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第28話:魔石ラッシュの勝者
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合成インディゴによる作戦が王都を席巻していた頃、王国の北東部に位置するガラパゴ山脈で、巨大な魔石の鉱脈が発見されたというニュースが飛び込んできた。
一攫千金を夢見る男たちがツルハシを担いで山へ殺到し、前代未聞の魔石ラッシュが巻き起こっていた。
「……愚かな。確率論的に言えば、素人が鉱脈を掘り当てて億万長者になる確率は、雷に打たれるよりも低い」
朝のティータイム。
新聞を読んでいたアレックスは、呆れたように呟いた。
しかし、その目は鋭く光っていた。
「だが、この狂乱はビジネスの好機だ。ソフィア、荷物をまとめろ。鉱山へ行くぞ」
「えっ? まさか、アレックス様も魔石を掘るのですか?」
「まさか。私が掘るのは石ではない。需要だ」
数日後、二人は鉱山の麓にできた急ごしらえのテント村にいた。
そこは泥と汗、そして男たちの怒号が飛び交う荒々しい場所だった。
「クソッ! またズボンが破けちまった!」
「おい、誰か針と糸を持ってないか? ポケットが抜けて、せっかく掘った魔石を落としちまった!」
あちこちで聞こえる悲鳴。
ソフィアは周囲を見渡して気づいた。
鉱夫たちの服はボロボロだ。
彼らが履いているのは薄手の麻や、古くなったウールのズボン。
激しい重労働や、鋭利な岩肌との摩擦に耐えられる強度がないのだ。
「ひどい有様ですね……。怪我をしている人もいます」
「当然だ。彼らの装備はピクニックに行くレベルだ。……おい、そこの商人」
アレックスは、村の入り口で閑古鳥が鳴いている露店に声をかけた。
そこにいたのは、なんと没落寸前のガストン・ベルベット伯爵だった。
彼は王都での商売に行き詰まり、在庫処分も兼ねて一発逆転を狙い、ここまで流れてきていたのだ。
「ク、クロード公爵!? なぜこんな所に!」
「奇遇ですね、伯爵。何をお売りで?」
「ふん! 貴族向けの高級スラックスだ! 王都で売れ残っ……、いや、在庫希少な品を特別に持ってきてやったのだ! だが、この貧乏人どもには価値が分からんらしい!」
ガストンの店には、シルク混じりの繊細なズボンが並んでいた。確かに物は良いが、こんな泥だらけの現場で履けば、一時間でゴミになるだろう。
「やれやれ。TPOという概念が欠落しているな」
アレックスはガストンを無視し、ソフィアに合図した。
ソフィアたちが広げたのは、深い青色に染められた、ゴワゴワとした厚手の生地の山だった。
「なんだ、その安っぽい布は? テントの切れ端か?」
ガストンが嘲笑うが、アレックスは不敵に笑い返した。
「これはデニムだ」
アレックスは鉱夫たちに向かって声を張り上げた。
「皆! 破れないズボンが欲しくはないか!?」
その声に、男たちがわらわらと集まってくる。
「破れないズボンだと? そんなもんあるわけねえ!」
「俺たちは岩場を這いずり回ってるんだぞ!」
「論より証拠だ。ソフィア、解説を」
ソフィアが一歩前に出る。彼女は手に持ったジーンズを高々と掲げた。
「この生地は綾織り(ツイル)という特殊な織り方をしています。経糸にインディゴ染めの糸、緯糸に未晒しの太い糸を使い、高密度に打ち込みました。これにより、岩肌に擦れても破れにくい、圧倒的な耐久性を実現しています!」
さらに、彼女はポケットの端を指差した。
そこには、キラリと光る銅色の金具が打ち付けられている。
「そして、一番負荷がかかるポケットの口には、金属のリベットを打ち込んで補強しました。これなら、重い工具や魔石を詰め込んでも、絶対に裂けません!」
リベット。
それは、ただの縫製では耐えられない接合部を、金属でカシメてしまうという、服飾の常識を超えたアイデアだった。
「金属を……、服に使うだと? 馬鹿げている!」
ガストンが叫ぶが、鉱夫たちのアレックスを見る目は真剣そのものだった。
「おい、それいくらだ!」
「銀貨一枚だ。……伯爵の高級スラックスの十分の一だな」
「買った! くれ!」
「俺もだ! 二着くれ!」
怒涛の勢いで手が伸びる。
男たちはその場でズボンを履き替え、屈伸したり、わざと岩に腰をぶつけたりして確かめた。
「すげえ! 全然痛くねえし、突っ張らねえ!」
「このポケット、金槌を入れてもビクともしねえぞ!」
「色もいいな! 汚れが目立たねえ!」
鉱夫たちの歓声が上がる。
丈夫で、動きやすく、汚れに強い。
これこそが彼らが求めていた作業着だった。
そして、瞬く間に用意した五百着が完売した。
「そ、そんな……、私の最高級スラックスが……」
ガストンは呆然と立ち尽くしていた。彼の目の前には、誰にも見向きもされないシルクのズボンが寂しく揺れている。
アレックスは、札束の入った袋をソフィアに持たせながら、ガストンに近づいた。
「伯爵。この魔石ラッシュで一番儲けるのは誰か知っていますか?」
「な、なんだと……?」
「魔石を掘り当てた奴じゃない。スコップやズボンを売った奴だ。……夢を追う人間に、現実的な道具を提供する。それがビジネスの鉄則だ」
アレックスは、ガストンの店の前にある泥たまりを指差した。
「貴殿の商品は素晴らしいが、ここではただの泥布だ。顧客のニーズを無視した供給は、自己満足に過ぎない」
「ぐ、ぐぬぬぅ……!」
ガストンは悔しさに顔を歪め、そのまま荷物をまとめて逃げ帰っていった。
再びの完全敗北である。
「やりましたね、アレックス様!」
ソフィアが目を輝かせる。
「ああ。これで鉱山労働者たちの支持も得た」
アレックスは、新品のジーンズを履いて楽しそうに働く男たちを眺めた。
「それにしても、君の採寸と縫製は完璧だったな。あんなゴワゴワした生地を、動きやすい立体裁断に仕上げるとは」
「ふふ。生地が硬い分、少しゆとりを持たせました。……あ、そうだわ。アレックス様の分も作っておきましたよ?」
ソフィアが差し出したのは、アレックスのサイズにぴったり合わせて作られた、特製のブラックジーンズだった。
「……ほう。私に作業着を着ろと?」
「とってもお似合いになると思います。それに、これなら実験で薬品をこぼしても大丈夫ですし、私が引っ張っても破れませんから」
アレックスは苦笑しながらそれを受け取った。
「君に引っ張られるなら、破れても本望だがな」
魔石の輝きよりも眩しい成功を収め、二人は意気揚々と鉱山を後にした。
彼らが去った後も、鉱山では青いズボンを履いた男たちが、クロード公爵の名を称えながらツルハシを振るい続けたという。
一攫千金を夢見る男たちがツルハシを担いで山へ殺到し、前代未聞の魔石ラッシュが巻き起こっていた。
「……愚かな。確率論的に言えば、素人が鉱脈を掘り当てて億万長者になる確率は、雷に打たれるよりも低い」
朝のティータイム。
新聞を読んでいたアレックスは、呆れたように呟いた。
しかし、その目は鋭く光っていた。
「だが、この狂乱はビジネスの好機だ。ソフィア、荷物をまとめろ。鉱山へ行くぞ」
「えっ? まさか、アレックス様も魔石を掘るのですか?」
「まさか。私が掘るのは石ではない。需要だ」
数日後、二人は鉱山の麓にできた急ごしらえのテント村にいた。
そこは泥と汗、そして男たちの怒号が飛び交う荒々しい場所だった。
「クソッ! またズボンが破けちまった!」
「おい、誰か針と糸を持ってないか? ポケットが抜けて、せっかく掘った魔石を落としちまった!」
あちこちで聞こえる悲鳴。
ソフィアは周囲を見渡して気づいた。
鉱夫たちの服はボロボロだ。
彼らが履いているのは薄手の麻や、古くなったウールのズボン。
激しい重労働や、鋭利な岩肌との摩擦に耐えられる強度がないのだ。
「ひどい有様ですね……。怪我をしている人もいます」
「当然だ。彼らの装備はピクニックに行くレベルだ。……おい、そこの商人」
アレックスは、村の入り口で閑古鳥が鳴いている露店に声をかけた。
そこにいたのは、なんと没落寸前のガストン・ベルベット伯爵だった。
彼は王都での商売に行き詰まり、在庫処分も兼ねて一発逆転を狙い、ここまで流れてきていたのだ。
「ク、クロード公爵!? なぜこんな所に!」
「奇遇ですね、伯爵。何をお売りで?」
「ふん! 貴族向けの高級スラックスだ! 王都で売れ残っ……、いや、在庫希少な品を特別に持ってきてやったのだ! だが、この貧乏人どもには価値が分からんらしい!」
ガストンの店には、シルク混じりの繊細なズボンが並んでいた。確かに物は良いが、こんな泥だらけの現場で履けば、一時間でゴミになるだろう。
「やれやれ。TPOという概念が欠落しているな」
アレックスはガストンを無視し、ソフィアに合図した。
ソフィアたちが広げたのは、深い青色に染められた、ゴワゴワとした厚手の生地の山だった。
「なんだ、その安っぽい布は? テントの切れ端か?」
ガストンが嘲笑うが、アレックスは不敵に笑い返した。
「これはデニムだ」
アレックスは鉱夫たちに向かって声を張り上げた。
「皆! 破れないズボンが欲しくはないか!?」
その声に、男たちがわらわらと集まってくる。
「破れないズボンだと? そんなもんあるわけねえ!」
「俺たちは岩場を這いずり回ってるんだぞ!」
「論より証拠だ。ソフィア、解説を」
ソフィアが一歩前に出る。彼女は手に持ったジーンズを高々と掲げた。
「この生地は綾織り(ツイル)という特殊な織り方をしています。経糸にインディゴ染めの糸、緯糸に未晒しの太い糸を使い、高密度に打ち込みました。これにより、岩肌に擦れても破れにくい、圧倒的な耐久性を実現しています!」
さらに、彼女はポケットの端を指差した。
そこには、キラリと光る銅色の金具が打ち付けられている。
「そして、一番負荷がかかるポケットの口には、金属のリベットを打ち込んで補強しました。これなら、重い工具や魔石を詰め込んでも、絶対に裂けません!」
リベット。
それは、ただの縫製では耐えられない接合部を、金属でカシメてしまうという、服飾の常識を超えたアイデアだった。
「金属を……、服に使うだと? 馬鹿げている!」
ガストンが叫ぶが、鉱夫たちのアレックスを見る目は真剣そのものだった。
「おい、それいくらだ!」
「銀貨一枚だ。……伯爵の高級スラックスの十分の一だな」
「買った! くれ!」
「俺もだ! 二着くれ!」
怒涛の勢いで手が伸びる。
男たちはその場でズボンを履き替え、屈伸したり、わざと岩に腰をぶつけたりして確かめた。
「すげえ! 全然痛くねえし、突っ張らねえ!」
「このポケット、金槌を入れてもビクともしねえぞ!」
「色もいいな! 汚れが目立たねえ!」
鉱夫たちの歓声が上がる。
丈夫で、動きやすく、汚れに強い。
これこそが彼らが求めていた作業着だった。
そして、瞬く間に用意した五百着が完売した。
「そ、そんな……、私の最高級スラックスが……」
ガストンは呆然と立ち尽くしていた。彼の目の前には、誰にも見向きもされないシルクのズボンが寂しく揺れている。
アレックスは、札束の入った袋をソフィアに持たせながら、ガストンに近づいた。
「伯爵。この魔石ラッシュで一番儲けるのは誰か知っていますか?」
「な、なんだと……?」
「魔石を掘り当てた奴じゃない。スコップやズボンを売った奴だ。……夢を追う人間に、現実的な道具を提供する。それがビジネスの鉄則だ」
アレックスは、ガストンの店の前にある泥たまりを指差した。
「貴殿の商品は素晴らしいが、ここではただの泥布だ。顧客のニーズを無視した供給は、自己満足に過ぎない」
「ぐ、ぐぬぬぅ……!」
ガストンは悔しさに顔を歪め、そのまま荷物をまとめて逃げ帰っていった。
再びの完全敗北である。
「やりましたね、アレックス様!」
ソフィアが目を輝かせる。
「ああ。これで鉱山労働者たちの支持も得た」
アレックスは、新品のジーンズを履いて楽しそうに働く男たちを眺めた。
「それにしても、君の採寸と縫製は完璧だったな。あんなゴワゴワした生地を、動きやすい立体裁断に仕上げるとは」
「ふふ。生地が硬い分、少しゆとりを持たせました。……あ、そうだわ。アレックス様の分も作っておきましたよ?」
ソフィアが差し出したのは、アレックスのサイズにぴったり合わせて作られた、特製のブラックジーンズだった。
「……ほう。私に作業着を着ろと?」
「とってもお似合いになると思います。それに、これなら実験で薬品をこぼしても大丈夫ですし、私が引っ張っても破れませんから」
アレックスは苦笑しながらそれを受け取った。
「君に引っ張られるなら、破れても本望だがな」
魔石の輝きよりも眩しい成功を収め、二人は意気揚々と鉱山を後にした。
彼らが去った後も、鉱山では青いズボンを履いた男たちが、クロード公爵の名を称えながらツルハシを振るい続けたという。
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