武神大公は元妻のストーカーがやめられない。〜元夫に敵視されていると思っている元妻の令嬢と、その元妻をストーキングしている元夫の大公のお話〜

百百百百

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番外編 元妻とストーカーの馴れ初め。

心のうちと書いて、思いやりと読む

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「王子!奥様が!」


 夜遅くに、俺の部屋の扉が開きその一言が飛び交った。
 たまには一人になりたいとごねるアイツを慮ったが、やはり同室にさせるべきだった。
 護衛についていたビーの姿もないときてる。
 どこへ行ったあの馬鹿ども!
 立て掛けていた剣を乱暴に取り、自分の部屋から出た。
 女という生き物は見晴らしのいい部屋がいいのだろうと思い、侯爵に用意させた部屋へ足を向ける。


「食事の後すぐにお部屋に戻られ、就寝されていたはずなんですが。」
「あのじゃじゃ馬が黙って寝るわけないわな。」


 はっと鼻を鳴らして、目的地までの足を早める。


「王子!」
「今度はなんだ!」


 急ぐ俺を再び引き止める声に、声を荒げた。
 そこには、外の見張りをしているはずのババロが立っていた。


「建物から火が!もう向こう側は、火の海です!」


 指差す方角は、確か公爵の寝室がある。
 あの馬鹿達が消えたタイミングで火事。
 無関係と考える方が難しい。
 

「早く避難を!」
「あいつが部屋にいねぇ!俺は探しにいく、お前らは使用人達を避難させろ!」


 もうそこまで迫りつつある火の海の方へ飛び込もうとすれば、ババロが俺の肩を掴んで引き寄せた。
 なんだ!と引かれた方を振り返れば、眉を寄せた情けない男が俺を見ていた。


「奥様は……すでに屋外に避難済みです。」


 俺に王子を救出して来るようにと、先程やって来られました。
 他の見回り達と一緒にいますと言葉が続いて、バレないように胸を撫で下ろした。
 ご案内しますとババロが駆け出すのを見て、その背を追う。
 あいつに怪我はと問えば、少し煙を吸ったそうですとこちらを見ずに答えるババロ。
 なんだ、この違和感は。

 その疑問が拭えぬまま、火の手を後ろにして屋敷の階段を駆け降りる。
 ババロと、外へと続く扉の前で声をかければ、びくりと肩を揺らした。
 

「何を隠している。」


 俺が静かにそう問えば、小さく息を呑むババロ。
 言い逃れ用のない反応に、俺は反射的に襟を掴み上げた。


「あいつはどこだ!」


 ぐっと小さくうめくババロを、玄関の扉に叩きつけようと強く押す。
 しかし、想像していた鈍い音はなく、その代わりに夜風の冷たい空気と驚いた顔でこちらを見つめる女が立っていた。


「驚いた!何やってるの!早く避難!」


 転びそうになったババロをフワリと避けて、そのまま地面にぶっ倒れた俺達を見下ろしている。


「もう他の使用人さん達は避難してる!あなた達で最後よ!」


 グスグスしないと、今回の原因であろう女が俺達を急かした。
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