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第100話:偽りの素性
しおりを挟む(恋人のふり、か。おそらく兄さんは、ハリアスから俺たちのことを聞いて気を利かせてくれたんだろうな。マナも嫌じゃないと言ってくれたし、ずるいかもしれないが、マナに俺のことを恋人として意識してもらういいきっかけになるかもしれない)
ライツが隣に座る愛那の手の指先に触れて指を絡める。
すると動揺した愛那が恥ずかしげに顔を赤くして俯いた。
(マナ。そんな可愛らしい反応をするから、君に好かれているんじゃないかと、馬鹿な男が誤解してしまうんだ)
ライツが苦く笑う。
愛那の好きな男がどんな人物だったのか、ずっと気になっていた。
(マナの好きな相手と声がそっくりだということは、俺にとってマイナスでしかない。これから先ずっと、俺の声がその男のことを思い出すきっかけになり続けるのだから。・・・・・・声以外はどうなんだろう? マナはその男のどういった所に惹かれたんだろうか?)
「ライツ?」
リオルートに呼ばれハッと顔を上げた。
こちらを見ている兄へとライツはごまかすように笑顔を作り「すみません」と言って言葉を続ける。
「それで、マナの偽りの素性については、どういう設定にするおつもりですか?」
「あぁそれなら、マナはドーバー伯爵夫人の、遠い親戚のお嬢さんという風に紹介するのが一番だろう」
「なるほど。ハリアス経由で知り合ったというのであれば、不自然さは感じないでしょうね」
「ああ」
そんな兄弟の会話に愛那が首を傾げて「あの・・・・・・」と訊いてくる。
「ドーバー伯爵夫人というのは?」
微笑を浮かべたライツが愛那へと答える。
「マリス・ドーバー伯爵夫人。ハリアスの奥さんのことだよ」
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