無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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箱庭世界『ヴィシュヌ』

帰還

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   やっぱり友人やめようかな。


   そう考えながら、薬師は耳朶に渡されたピアスを取り付ける。

   その耳朶に有るのはピアス跡。

   装飾品は、如来になってから外して、下界に降り立った時だけ着けていた。

   無論、凪から贈られた物のみを身に着ける。

   薬師は物欲も無い為、下界で色々と必要不可欠な生活必需品等を用意していたのは、脇侍の日光月光の二人と、凪だった。

   存外、欲が無いのも考えものである。


   「皆が心配するといけないから、もうそろそろ帰るとするよ」

   「あぁ、私の夢の世界の住人達を宜しく頼むよ、薬師」

   「解っている。どうにかするさ。ああ、後、コレの使い方、聞いてなかった……… 」


   そう言って、薬師は自分の耳を指差す。

   其処にはついさっき渡されたピアスが揺れている。

   小さな丸玉が一杯連なって鎖になっている先に少し大きめな玉が各々一つずつ付いている。


   「玉の両端を各々摘まんで、引っ張るだけで伸びます。後は、紐のように扱って目標に投げつければ、勝手に捕らえてくれます。そのまま瞬時に私の所へ自動的に送ってもくれますので、扱いは至極簡単ですよ」


   そう言って弥勒は何時もの微笑みを顔に貼り付けた。

  そして何事も無かったように、空間に『半跏思惟』の形に座した。

   もう要件は済んだ、と、言うかのように。

   それは薬師も同様で、「じゃあな」と、一声掛けて切り裂いた空間に飛び込んだのだった。

 





───────────────
───────────
───────


   「「あっ! 帰ってきたっ!! 」」


   見事な多重音声で言葉を発したのは、日光と月光であった。

   そしてもう一人、薬師の帰還に気付いた人がいた。

   彼の事を忘れていても、魂で繋がっている彼女、ナディア。

   ガタリと椅子の音を立てて立ち上がる。

   スルリと縦に切れた空間の前にいち早く駆けつけたのはナディアで、それに気付いたナディアは少し目元を赤く染めて俯いた。

   うん、初々しいねぇ、この娘は。

   空間が裂けてさほどもしない内に、手足がぬぅっと出て来て、スルリと姿を現したナディアの待ち人薬師。

   少し下を向きつつ出て来た薬師と、立ち位置が悪かったナディアは、あわや衝突かと言う所で薬師に受け止められた。


   「きゃっ、」

   「っっと……   大丈夫ですか? ナディア?」
 

   まるで抱きしめられるように、抱き留められたナディアはボンっと言う効果音を付けたくなる程顔を真っ赤にした。

   ふふっと薬師が上品に笑って、


   「お顔を真っ赤にさせる貴女は、とても可愛らしい…… 」


   などと、浮いたセリフを言ってのける。

   まぁ、凄く様になってるから良いんですけどね。

   確かに。


   「お、お帰りなさいませ、薬師様…… 」

   「ん、ただいま、ナディア嬢」


   抱き締められているせいで、何ともぎこちないナディアのお帰りに、薬師は、幸せそうに微笑んだ。


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