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2章 意外な出会い
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しおりを挟む朝食をとるとひとまず自室に戻ることになった。部屋に戻ると、さっそく使用人からもプレゼントをもらうことに。サイガたちからはペンを、アベルたちからは茶葉を、料理人たちからはめったに食べられない珍しい甘味を、うん、いろいろともらったね。どれも有り難くいただきました。
そうしてのんびりしていると、扉をノックする音が聞こえてきた、
「どうぞ」
「おや、タイミグがよかったようですね」
「キャベルト隊長!」
「9歳、おめでとうございます。
これは私からです」
渡されたのはこれまたラッピングされた箱。先ほどよりも重みがある。
「開けてみてもいいですか?」
そう聞くと、ええ、とうなずく。さっそく包みを開けると中にあったのはナイフ?
「剣は扱いずらそうでしたので。
これでしたらそれなりに軽いですし、護身用に持っていても損はありませんから。
今まで剣ばかり扱っていましたのでなれないかもしれませんが……」
「ありがとう、ございます」
言いながら、ナイフを鞘から抜く。光を受けてきらめくそれは、おそらく相当にいい品なはずで。本当にもらってしまっていいのだろうか。そんな思いが顔に出てしまっていたのか、もらってください、と苦笑されてしまった。
ちなみに、『ラルヘ』が得意とするのは剣だったが、幼いときはナイフを使っていた。というか、下町の貧しい民が剣などというものを持てるはずもなく。そのあたりに落ちていたナイフを必死に研いで武器としたのももう懐かしい思い出だ。手の中のものはそれと比べるべくもないほどの品ではあるが。剣を持つようになったのは兵士となってからであり、それまで愛用の武器であったナイフはそれなりに扱える、と信じたい。
「それとこれはナイフを収めるホルダーです。
こちらには万が一に備えての解毒薬も……」
待って待って。解毒薬っていったい何を想定しているの? ナイフはまあ、いいとしても。
「王都は危険も多いですからね」
ぼそりと隊長がつぶやいた言葉、聞こえていましたからね。そんな危険はそうそうない気がするんだけれど。
「ありがとうございます。
王都でも身に着けていますね」
「ええ、そうしていてください」
それだけ言うと、隊長はあっという間に出て行ってしまった。まあ、もうそろそろ叔父上たちが来るものね。僕も移動しないと……。
「アラン!
大きくなったな」
3の鐘が鳴ってしばらくすると、叔父上たちがプレゼントをもって屋敷を尋ねに来てくれた。相変わらず少し豪快な人だよね。でも、だからこそなんの気負いもなく接することができる。
「はぁ、ルベルダは変わらないな。
アラン、9歳おめでとう。
これからどんな風に成長していくか、楽しみで仕方ないよ」
「ありがとうございます、シュベリズ従伯父上。
精進していきます」
僕の言葉に満足そうにうなずくと、プレゼントを渡してくれる。
「次に会うのはお披露目のときか。
それにしてもアランがもうお披露目か……。
銀月から王都に行くんだったか?」
「はい」
「そうか、がんばれよ」
シュベリズ従伯父上は僕の頭をもうひとなですると、父上のところへと言ってしまった。
そうしてたくさんの人にお祝いしてもらって、9歳を迎えた赤の日は終わっていった。
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