『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
111 / 178
5章 ダンジョン

8

しおりを挟む

「すまない、待たせたな」

 モンラース皇子との話も終わり、ダンジョンの話などをしているとようやく陛下たちが顔を出した。皇女様方も一緒のようだ。俺たちと違い、この4人は顔がよく似ている。さすが、両親が同じなだけある。そう思うとある意味モンラース皇子は唯一の同士なのかもしれない。

「さて、最近シラマーラ妃の様子はどうだ?」

「ずいぶんと落ち着いていますよ。
 もう、権力争いにはかかわらない、と決めたみたいですから」

「そうか」

 シラマーラ妃って確か……。モンラース皇子の母親だっけ? そんなことを考えていると隣に座ったカンペテルシア殿が話しかけてきた。

「モンラース殿とは話せたか?」

「え?
 ええ……」

 話せたかって……。もしかしてこの人たちそれで遅れてのか? まあ、別にいいけどさ。

 さすがにモンラース皇子はそれぞれと話をしたことがあるらしく、何か新しい話題というか現状確認という感じだった。俺は特にモンラース皇子と話したことがなかったし、この兄弟に関しても私的なことは全然知らなかったからなかなか興味深い。

 今はもう皇籍を抜けてる元第5皇子、現サーン伯爵家嫡男ズシェル殿の話も出てきて、興味深かった。ズシェル殿とか会ったこともないしね。本来は側妃が皇家の血を引く子を連れて実家に戻るとか大問題だけれど、そこは前皇帝らしいというかなんというかね……。

 この方、兄弟の中で一番体が弱い人だったらしくよく寝込んでいたそう。もともと皇宮内を出歩かない俺とは会うはずもなく。そのうえ、母親である第一側妃は相当甘えたな性格だったらしく、まったく振り向かない皇帝に寂しさを感じて実家に戻ったとか。しかも、実家に帰ってからほかの人と結ばれたとかなんとか……。ある意味すごい人だ、ミヤンテラ側妃。

 ズシェル殿は何かとプレッシャーのかかる皇宮を抜け出せたからか、伯爵家に戻ってから体調は順調に回復。今はきちんと嫡男としての務めを果たしているみたい。即位式や舞踏会などで顔を合わせることもあるかも、という話だったので少しだけ楽しみだ。

「そう言えば、スーベルハーニの母君はあまり詳しい事情を知らないな。
 リゼッタ側妃は赤い目に黒い髪という珍しい色合いに、目を引くような美貌だったことは鮮明に覚えているが……。
 あいつがどこから連れてきた人なのかも知らないし、どういう方だったのかあまり印象がない」

「控えめな方でしたしね。
 唯一自分から望んで妃にしたこともあって、ショコランティエがだいぶ荒れて離れに押しやっても粛々と受けて入れていたようですし」

 母上、そんな人だったんだ。目を閉じると、今ではあの人の柔らかい笑みを思い浮かべることができる。とても、優しい人だった。そして、よく寝込む人でもあったような。

 いつの間にか話はこちらに向けられていて、どういう人だったのか聞かれる。こうして、異母兄弟に母に対して興味を持ってもらえたのが嬉しかったのか、覚えている母の様子を伝えた。

「でも……。
 俺も母の出身はわかりません」

「そうか……」

 おそらく、母上に関わることの唯一の手掛かりはこれだ。ずっと身に着けている懐中時計に触れる。俺が持っている、そしておそらく唯一残る母の私物。微細な細工が施されたそれは、きちんと巻いているからかかちこちと時を刻んでいる。

「それは?」

「母の遺物です。
 これしか母の私物は遺っていないかと」

「とてもきれいだな……。
 そうか、ショコランティエが中に遺っていたものごとあの宮を取り壊したものな」

「ええ。
 いつか、母の親族に会うことはあるのでしょうかね」

「どうだろうな。
 少なくとも、皇宮にはここに来る前のリゼッタ妃についての記録は一切なかった。
 あいつが記録を残す必要性を感じていなかったであろうことと、ショコランティエがリゼッタ妃に対して嫉妬していたことが原因だろうが……」

「そういえば、母はエキストプレーンに望まれてここにやってきた、と言いました?」

 俺の言葉にその場の人たちがうなずく。このことは周知の事実だったらしい。なるほど、だからショコランティエはあそこまで目の敵にしていたのか。ほとほと迷惑な話だよな。

「視察先でリゼッタ妃と出会い、一目ぼれだったとか。 
 その場にいたものの話では、リゼッタ妃は真っ青な顔で側妃として召し上げるというあいつの言葉を聞いていたようだ。
 嫌がっても、その言葉を聞かなかったと」

 うわぁ。嫌がる中無理やり連れてこられ、その先で先に来た嫁にいびられてたってことでしょう? 迷惑どころの話じゃないって。でも、母上はそんな環境でも俺と兄上を産んだのか。

 もう何年も前の話だ。当人たちはすでに亡くなっている。でも、俺の中では言いようのない怒りがわいていた。

 母については不鮮明なことが多い、ということで話は別の話題へと移っていった。 

______________________________
ショコランティエ→元皇后
エキストプレーン→元皇帝
になります。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...