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第5話

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「パーシー殿、ちょっと話を聞かせてもらえないかな?」
「いいですよ」

ふいにオルファス殿下から話しかけられた。
話というのは俺がアイラの噂を流したことについてだろう。
困ったことにオルファス殿下が俺を犯人だと決めつけているように思える。
だが証拠が無ければ俺を犯人扱いすることはできないだろう。
オルファス殿下の為人は知らないが堂々と受け答えれば問題ない。

「アイラ嬢の噂が広まっていることは知ってる?」
「はい、知ってます」
「噂の内容も知ってる?」
「はい、知ってます」
「…その噂について何か思うことはある?」
「くだらない噂だと思います」
「そうだね、僕もそう思うよ」

あまり突っ込んだことは訊かれないし話の流れは悪くない。
これは形だけの事情聴取か?
このままどうにか乗り切れるか?

「アイラ嬢が僕を狙っているらしいけど、どう思う?」
「アイラは身の程知らずなので殿下を狙っても不思議ではありません」
「そうだよね、身の程知らずは害悪でしかない。きっと適切な処分が下されると思うよ」
「そうあるべきですし、処分が下されることが待ち遠しいです」

オルファス殿下もアイラの噂は不愉快なようだな。
アイラの心証も悪くなっただろう。
逆に俺とオルファス殿下の信頼関係も構築されつつある。
もしアイラが心を入れ替え謝罪するようなら殿下との間を取り持ってやることを検討してやってもいいだろう。

「ところで、噂の出どころがパーシー殿という噂があるけど、どう思う?」
「失礼極まりないことだと思います。何を根拠に俺がやったと決めつけるのか知りたいくらいです」

生意気なアイラにやり返すのは当然のことだ。
誰が何を言ったのかは知らないが、俺の事情を知っているのか?
関係ない人間は適当なことばかり言うし責任も持たない。
そういった奴らも処罰を下してほしいくらいだ。

「そうだよね、そう思うよね。話を聞かせてくれてありがとう。きっと犯人が明らかになって適切に罰が与えられることになるだろう」
「いえ、お役に立てれば何よりです」

どうにか乗り切れたようだし、オルファス殿下に俺のことを印象付けられたに違いない。
これがきっかけでピーケット伯爵家もオルファス殿下との繋がりが強化されるかもしれないな。
このままオルファス殿下の側近として迎えられれば俺にとってもピーケット伯爵家にとっても喜ばしい。

しかし、アイラには本当に迷惑をかけられてばかりだ。
だが噂が広まってアイラの評判も下がっただろう。
これに懲りたら俺に素直に従えばいい。
理解できないようなら何かまた制裁してやればいい。

そうでなくとも俺がオルファス殿下の側近になれればアイラのような婚約者なんて捨ててやればいい。
俺にはもっと相応しい相手がいるはずだ。

* * * * * * * * * *

その翌日のことだった。
珍しく学園の掲示板の周りに人だかりができていたので俺も近づいて見ることにした。

俺の姿を見た人が道を空けていく。
まるで王様が通るかのように掲示板への道ができた。
もうオルファス殿下の側近として周知されたのか?
俺は気分よく掲示板に近づく。
周囲の人たちがヒソヒソ話をしていたが、きっと掲示物の内容に関係しているのだろう。

この状況から考えられることは簡単だ。
オルファス殿下の側近として俺が迎えられることを掲示してあるのだ。
だから俺を羨んだり取り入ろうか相談するためにヒソヒソ話をしているのだ。

まるで俺のために用意されたかのような空間。
俺は堂々と立ち、掲示物を確認する。

「な…んだ……と………」

そこには俺の名前が書かれていた。
事実無根の噂を広めた人物として、俺の名前が。
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