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2章 学園生活

107話 宿泊(3)

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 熱が完全に下がったのはそれから二日後のことだった。まあ、昨日にはもう微熱程度だったのだが、イルナが食事など以外で起きていることを許してくれなかったのだ。

「ウェルカ、もう体調は大丈夫なのかしら?」

「はい!
 ご迷惑をおかけして、すみませんでした」

「あら、迷惑だなんて思っていないわ!
 でもよかったら散歩に付き合って下さらない?」

 散歩……。どこを歩くのかはわからなかったが、寝たきりだったから確かにまずは軽い散歩からはじめたい。

「ぜひ」

 そう返事をすると、すぐに外に出られるようにと服を準備してくれた。ここは王宮の一角ではあるけれど、居住区ということがありそうそう人は入ってこない。そのため着飾らなくていいのはとても楽だ。

「この時期に咲く花もね、とてもきれいなのよ。
 庭師の方が毎日手入れして くださっているから」

 案内されたのは部屋からも見えていたきれいな庭園。こうして実際に歩いてみると見えていたのはほんの一部なんだと実感する。前回は泣いてばかりでろくな話もできなかったぶん、今度は他愛もない話しをしながら庭園をゆっくりと歩いていった。

「そういえば、殿下方とお茶会の約束をしたの?」

「そういえば……。
 お姉様の結婚式のときにそのような話をしましたね」

「そう。
 休みに入ったら5人でお茶をしましょう、とおっしゃっていたわ」

 入学でバタバタとしていたこともあり実は忘れていたのだが、今思い出したということでセーフだろう、うん。それにしても本当にお茶会をやるのか。

「ふふっ、そんな顔をしないで。
 皆さんが言い方だとが分かっているでしょう?」

「わかってはいますけど、やっぱり緊張はします」

「それは、まあ仕方ないわね」

 休みまであとわずか。いつやることになるのかは正式な招待状を送ってくださるようだ。思っていたよりも本格的?

「休みに入ったら、またこちらに泊まりに来てね?
 私はなかなか家の方には行けないから」

 また、泊まりに。正直来たくないけれど、こうしてお姉様と話したい。となると、私が選べる選択肢は一つだけだ。

「はい……」

「ありがとう!
 また手紙を送るわね」

 にこにこと嬉しそうなお姉様を見ていると、行くって返事してよかったなんて思うから、私はやっぱりお姉様に甘いのかもしれない。

 そして、庭園を軽く回り部屋に戻るとすぐに先生が訪ねてきた。その顔はとてもこわばっている。一体どうしたんだろう?

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