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1章 変わる日常

12話 王都到着(3)

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 翌日は朝からバタバタとしていた。どうやらお姉様の婚約者になるベルク殿下がこちらにいらっしゃるのだそうだ。どうやらこのことが伝えられたのは昨日、私が寝ている間のことだったらしい。

「お嬢様、身支度を済ませてしまいましょう」
 
 朝、眠っていたらいきなりそんなことを言われて起こされた私は何が何だかわからなかった。まず、部屋に人がいたことに驚いたのだ。私付きの侍女はいたのだけれど、それほど仕事熱心な子じゃないからな~。おかげで一通りのことはできるようになってしまった。これでも侯爵家のご令嬢なんだけどな?

 そんな風に現実逃避をしている間にも準備は次々と進んでいってしまう。さっと湯あみを済ませるといつの間にか用意されたドレスへと袖を通す。一人では着れないようなデザインのドレスをいるのはいつぶりだろうか。

「さあ、できましたわ」

 最後に軽くメイクをすると、準備をしてくれた侍女は満足そうにそういう。そのあとにようやく軽くつまめるような朝食を持ってきてくれたのだ。

「ありがとう」

 一言お礼を言うと、すぐに微笑みを浮かべて会釈をしてくれる。無視されないっていいね!

「ウェルカ、いいかしら?」

 軽いノックの後、そんなお姉様の声が聞こえる。

「もちろんです」

 私の声と被るように部屋にいたままだった侍女がすぐに扉を開けてくれる。その様子にこっそり感銘を受けてしまった。本宅よりも王都の屋敷の使用人たちの方が格段に訓練されているのってどうなんだろうか?

「まあ、とても可愛いわ」

 ニコニコとした笑みを浮かべながらお姉様がこちらを見る。そういうお姉様はとてもお綺麗だ。それが殿下のためだというのがなんだか気に入らないのはなぜだろうか。

「そろそろ殿下がいらっしゃるでしょうから、入り口でお迎えしましょう?」

「はい」

 お姉様に誘われて玄関へと向かうと、すでにヴィルチ、ガゼットがいた。どうやらこの四人でお迎えするようだ。四人揃ったところで、玄関の外へといき、殿下を待つことになった。

 緊張しながら待つこと数分、馬車の音は思っていたよりもすぐに聞こえてきた。そして、玄関の前で止まったかと思ったら、中から一人の青年が出てきた。金の髪に王族の特徴である澄んだ空のような蒼の瞳、そして長くしなやかな手足やバランスの取れた顔のパーツ、どれをとってもすべてを計算して作られた人形のような人だと、そう思った。三人が殿下に対して最上級の礼をするのを見て、慌てて私も見様見真似で真似てみる。

「お出迎えありがとう。
 でも今日は突然来てしまったからね、そういったことは気にしなくて大丈夫だよ」

「ご配慮、ありがたく受け取らせていただきます殿下」

 周りが頭を上げたのを感じて私も頭を上げる。そしてそっと殿下を見ると、少し困ったように笑ってらした。そこには、血の通った人間の顔をあって私はなんだか安心してしまった。

「サロンの方においしいと噂の菓子を用意させましたので、ぜひ」

「それは楽しみだな」

 私が少しぼーとしているうちにいつの間にか二人は屋敷の中に入っていこうとしていた。いけない、いけない。ちゃんとついていかないと、本当にどうしたらいいのかわからなくなってしまうのだ。改めて気合を入れ直して私は二人の後をついていった。
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