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第25話:爆発するドレス
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偽りのモーブの件で赤っ恥をかき、逃げるように会場を後にしたマリアンヌ。
だが、彼女は帰宅したわけではなかった。
王城のゲストルームの一室で、彼女は鏡に映る自分の顔を睨みつけ、ギリギリと奥歯を噛み締めていた。
「許さない……、許さないわ、ソフィア! それに、あの公爵……。私が主役になるはずだったのに、私の家宝を偽物呼ばわりして……!」
プライドをズタズタに引き裂かれた彼女の目には、狂気じみた光が宿っていた。
彼女は手元にある小箱を撫でた。
それは、実家の商会に出入りしていた怪しげな錬金術師から、最新の技術で作った、シルクのように艶やかで、羽のように軽いレースとして売り込まれたものだった。
「これよ……。このレースをあの子のドレスに付ければ、きっと……」
マリアンヌは歪んだ笑みを浮かべ、ベルを鳴らして買収済みの侍女を呼んだ。
*
その頃、ソフィアは夜会の喧騒を離れ、王城のテラスで夜風に当たっていた。
アレックスは国王への挨拶と、ビジネスの商談のために一時的に席を外している。
「……ふぅ」
夢のような時間だった。
アレックスのおかげで、誰も自分を馬鹿にしなかった。
むしろ、多くの貴族が「そのドレスはどこで買えるのか」と興味津々に話しかけてきた。
緊張が解け、心地よい疲労感に包まれていると、背後から侍女が近づいてきた。
「ソフィア・リネン様ですね?」
「はい?」
「マリアンヌ様からです。『先ほどは取り乱して申し訳ありませんでした。謝罪の印に、このショールをお使いください』とのことです」
侍女が差し出したのは、白く透き通るような美しいレースのショールだった。
繊細な光沢があり、見るからに高級品だ。
「マリアンヌが、これを……?」
ソフィアは戸惑った。
あの義妹が素直に謝るとは思えない。
だが、衆人環視の王城で、毒物を渡すようなリスクは冒さないだろう。
それに、受け取らなければまた「姉は冷たい」と騒がれるかもしれない。
「……分かりました。ありがとうと伝えてください」
ソフィアは警戒しつつも、肌寒かったこともあり、そのショールを受け取り肩に羽織った。
驚くほど軽い。
まるで空気のようだ。
(……少し、酸っぱい匂いがする?)
微かな違和感を覚えたが、新しい糊の匂いかと思い、深くは気にしなかった。
その時、テラスの入り口付近にマリアンヌの姿が見えた。
彼女は柱の陰から、じっとこちらを見つめている。
その視線が、ソフィアの背筋を凍らせた。
謝罪をする人の目ではない。
獲物がかかるのを待つ、蛇の目だ。
「ごきげんよう、お姉様」
マリアンヌがゆっくりと近づいてくる。
「夜風が冷えますわね。……暖房をお持ちしましょうか?」
マリアンヌの手には、燭台が握られていた。揺らめく蝋燭の火。
彼女はわざとらしく躓くふりをして、その火をソフィアの方へ突き出した。
「きゃっ!?」
ソフィアが避けるよりも早く、蝋燭の炎が、肩に羽織ったショールの端にかすった。
普通なら、布に火が移っても、燃え広がるには時間がかかる。
慌てて叩けば消えるはずだ。
だが――。
音を立てて、ショールが爆発的に発火した。
それは燃えるという生易しい現象ではなかった。
オレンジ色の閃光が、一瞬にしてソフィアの上半身を包み込んだのだ。
「いやっ……!」
熱さと恐怖で悲鳴を上げる。
布が肌に張り付く暇もなく、炎は生き物のように舞い上がり、ソフィアの髪を焦がそうとする。
「ソフィア!!」
雷鳴のような叫び声と共に、黒い影が飛び込んできた。
商談を切り上げて戻ってきたアレックスだ。
彼は迷わず自分の燕尾服を脱ぎ捨てると、炎に包まれたソフィアに覆い被さり、強引にショールを引き剥がして地面に叩きつけた。
地面に落ちたショールは、一瞬で燃え尽き、白い灰すら残さずに消滅した。
「はぁ、はぁ……、ソフィア! 無事か!?」
アレックスがソフィアの体を抱き起こす。
幸い、アレックスの素早い対処と、ソフィアが着ていたドレス(難燃加工された綿)のおかげで、火傷は頬が少し赤くなった程度で済んでいた。
しかし、恐怖で震えが止まらない。
「あ、あら大変! ごめんなさいお姉様、手が滑って……! でも、綿のレースなんて着ているから、よく燃えたのですわ!」
マリアンヌが白々しく口元を押さえる。
事故を装うつもりなのだろう。
だが、アレックスはソフィアを抱きしめたまま、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳には、今まで見たこともないほどの激しい怒り――殺意に近い冷徹な光が宿っていた。
「……よく燃えた、だと?」
「え、ええ。綿は燃えやすいものですもの」
「ふざけるな」
アレックスは立ち上がり、燃え尽きずに僅かに残ったショールの断片をハンカチで拾い上げた。
「綿(セルロース)の燃焼速度は秒速数センチメートルだ。だが今、この布は閃光を発し、一瞬で消失した。これは燃焼ではない。爆発だ」
彼はマリアンヌに詰め寄る。
「貴様、この布に何をした? ……いや、聞くまでもない」
アレックスは拾い上げた断片の匂いを嗅ぎ、確信を持って断言した。
「硝酸の匂い。そしてこの激しい燃焼性。……これはただのレースではない。綿を硝酸と硫酸の混酸で処理したニトロセルロース――またの名をガンコットン(綿火薬)だ!」
「め、綿火薬……?」
聞き慣れない言葉に、周囲に集まってきた貴族たちがざわめく。
「そうだ。見た目は綿と変わらないが、分子構造が違う。セルロースの水酸基がニトロ基に置換された、極めて危険な可燃性物質だ。わずかな火花や衝撃で爆発的に燃焼する。……火球そのものだ」
アレックスは、その化学式を暗唱した。
そして、そのあと冷酷に告げた。
「それがこの殺人兵器の正体だ。貴様はそれを謝罪の品としてソフィアの首に巻かせ、火を近づけた。……これは過失ではない。明確な殺意を持った、爆殺未遂だ!」
「ち、違いますわ! 私はただ、綺麗なレースだと聞いて……!」
「黙れ!」
アレックスの怒号がテラスを震わせた。
「知らなかったで済む話ではない! もし私が来るのが一秒遅れていたら、ソフィアの顔は大火傷を負い、命さえ危うかった! 貴様のその浅はかな虚栄心と悪意が、私の大切な人を灰にしようとしたのだ!」
マリアンヌは腰を抜かし、ガタガタと震え出した。
アレックスの剣幕と、爆殺未遂という言葉の重みに、言い逃れができないことを悟ったのだ。
「衛兵! この女を拘束しろ! 現行犯だ!」
駆けつけた衛兵たちがマリアンヌを取り囲む。
騒ぎを聞きつけたギルバート王子もやってきたが、アレックスの鬼気迫る表情を見て、助け船を出すどころか立ち尽くすしかなかった。
「……ソフィア」
アレックスは震えるソフィアを再び抱きしめた。
その腕は強く、けれど壊れ物を扱うように優しかった。
「すまない……。目を離すべきではなかった。怖かっただろう」
「アレックス様……」
「許さない。君を傷つけようとした奴は、この私が社会的に、物理的に、徹底的に漂白してやる。……存在ごと消し去ってやる」
耳元で囁かれたその言葉は、ソフィアへの愛情を示すと同時に、敵への死刑宣告だった。
マリアンヌが連行されていく背中を見ながら、ソフィアはアレックスの胸に顔を埋めた。
ドレスは少し焦げてしまったけれど、二人の絆は、炎の試練を経てより強固なものへと変わっていた。
だが、彼女は帰宅したわけではなかった。
王城のゲストルームの一室で、彼女は鏡に映る自分の顔を睨みつけ、ギリギリと奥歯を噛み締めていた。
「許さない……、許さないわ、ソフィア! それに、あの公爵……。私が主役になるはずだったのに、私の家宝を偽物呼ばわりして……!」
プライドをズタズタに引き裂かれた彼女の目には、狂気じみた光が宿っていた。
彼女は手元にある小箱を撫でた。
それは、実家の商会に出入りしていた怪しげな錬金術師から、最新の技術で作った、シルクのように艶やかで、羽のように軽いレースとして売り込まれたものだった。
「これよ……。このレースをあの子のドレスに付ければ、きっと……」
マリアンヌは歪んだ笑みを浮かべ、ベルを鳴らして買収済みの侍女を呼んだ。
*
その頃、ソフィアは夜会の喧騒を離れ、王城のテラスで夜風に当たっていた。
アレックスは国王への挨拶と、ビジネスの商談のために一時的に席を外している。
「……ふぅ」
夢のような時間だった。
アレックスのおかげで、誰も自分を馬鹿にしなかった。
むしろ、多くの貴族が「そのドレスはどこで買えるのか」と興味津々に話しかけてきた。
緊張が解け、心地よい疲労感に包まれていると、背後から侍女が近づいてきた。
「ソフィア・リネン様ですね?」
「はい?」
「マリアンヌ様からです。『先ほどは取り乱して申し訳ありませんでした。謝罪の印に、このショールをお使いください』とのことです」
侍女が差し出したのは、白く透き通るような美しいレースのショールだった。
繊細な光沢があり、見るからに高級品だ。
「マリアンヌが、これを……?」
ソフィアは戸惑った。
あの義妹が素直に謝るとは思えない。
だが、衆人環視の王城で、毒物を渡すようなリスクは冒さないだろう。
それに、受け取らなければまた「姉は冷たい」と騒がれるかもしれない。
「……分かりました。ありがとうと伝えてください」
ソフィアは警戒しつつも、肌寒かったこともあり、そのショールを受け取り肩に羽織った。
驚くほど軽い。
まるで空気のようだ。
(……少し、酸っぱい匂いがする?)
微かな違和感を覚えたが、新しい糊の匂いかと思い、深くは気にしなかった。
その時、テラスの入り口付近にマリアンヌの姿が見えた。
彼女は柱の陰から、じっとこちらを見つめている。
その視線が、ソフィアの背筋を凍らせた。
謝罪をする人の目ではない。
獲物がかかるのを待つ、蛇の目だ。
「ごきげんよう、お姉様」
マリアンヌがゆっくりと近づいてくる。
「夜風が冷えますわね。……暖房をお持ちしましょうか?」
マリアンヌの手には、燭台が握られていた。揺らめく蝋燭の火。
彼女はわざとらしく躓くふりをして、その火をソフィアの方へ突き出した。
「きゃっ!?」
ソフィアが避けるよりも早く、蝋燭の炎が、肩に羽織ったショールの端にかすった。
普通なら、布に火が移っても、燃え広がるには時間がかかる。
慌てて叩けば消えるはずだ。
だが――。
音を立てて、ショールが爆発的に発火した。
それは燃えるという生易しい現象ではなかった。
オレンジ色の閃光が、一瞬にしてソフィアの上半身を包み込んだのだ。
「いやっ……!」
熱さと恐怖で悲鳴を上げる。
布が肌に張り付く暇もなく、炎は生き物のように舞い上がり、ソフィアの髪を焦がそうとする。
「ソフィア!!」
雷鳴のような叫び声と共に、黒い影が飛び込んできた。
商談を切り上げて戻ってきたアレックスだ。
彼は迷わず自分の燕尾服を脱ぎ捨てると、炎に包まれたソフィアに覆い被さり、強引にショールを引き剥がして地面に叩きつけた。
地面に落ちたショールは、一瞬で燃え尽き、白い灰すら残さずに消滅した。
「はぁ、はぁ……、ソフィア! 無事か!?」
アレックスがソフィアの体を抱き起こす。
幸い、アレックスの素早い対処と、ソフィアが着ていたドレス(難燃加工された綿)のおかげで、火傷は頬が少し赤くなった程度で済んでいた。
しかし、恐怖で震えが止まらない。
「あ、あら大変! ごめんなさいお姉様、手が滑って……! でも、綿のレースなんて着ているから、よく燃えたのですわ!」
マリアンヌが白々しく口元を押さえる。
事故を装うつもりなのだろう。
だが、アレックスはソフィアを抱きしめたまま、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳には、今まで見たこともないほどの激しい怒り――殺意に近い冷徹な光が宿っていた。
「……よく燃えた、だと?」
「え、ええ。綿は燃えやすいものですもの」
「ふざけるな」
アレックスは立ち上がり、燃え尽きずに僅かに残ったショールの断片をハンカチで拾い上げた。
「綿(セルロース)の燃焼速度は秒速数センチメートルだ。だが今、この布は閃光を発し、一瞬で消失した。これは燃焼ではない。爆発だ」
彼はマリアンヌに詰め寄る。
「貴様、この布に何をした? ……いや、聞くまでもない」
アレックスは拾い上げた断片の匂いを嗅ぎ、確信を持って断言した。
「硝酸の匂い。そしてこの激しい燃焼性。……これはただのレースではない。綿を硝酸と硫酸の混酸で処理したニトロセルロース――またの名をガンコットン(綿火薬)だ!」
「め、綿火薬……?」
聞き慣れない言葉に、周囲に集まってきた貴族たちがざわめく。
「そうだ。見た目は綿と変わらないが、分子構造が違う。セルロースの水酸基がニトロ基に置換された、極めて危険な可燃性物質だ。わずかな火花や衝撃で爆発的に燃焼する。……火球そのものだ」
アレックスは、その化学式を暗唱した。
そして、そのあと冷酷に告げた。
「それがこの殺人兵器の正体だ。貴様はそれを謝罪の品としてソフィアの首に巻かせ、火を近づけた。……これは過失ではない。明確な殺意を持った、爆殺未遂だ!」
「ち、違いますわ! 私はただ、綺麗なレースだと聞いて……!」
「黙れ!」
アレックスの怒号がテラスを震わせた。
「知らなかったで済む話ではない! もし私が来るのが一秒遅れていたら、ソフィアの顔は大火傷を負い、命さえ危うかった! 貴様のその浅はかな虚栄心と悪意が、私の大切な人を灰にしようとしたのだ!」
マリアンヌは腰を抜かし、ガタガタと震え出した。
アレックスの剣幕と、爆殺未遂という言葉の重みに、言い逃れができないことを悟ったのだ。
「衛兵! この女を拘束しろ! 現行犯だ!」
駆けつけた衛兵たちがマリアンヌを取り囲む。
騒ぎを聞きつけたギルバート王子もやってきたが、アレックスの鬼気迫る表情を見て、助け船を出すどころか立ち尽くすしかなかった。
「……ソフィア」
アレックスは震えるソフィアを再び抱きしめた。
その腕は強く、けれど壊れ物を扱うように優しかった。
「すまない……。目を離すべきではなかった。怖かっただろう」
「アレックス様……」
「許さない。君を傷つけようとした奴は、この私が社会的に、物理的に、徹底的に漂白してやる。……存在ごと消し去ってやる」
耳元で囁かれたその言葉は、ソフィアへの愛情を示すと同時に、敵への死刑宣告だった。
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