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1章 変わる日常

13話 王都到着(4)

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 さて、今私の前には机を挟んで殿下がいらっしゃいます。まあ、殿下は私の隣に座っている姉の向かいの席にいるのだから正確には向かいではないのだけれど……。
 そんな風に現実逃避してみても現状は変わらなかった。お姉様と殿下との話なのならば私はここにいなくていいのでは? と思っていたのですがだめでした。なぜか少し重い空気の中、侍女がお茶とお菓子を用意してくれる。準備が終わるタイミングでようやくお姉様が口を開いた。

「三人だけで話がしたいので、皆さん下がっていてくれるかしら」

 我が家の使用人はその言葉に素直に部屋を出て行ったが、殿下の御付きの方々はどうしたらと殿下の方を見ている。殿下が一つうなずくと、しぶしぶといった様子で皆出て行った。

「さて、殿下。
 この子を私付きの侍女として城に上がるのを許可したというのは本当ですか?」

 さっそく話を始めたお姉様に殿下は困惑したような様子でこちらを見てきた。

「この子というのは……?
 その子はアゼリア嬢の妹ではないのか?」

 確かめるようにそう言われて、ようやくまだ挨拶もできていないことを思い出した。正しい礼の仕方なんて実はきちんと教えてもらったことはないから不格好かもしれないけれどやらないわけにはいかなかった。

「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。
 バーセリク侯爵の次女、ウェルカ・ティー・バーゼリクと申します」

「ああ、私はベルク・アンセット・タリベアンだ」

 私が一礼すると、殿下も名乗ってくれる。

「やはり、妹だよな。
 今いくつだ?」

「九つになります」

 そういうと、まさか、とつぶやく。何か心当たりがあったようだ。

「確かにアゼリア嬢を側妃に、と望んだ時にその条件の一つとして10歳に満たないものを侍女としてつけたいと言っていた。
 まさか、それがウェルカ嬢だとは思ってもいなかったが……」

「つまり、殿下は私の妹だとわかっていて侍女につけることを許可したわけではないのですね」

 ああ、と殿下はしっかりとうなずく。そこでようやくお姉様はほっと表情をやわらげた。そこでようやくお茶に手を出す。私もそれに従ってお茶を口にした。

「そもそも上位貴族の子息子女は10歳には学園に入らなくてはいけないだろう」

「おそらくですが、お父様はそこの学費を払うのを渋ったのではないかと」

 お姉様の言葉に、殿下はついに頭を抱えることとなってしまった。そして、何を考えているんだ、とぼそりとつぶやいた。何だか申し訳ないです。そして一つため息をつくと、さてと言ってもう一度お姉様の方に向き直った。

「この話をするためだけに人払いをしたわけではないのだろう?」

「はい。
 このことを確認したうえで話を進めたかったのです。
 このままバーゼリク家に籍を置いたまま殿下のもとに嫁ぐのも不安ですし、ウェルカのことが心配ですので、実はチェルビース公爵家に身を寄せたいと考えているのです。
 まだこのことはウェルカにしか話しておりませんので、決まった話ではないのですが……」

 殿下は一瞬驚いた顔をするも、それもいいかもしれないと納得した顔をしていた。そして私の方を見る。

「ウェルカ嬢はそれでいいのかい?」

「私は、お姉様についていきます」

 いいも何も、私には決められない。そんな気持ちでそう答えると、なぜか苦笑いされてしまった。

「私もその方がよいと思う。
 支援ならするから、ぜひ公爵殿にも話をしてみてくれ」

「ありがとうございます」

 何とか話はまとまってくれたようだった。
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