双葉の恋 -crossroads of fate-

真田晃

文字の大きさ
2 / 62

チョコ 菓子 愛



駅前通りから少し奥まった場所にある、こじんまりとした喫茶店。


夕刻に来るいつものお客様は、いつもの窓際席に座り、いつものコーヒーを注文した後、一人静かに読書を嗜む。やがて空が茜色に染まると、読みかけの本に栞を挟み、店員の僕に丁寧に挨拶をし店を出て行く。

営業の外回りを終え、帰社するまでの隙間時間を利用しているのだろう。スラッと背の高いスーツ姿の彼は、面長ながら切れ長の大きな瞳が優しそうに潤み……目か合う度に、不覚にも胸が高鳴ってしまっていた。



カウンターの奥にある洗い場で、片付けをしながら時計を仰げば、いつもの彼が来る時間を教えてくれた。

……カランッ

その時ドアベルが鳴り響き、肩がびくんと跳ねる。

「いらっしゃいませ」

タオルで手を拭きながら振り返れば、やはりいつもの彼。
いつもの席に向かい、羽織っていたトレンチコートを簡単に纏めると、ビジネスバッグと共に、空いた椅子に置く。

「……あの……いつもの、で宜しいでしょうか?」

いつもの席に腰を落ち着ける彼に、怖ず怖ずと尋ねてみる。
こういう聞き方をしたのは初めてで。トレイを持つ手の指先が震えるのが解った。
その聞き方に驚いたのか。少し見開いた目が此方を向いた。

「……あ、いえ。今日は──」

癖なのだろう。少し速めの瞬きを数回し、彼が窓の外へと視線を逸らす。

「ホットココアを」


勇気を振り絞って尋ねたものの……
いつもとは違うものが注文されて、少しだけ凹む。

でも、確かに今日は雪もチラついていたし……ココアが飲みたくなる程、寒いよね。
確かココアって、身体を温め易くして冷めにくいって……聞いた事あったな……


カウンターに戻り、予め温めておいたカップにココアを入れ、温めた牛乳を注いで溶かす。
いつもとは違う、甘い香り。
優しい色合いのココアをトレイに載せた後、不意に、先程彼が見た窓の外へと視線を向ける。

……あ……

洋菓子店の入口にある垂れ幕に『バレンタイン』の六文字が。
ふと、手元にあるココアに視線を落とす。


別名……ホットチョコレート。


「──っ!」

かぁぁ、っと頬が熱くなる。

バレンタインの今日。思いがけず僕が彼にチョコを渡す形に……

そう思ったら耳まで熱くなり、緊張でトレイを持つ手が震えた。


感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

新生活始まりました

たかさき
BL
コンビニで出会った金髪不良にいきなり家に押しかけられた平凡の話。

君に二度、恋をした。

春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。 あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。 ――もう二度と会うこともないと思っていたのに。 大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。 変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。 「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」 初恋、すれ違い、再会、そして執着。 “好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか―― すれ違い×再会×俺様攻め 十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

DONKAN

すずかけあおい
BL
不純な攻め×純情鈍感受け。 大好きな幼馴染の朋春は、幹人を可愛がってくれていた――少し前までは。 〔攻め〕朋春 高2 〔受け〕幹人 高1

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました