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新しいお家はストーカー邸
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黙々と晩飯をむさぼる俺と、小さな口でケーキを食べるモモラ。
昔は甘い物はあまり好きじゃなかったが、今は好みも変わったらしい。
「お前、そんなに甘いもの好きだったか?」
「昔はあんまり好きじゃなかったけど、ここ数年でよく食べるようになったかも。」
豚にならないように気をつけないとと、茶化して笑う姿は相変わらずらしい。
そうかと呟けば、変わったのは貴方もよとモモラは笑った。
「とても昔、下品な男No. 1って言われてた人とは思えない。」
「俺も大公だからな。礼儀ぐらい身につける。」
「そう……なんだか残念ね。」
残念?
モモラの言葉に、思わず言葉を繰り返した。
俺の記憶では、モモラに礼儀作法で怒られたことはないにしろ、当時作法のなっていない俺の代わりに、行事ごとでは神経すり減らしてフォローしてくれていたはずだ……。
「だって、すごく貴方らしかったから。」
「下品で、卑劣なのが俺か?」
「いやそこまで言ってないけど、いい意味でだよ。今は、前よりずっとお上品。」
フォークで苺のトッピングを刺しながら、自分の口周りを指差した。
「昔は、ご飯いっぱい付けてたのに、食べ方も綺麗になってる。」
モモラは褒めると言うよりも、残念だと言う声色を含んでいて、俺は眉を寄せた。
どの貴族の女も、男のやれ食べ方が綺麗だとか話し方が上手いだとかそう言うところを褒めていることが多かった。
だが、モモラは昔からどこか普通の貴族とは違っていたし、そもそも取り繕った事が嫌いそうだ。
「はっ、お上品ぶった俺は気持ち悪いってか?」
「うーん。違和感って言い方の方が正しいかも。何より、前の貴方の方が私は素敵だと思うけど?」
自分の家なんだし、外じゃ体裁があるけどねぇ?と、また茶化すように首を左右に倒して俺を見る。
やはり、こいつは何も変わっていない。
貴族らしくない変な女のままだ。
「なら、望みの通り今までみたいな下品な話し方にしてやるよ。」
「めちゃめちゃ下品って言ったこと根に持ってるね。貴方らしい話し方でいいって事を言いたかったんだけど……。」
呆れたようにため息を吐くと、最後の一口を堪能するモモラ。
要するに自分に気を使った話し方をしなくていいという事なのだろう。
モモラらしい。
夫婦として外面では俺に従順な形を取っていたが、よく俺の揚げ足を取っては楽しそうにしていた。
そういう点では、王である弟ハロルドと気が合っていた。
「皇帝にお前の処刑について、連絡した。」
「あ、そう。ハロルドはなんて?」
「今は反逆者と繋がってる疑いで連行するつもりらしいが……。」
「なるほど、一度監獄に入ったら生きて出さないつもりね。」
全くハリーらしいと、クスクス笑っている。
全然笑えんのだが……。
モモラは、昔のように優雅に茶を啜ると、ニヤニヤした目で俺を見た。
「なぁに?そんなに私が心配?」
「当然だ。無実の人間が、捌かれてたら明日は我が身だぜ。」
「案外、無実でもないかもよ。」
心底楽しいと言うように、俺をニヤニヤと見るモモラ。
その笑みは、いつも何か企んでいた時と変わらない。
思わず背筋がゾワゾワとして、なにかの暗示かと眉を寄せた。
「何やったんだお前。」
「別に。ただ貴方と離婚する前、ちょっと足しになるお金が欲しかったから、契約を交わしたの。」
「……金なら請求すればよかっただろ。」
「貴方から?嫌よ。あの守銭奴からお金を取るから楽しいんじゃないの。」
弟は大層なケチで、よく騎士団の新米からイカサマで金を巻き上げていた。
モモラはそのイカサマの原理を知っていたようで、ほぼモモラの完全勝利だったらしい。
楽しげにその時の事を話すと、忌々しそうに最後の勝負で大負けした事を告白した。
「全く、あれがなければきっとハロルドを泣かせられた。」
「……で、契約ってのは?」
「あぁ、うん。負けて渋々帰ろうとしたんだけど、ハロルドが契約するならお金を全部あげるって言い出したの。」
正直、簡単な契約だったし、やれると思って結んだんだけど……とバツが悪そうに言葉尻を濁した。
いったい何を契約したんだと、問い詰めるように見つめればモモラは面白そうに笑った。
「言わないからね。守秘義務あるし、言ったらハロルドが本当に殺しにくる。」
「あいつの秘密か何かか?」
「そうね。だから、多分バラさない限り、本当に処刑なんて事はないわ。」
「俺に知られちゃ嫌なことか?」
「うん。だから、私を貴方から引き離したいの。」
言えるのはここまでですと締めくくると、またカップの茶を一口飲んだ。
これでハロルドがモモラを狙う理由がなんとなく分かったが、どんなに拒もうとハロルドは確実にモモラを連れ去りに来るだろう。
昔から執念深いやつだったし、用心深いやつでもある。
モモラはこう言っているが、ハロルドなら決して生かしておくようなマネはしないはずだ。
思っていたよりも厄介なことに首を突っ込んだなと、ため息を吐いた。
あの弟相手にモモラを守るのは、この俺でも難しいことだ。
できることなら、この屋敷で荒らしが過ぎ去るのを待っていてほしいが、モモラの性格上それはできないだろう。
ともかくしばらくの間は、以前通り俺が店に行って見張ってるのが一番だ。
明日のオススメはなんだろうかと考えながら、茶を啜るモモラを見つめた。
昔は甘い物はあまり好きじゃなかったが、今は好みも変わったらしい。
「お前、そんなに甘いもの好きだったか?」
「昔はあんまり好きじゃなかったけど、ここ数年でよく食べるようになったかも。」
豚にならないように気をつけないとと、茶化して笑う姿は相変わらずらしい。
そうかと呟けば、変わったのは貴方もよとモモラは笑った。
「とても昔、下品な男No. 1って言われてた人とは思えない。」
「俺も大公だからな。礼儀ぐらい身につける。」
「そう……なんだか残念ね。」
残念?
モモラの言葉に、思わず言葉を繰り返した。
俺の記憶では、モモラに礼儀作法で怒られたことはないにしろ、当時作法のなっていない俺の代わりに、行事ごとでは神経すり減らしてフォローしてくれていたはずだ……。
「だって、すごく貴方らしかったから。」
「下品で、卑劣なのが俺か?」
「いやそこまで言ってないけど、いい意味でだよ。今は、前よりずっとお上品。」
フォークで苺のトッピングを刺しながら、自分の口周りを指差した。
「昔は、ご飯いっぱい付けてたのに、食べ方も綺麗になってる。」
モモラは褒めると言うよりも、残念だと言う声色を含んでいて、俺は眉を寄せた。
どの貴族の女も、男のやれ食べ方が綺麗だとか話し方が上手いだとかそう言うところを褒めていることが多かった。
だが、モモラは昔からどこか普通の貴族とは違っていたし、そもそも取り繕った事が嫌いそうだ。
「はっ、お上品ぶった俺は気持ち悪いってか?」
「うーん。違和感って言い方の方が正しいかも。何より、前の貴方の方が私は素敵だと思うけど?」
自分の家なんだし、外じゃ体裁があるけどねぇ?と、また茶化すように首を左右に倒して俺を見る。
やはり、こいつは何も変わっていない。
貴族らしくない変な女のままだ。
「なら、望みの通り今までみたいな下品な話し方にしてやるよ。」
「めちゃめちゃ下品って言ったこと根に持ってるね。貴方らしい話し方でいいって事を言いたかったんだけど……。」
呆れたようにため息を吐くと、最後の一口を堪能するモモラ。
要するに自分に気を使った話し方をしなくていいという事なのだろう。
モモラらしい。
夫婦として外面では俺に従順な形を取っていたが、よく俺の揚げ足を取っては楽しそうにしていた。
そういう点では、王である弟ハロルドと気が合っていた。
「皇帝にお前の処刑について、連絡した。」
「あ、そう。ハロルドはなんて?」
「今は反逆者と繋がってる疑いで連行するつもりらしいが……。」
「なるほど、一度監獄に入ったら生きて出さないつもりね。」
全くハリーらしいと、クスクス笑っている。
全然笑えんのだが……。
モモラは、昔のように優雅に茶を啜ると、ニヤニヤした目で俺を見た。
「なぁに?そんなに私が心配?」
「当然だ。無実の人間が、捌かれてたら明日は我が身だぜ。」
「案外、無実でもないかもよ。」
心底楽しいと言うように、俺をニヤニヤと見るモモラ。
その笑みは、いつも何か企んでいた時と変わらない。
思わず背筋がゾワゾワとして、なにかの暗示かと眉を寄せた。
「何やったんだお前。」
「別に。ただ貴方と離婚する前、ちょっと足しになるお金が欲しかったから、契約を交わしたの。」
「……金なら請求すればよかっただろ。」
「貴方から?嫌よ。あの守銭奴からお金を取るから楽しいんじゃないの。」
弟は大層なケチで、よく騎士団の新米からイカサマで金を巻き上げていた。
モモラはそのイカサマの原理を知っていたようで、ほぼモモラの完全勝利だったらしい。
楽しげにその時の事を話すと、忌々しそうに最後の勝負で大負けした事を告白した。
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「……で、契約ってのは?」
「あぁ、うん。負けて渋々帰ろうとしたんだけど、ハロルドが契約するならお金を全部あげるって言い出したの。」
正直、簡単な契約だったし、やれると思って結んだんだけど……とバツが悪そうに言葉尻を濁した。
いったい何を契約したんだと、問い詰めるように見つめればモモラは面白そうに笑った。
「言わないからね。守秘義務あるし、言ったらハロルドが本当に殺しにくる。」
「あいつの秘密か何かか?」
「そうね。だから、多分バラさない限り、本当に処刑なんて事はないわ。」
「俺に知られちゃ嫌なことか?」
「うん。だから、私を貴方から引き離したいの。」
言えるのはここまでですと締めくくると、またカップの茶を一口飲んだ。
これでハロルドがモモラを狙う理由がなんとなく分かったが、どんなに拒もうとハロルドは確実にモモラを連れ去りに来るだろう。
昔から執念深いやつだったし、用心深いやつでもある。
モモラはこう言っているが、ハロルドなら決して生かしておくようなマネはしないはずだ。
思っていたよりも厄介なことに首を突っ込んだなと、ため息を吐いた。
あの弟相手にモモラを守るのは、この俺でも難しいことだ。
できることなら、この屋敷で荒らしが過ぎ去るのを待っていてほしいが、モモラの性格上それはできないだろう。
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