40 / 49
第四章 元冒険者、真の実力を見せつける
40:いざ、久々の上級ダンジョンへ
剣で攻撃する遊撃隊を前衛に、弓で攻撃する迎撃隊を後衛にして上級ダンジョンに入る。
前からはディスモンド、後ろからは私が指示を飛ばすことになっている。
「ルーマシュムです! 体液には毒があるので注意してください!」
上級ダンジョンに入ってすぐ、毒キノコのモンスターの大群に襲われた。
だが、これは上級ダンジョンでは普通のことだ。
「オラッ!」
周りにいる騎士たちが、どんどんルーマシュムを切り裂いていく。
「あ、アウバール!」
フクロウのようなモンスターがこちらに滑空してきているのが見えたとたん、私はサッと弓を引いて矢を放つ。
ガウッ!
め、命中した……! こんなにきれいにモンスターに命中したのって、まだ二回目くらいな気がする。
矢が急所に刺さったアウバールは、真下に落下していった。
「今みたいに飛んでくるモンスターもいますので、上からの攻撃にも気をつけてください!」
しかし、指示をしている途中にもお構いなくモンスターは現れる。アウバールがまとめて三体も襲来してきたのだ。
「ホントだ、前より危険!」
ほぼ同じ方向から飛んでくるアウバール。まずは真ん中のアウバールを撃ち落とした……と思ったその時だった。
何かにあおられたように、もう二体のアウバールがバランスを崩し、そのスキを遊撃隊に突かれてしまったのだ。
「な、何だ今の!」
アウバールを突いて倒した騎士が思わず声を上げた。
自分でもこの現象は初めて見るものだった。ダンジョンの中に風はなく、むしろ風通しが悪くてジメジメしているくらいだ。どうしたものか。
そんなことを考えていると、私の視界の隅で何かをとらえた。それがモンスターだと分かった瞬間、腰に差してある双剣の片方だけを抜き、弓を左手に持ったまま斬りつける。
一撃で倒したあとに、ようやくモンスターの種類が分かった。
「危ない、グッフド・ウォルだった」
「ありがとう」
オオカミを馬のサイズまで大きくしたようなモンスターで、中級ダンジョンの奥の方にもいる、そこそこ強いモンスターである。
このように、足音も立てずにひっそりと襲い掛かってくる上、攻撃力も高い。噛みつかれたら最悪の場合、引きちぎられて腕がなくなることもある。
「横からの奇襲にも注意してください!」
もちろん、危ないのは横だけではない。後ろからわずかな風の流れを感じたので、剣を構えながら振り返る。
キィーンッ!
くちばしの先と私の剣がぶつかって鋭い音を立てた。倒し切っていないかったアウバールの奇襲である。
最初に現れたルーマシュムは集団のことが多いが、アウバールはあまり群れることがない。
「はぁっ!」
私は剣を防御から攻撃にすぐさま切り替えると、アウバールを斬り倒す。
このあとも奇襲に備えて陣形の変更をしながら、モンスターの討伐を進めていった。ダンジョンの中盤まで進めたので、私以外初めてのモンスター討伐にしては上出来だった。
騎士団がある王都から冒険者ギルドは近いので、討伐が終われば騎士団寮に帰るのだが、私だけは一緒に帰らなかった。
一人、管理人室を訪ねている。
「改めてお久しぶりです、管理人さん」
「元冒険者のクリスタル・フォスター・アーチャーか」
「今はその名字使ってませんけどね」
嫌味っぽく言われたが、そこはスルーしておく。嫌味をスルーするのには慣れている。
「あの、兄や姉は今大丈夫なんですか。さっき『特に上級冒険者は満身創痍になっている』とおっしゃっていたので……」
一瞬、管理人が目をそらす。
察した。きっとよくない状況なのだろうと。
「部屋は半年前と変わってませんか」
「サムとクロエは変わっていない。セスだけ変わって、今はサムと同じ部屋を使っている」
「分かりました。ありがとうございます」
それだけ聞いてから、私はすぐさま階段に走る。
まずはお兄さまたちがいる部屋に。
「ここだね。確かにサムお兄さまが使ってた部屋だ」
部屋番号が書かれたプレートの下には、あのころと同じ位置にサムの名前が、その下には新しくセスの名前があった。
コンコンコン
「ごめんください、クリスタルです」
「えっ、クリスタル!?」
ドアをノックして名乗ると、セスらしき人の驚嘆している声が聞こえてきた。
「開けるから少し待ってろ」
階段を駆け上がってきて少し呼吸が乱れているのを整えながら、目の前のドアが開くのを待つ。
こちらに迫ってくる音が足音ではなく、何かをずっているような音である。
まさか……。
「よっと」
鍵をひねる音はせずにドアが開く。
「足が動かしにくいから開けにいくのが遅くなった。ごめん」
セスの右足にはぐるぐるに包帯が巻かれていた。
「鍵閉めてないなら私がドア開けましたのに……」
「そうだな。開けてもらえばよかった」
「向こうまで肩貸しますよ」
というより、セスから私に「ごめん」と言ったのは初めてだった。頑なに私に謝ることをしなかったあのセスが。
「セスお兄さまは、足と左腕ですか」
「あとは、今は服で見えないけど、全体的にひっかき傷」
「……本当に満身創痍なんですね」
「いや、お兄さまの方がひどいよ。見て」
私は前を向いてサムを探す。ベッドに視線を向けると、いた。
「久しぶり。増援に来てくれたんだな」
「!」
サムを直視できない。顔を見ようとすると、その頭に巻かれている包帯に目がいってしまうからだ。
「これか? 俺はデス・トリブラスの攻撃を頭から食らって、このザマだ。気絶してもうすぐで死ぬところだったそうだ」
あんなに強いお兄さまたちでさえ、こんなことに……。
「お姉さまもお兄さまと同じくらいのケガをしている。それくらい強いってことだ」
お、お姉さまも!? このあとすぐ見に行かなくちゃ。
そんなことを思っていると、セスが私の腰のあたりを指さす。
「ところで、その剣は?」
「両腕に一つずつワッペンがついてますよね? そういうことです」
私は上半身をひねって、二人に色違いのワッペンを見せる。
「クリスタル、まさか――」
「騎士になっただけじゃなくて――」
「双剣騎士でもあります。長剣もできるので、弓・双剣・長剣の三刀流です」
「三刀流……。そもそも騎士になれたのは、リッカルドのスカウトだろ?」
「そうです。長剣と双剣はオズワルドさんに教わりました」
「「うそだろ……」」
絶句している二人だったが、サムが何かを思い出したようだ。
「クリスタルは覚えていないと思うが、木の棒を振り回してお父さまに怒られていたな。『剣使いでもないのにやめろ。そもそもお前は女だ。男子のようなことをするんじゃない。お前には弓しかないんだ』って言われてたか」
確かに覚えていないが、父がそう言っている姿が目に浮かぶ。そのときから弓じゃなくて剣をやりたかったのかもね。
懐かしむような目から、真剣な表情に変わるサム。
「俺たちが動けるようになるまでは、モンスターをダンジョンの外だけには出させないようにな。頼むぞ」
「そのために来たんですから、もちろん任務をやり遂げてみせますよ」
言ってから気づいたが、こんなに自信満々なところは兄たちに見せたことがなかった。
「……そっちの方がクリスタルには合っているようだな」
「何かおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない」
サムのぼそっとしたつぶやきだが、私の地獄耳ははっきりととらえていた。
前からはディスモンド、後ろからは私が指示を飛ばすことになっている。
「ルーマシュムです! 体液には毒があるので注意してください!」
上級ダンジョンに入ってすぐ、毒キノコのモンスターの大群に襲われた。
だが、これは上級ダンジョンでは普通のことだ。
「オラッ!」
周りにいる騎士たちが、どんどんルーマシュムを切り裂いていく。
「あ、アウバール!」
フクロウのようなモンスターがこちらに滑空してきているのが見えたとたん、私はサッと弓を引いて矢を放つ。
ガウッ!
め、命中した……! こんなにきれいにモンスターに命中したのって、まだ二回目くらいな気がする。
矢が急所に刺さったアウバールは、真下に落下していった。
「今みたいに飛んでくるモンスターもいますので、上からの攻撃にも気をつけてください!」
しかし、指示をしている途中にもお構いなくモンスターは現れる。アウバールがまとめて三体も襲来してきたのだ。
「ホントだ、前より危険!」
ほぼ同じ方向から飛んでくるアウバール。まずは真ん中のアウバールを撃ち落とした……と思ったその時だった。
何かにあおられたように、もう二体のアウバールがバランスを崩し、そのスキを遊撃隊に突かれてしまったのだ。
「な、何だ今の!」
アウバールを突いて倒した騎士が思わず声を上げた。
自分でもこの現象は初めて見るものだった。ダンジョンの中に風はなく、むしろ風通しが悪くてジメジメしているくらいだ。どうしたものか。
そんなことを考えていると、私の視界の隅で何かをとらえた。それがモンスターだと分かった瞬間、腰に差してある双剣の片方だけを抜き、弓を左手に持ったまま斬りつける。
一撃で倒したあとに、ようやくモンスターの種類が分かった。
「危ない、グッフド・ウォルだった」
「ありがとう」
オオカミを馬のサイズまで大きくしたようなモンスターで、中級ダンジョンの奥の方にもいる、そこそこ強いモンスターである。
このように、足音も立てずにひっそりと襲い掛かってくる上、攻撃力も高い。噛みつかれたら最悪の場合、引きちぎられて腕がなくなることもある。
「横からの奇襲にも注意してください!」
もちろん、危ないのは横だけではない。後ろからわずかな風の流れを感じたので、剣を構えながら振り返る。
キィーンッ!
くちばしの先と私の剣がぶつかって鋭い音を立てた。倒し切っていないかったアウバールの奇襲である。
最初に現れたルーマシュムは集団のことが多いが、アウバールはあまり群れることがない。
「はぁっ!」
私は剣を防御から攻撃にすぐさま切り替えると、アウバールを斬り倒す。
このあとも奇襲に備えて陣形の変更をしながら、モンスターの討伐を進めていった。ダンジョンの中盤まで進めたので、私以外初めてのモンスター討伐にしては上出来だった。
騎士団がある王都から冒険者ギルドは近いので、討伐が終われば騎士団寮に帰るのだが、私だけは一緒に帰らなかった。
一人、管理人室を訪ねている。
「改めてお久しぶりです、管理人さん」
「元冒険者のクリスタル・フォスター・アーチャーか」
「今はその名字使ってませんけどね」
嫌味っぽく言われたが、そこはスルーしておく。嫌味をスルーするのには慣れている。
「あの、兄や姉は今大丈夫なんですか。さっき『特に上級冒険者は満身創痍になっている』とおっしゃっていたので……」
一瞬、管理人が目をそらす。
察した。きっとよくない状況なのだろうと。
「部屋は半年前と変わってませんか」
「サムとクロエは変わっていない。セスだけ変わって、今はサムと同じ部屋を使っている」
「分かりました。ありがとうございます」
それだけ聞いてから、私はすぐさま階段に走る。
まずはお兄さまたちがいる部屋に。
「ここだね。確かにサムお兄さまが使ってた部屋だ」
部屋番号が書かれたプレートの下には、あのころと同じ位置にサムの名前が、その下には新しくセスの名前があった。
コンコンコン
「ごめんください、クリスタルです」
「えっ、クリスタル!?」
ドアをノックして名乗ると、セスらしき人の驚嘆している声が聞こえてきた。
「開けるから少し待ってろ」
階段を駆け上がってきて少し呼吸が乱れているのを整えながら、目の前のドアが開くのを待つ。
こちらに迫ってくる音が足音ではなく、何かをずっているような音である。
まさか……。
「よっと」
鍵をひねる音はせずにドアが開く。
「足が動かしにくいから開けにいくのが遅くなった。ごめん」
セスの右足にはぐるぐるに包帯が巻かれていた。
「鍵閉めてないなら私がドア開けましたのに……」
「そうだな。開けてもらえばよかった」
「向こうまで肩貸しますよ」
というより、セスから私に「ごめん」と言ったのは初めてだった。頑なに私に謝ることをしなかったあのセスが。
「セスお兄さまは、足と左腕ですか」
「あとは、今は服で見えないけど、全体的にひっかき傷」
「……本当に満身創痍なんですね」
「いや、お兄さまの方がひどいよ。見て」
私は前を向いてサムを探す。ベッドに視線を向けると、いた。
「久しぶり。増援に来てくれたんだな」
「!」
サムを直視できない。顔を見ようとすると、その頭に巻かれている包帯に目がいってしまうからだ。
「これか? 俺はデス・トリブラスの攻撃を頭から食らって、このザマだ。気絶してもうすぐで死ぬところだったそうだ」
あんなに強いお兄さまたちでさえ、こんなことに……。
「お姉さまもお兄さまと同じくらいのケガをしている。それくらい強いってことだ」
お、お姉さまも!? このあとすぐ見に行かなくちゃ。
そんなことを思っていると、セスが私の腰のあたりを指さす。
「ところで、その剣は?」
「両腕に一つずつワッペンがついてますよね? そういうことです」
私は上半身をひねって、二人に色違いのワッペンを見せる。
「クリスタル、まさか――」
「騎士になっただけじゃなくて――」
「双剣騎士でもあります。長剣もできるので、弓・双剣・長剣の三刀流です」
「三刀流……。そもそも騎士になれたのは、リッカルドのスカウトだろ?」
「そうです。長剣と双剣はオズワルドさんに教わりました」
「「うそだろ……」」
絶句している二人だったが、サムが何かを思い出したようだ。
「クリスタルは覚えていないと思うが、木の棒を振り回してお父さまに怒られていたな。『剣使いでもないのにやめろ。そもそもお前は女だ。男子のようなことをするんじゃない。お前には弓しかないんだ』って言われてたか」
確かに覚えていないが、父がそう言っている姿が目に浮かぶ。そのときから弓じゃなくて剣をやりたかったのかもね。
懐かしむような目から、真剣な表情に変わるサム。
「俺たちが動けるようになるまでは、モンスターをダンジョンの外だけには出させないようにな。頼むぞ」
「そのために来たんですから、もちろん任務をやり遂げてみせますよ」
言ってから気づいたが、こんなに自信満々なところは兄たちに見せたことがなかった。
「……そっちの方がクリスタルには合っているようだな」
「何かおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない」
サムのぼそっとしたつぶやきだが、私の地獄耳ははっきりととらえていた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
静かなる才女は、すべてを見通す
しばゎんゎん
ファンタジー
突然婚約破棄を言い渡される伯爵家の長女エリシア。
理由は、義妹ミレーユを虐げていたという偽りのものだった。
エリシアの社交界における評価は「地味な令嬢」。
だが実際には、婚約者である侯爵家の長男レオナルトを陰で支え続けていた才女だった。
やがて明らかになる「本当に優れていたのは誰か」という事実。
エリシアを失い崩れてゆく、レオナルト。
無知さと我儘で評判を落とす、ミレーユ。
一方で彼女は、第二王子に見出される。
これは、愚かな選択をした者たちがすべてを失い、静かなる才女が正当に評価される物語。
商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~
葉月奈津・男
恋愛
「あなたとの婚約、破棄させていただきます!」
王立学院の舞踏会。
全校生徒が見守る中、商家の三男カロスタークは、貴族令嬢セザールから一方的に婚約破棄を突きつけられる。
努力も誠意も、すべて「退屈だった」の一言で切り捨てられ、彼女は王子様気取りの子爵家の三男と新たな婚約を宣言する。
だが、カロスタークは折れなかった。
「商人の子せがれにだって、意地はあるんだ!」
怒りと屈辱を胸に、彼は商人としての才覚を武器に、静かなる反撃を開始する。
舞踏会の翌日、元婚約者の実家に突如として訪れる債権者たち。
差し押さえ、債権買収、そして“後ろ盾”の意味を思い知らせる逆襲劇が幕を開ける!
これは、貴族社会の常識を覆す、ひとりの青年の成り上がりの物語。
誇りを踏みにじられた男が、金と知恵で世界を変える――!
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。
しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。
絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。
一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。
これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!
『お前の絵は壁の染みだ』と塗り潰した婚約者が、3年後に国宝を壊した罪で裁かれた件
歩人
ファンタジー
宮廷画師として王城の壁画修復を担ったエレオノーラは、婚約者の公爵子息に「お前の絵は壁の染みだ」と蔑まれ追放された。彼女の去った後、公爵は壁画を白く塗り潰した。辺境に流れたエレオノーラは、崩れかけた教会の壁に聖女の絵を描いた。旅人が涙し、病人が癒され、やがてその絵は「辺境の奇跡」と呼ばれるようになる。3年後、王立美術院が彼女の絵を国宝候補に推薦。同時に、公爵家が塗り潰した壁画の下から、エレオノーラが密かに描いた建国王の肖像が発見される。建国王の唯一の肖像画——それを「壁の染み」と呼んだ男の顔を、社交界は忘れなかった。