無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

文字の大きさ
165 / 220
番外編:ソラシア帝国大舞踏会

狼獣人の番

しおりを挟む

 「ふっ、俊傑とやら、私に噛み付いても余り意味は有りませんよ。今となっては番云々と言うより、私に一矢報いたいと言う所でしょうかね」


 と、言い切ってしまう薬師は、俊傑の本音を暴いてしまう。

 くっ、と息を呑む俊傑は苦虫を噛み潰した顔を隠しもしない。

 と、言うか、隠せない、か。

 地面に縫い止められている身としては。


 「あぁ、そうそう。俊傑、番の件ですが、一つ言える事があります。獣人はと言うより貴方は随分と鼻が良いようですね。君は、私と番のナディアが紡ぐ未来を感じ取ったようですから。今、ナディアのお腹に居る子は男の子ですが、この子に繋がる者例えば妹に当たる娘だとかですが、その子がどうやら、君の番になるようです。君は、この子を通して未来に産まれてくる番を感じ取ってしまったと言う事なのでしょうね…… 」


 と、珍しく饒舌に薬師は語った。


 「けれどね…… 」


 ポカンと馬鹿を晒した顔を見せる俊傑に、薬師は膝を付いて彼に顔を近付ける。

 ドキリとした。

 縫い止められていなければ、こうやってまともに顔を見る事など出来なかっただろう。

 それ程までに見惚れ、この男、美しいなと思った俊傑だった。

 近くに見える肌は白く滑らかで、女の化粧のように表面の毛穴が見えない。

 唇は薄く引き結ばれていたが、紅を指したように紅かった。

 正にそれは人智を越えた美。

 美の化身。


 その者が僅かに口元を歪め、呆けている俊傑の首元の襟を片手で掴み、引き上げた。

 ビリビリと剣に縫い止められた服が破け、俊傑は床から引き離された。

 その引き上げた力のなんと強い事だろう。

 俊傑もしなやかな体躯だが、狼だから大きく、ウエイトも有る。

 熊の獣人ならばいざ知らず、こんなに細く女の様な見掛けの男の何処に俊傑を片手で引き上げる力があるのか。

 息が詰まりながらも思考した。

 足りない頭で考えを巡らせた。


 「お前、賢くなれ。聡くなれ。そうしなければ絶対に認めんぞ。馬鹿はこの瑠璃光家●●●●●●にはいらん。其れでなくとも親子程の年の差が出来るのだ。だからと言って、何時か産まれ来る我が子●●●●●●●●を馬鹿になどくれてやらんからな。精進して己を磨きに磨いてからもう一度来い。騒ぐのは逸れからだ」


 薬師はそうそう啖呵を斬ると、むんずと掴んでいた手を離し、俊傑をドサリと床に落とした。

しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

処理中です...