが。俺には結婚を約束した女性がいた。
純粋で、心根の優しい、俺思いのいい女だ。
でもある日……交通事故に遭って、あっけなく逝っちまってな──」
「──なら、その女の怨かもしれない。
女難を解きたければ、ついてくるがいい」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

処理中です...