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しおりを挟むボォォーン。
壁時計の音に、はっと現実に戻された。
無意識にあげようとした腰と伸ばそうとした腕。
跳ねる鼓動を無視して、表情を取り繕う。
危っねぇ!!
思わず欲望のままに抱き寄せて唇を奪うとこだった。
居心地良すぎて忘れそうになるけど、ここ個室とかじゃねぇから!
席の間隔広いし、会話ぐらいなら大声じゃなきゃ聞こえないからセーフだけどキスはアウトだ。
確実に他の客らの注目を浴びる。
ナイス時計!6時最高!!
わりと脳内大混乱で、壁時計へと謎の賛辞を捧げた。
自分でも意味わからん自覚はある。
「ラファエル……?」
俺の脳内大混乱などつゆ知らず、不安そうに表情を曇らすレイヴァンへと取り繕った表情ではなく、本心からの笑みと言葉を返した。
「嬉しいよ」
コクリと飲み下したチョコの最後の甘さが舌を捉えて離さない。
いつまでも絡みついて、くらくらするような酩酊感も全ては拭えず頭の芯は痺れたまま。
「ここが人前であることが惜しいぐらいにすごく、嬉しい」
声を潜め、彼が触れた唇を自分の指でつっとなぞる。
言葉と動作に意味を理解したのかレイヴァンの顔がぶわりと熱を持った。
大変可愛らしく美味しそうではあるのだが……この状態でこれ以上俺を煽るのは是非ともやめて頂きたい。
いやまぁ、俺が仄めかした言動が原因なのだけども……。
とりあえずアレだ。
いまにも理性の糸が切れそうなほどグラグラってことです。
二杯目の飲み物を飲み干し、二つ残っていた菓子の一つを片付けるともう一つを指で摘みあげた。
ほんの少し身を浮かせて、伸ばした腕をレイヴァンの唇へと運んだ。
先ほどのお返しのように菓子をその唇へと押し込む。
「だから、ね?そろそろ出ようか?」
囁くようにそう告げれば、真ん丸な目をするレイヴァンに駄目押しのように「ね?」と僅かに首を傾けた。
咀嚼か、肯定か。
コクリと動いたその動きに、上着を腕にかけた俺はソファから立ち上がり彼へと手を伸ばした。
人前での熱烈ハグとキスはなんとか自重した俺だったが、男同士で食べさせ合うのはやっぱりちょっと目立ったかもしれない。
入り口わきの支払いカウンターへと向かう途中、通りがかった窓際の席のお嬢さん二人が赤い顔をして俺たちが通りかかる時に視線を伏せた姿を見て、そう反省したりした。
ただでさえイケメン美形のレイヴァンだ。
店の雰囲気とも相まって、お嬢さんたちの視線もチラチラ向いてたのかも……。
まぁ、悪いことをしたわけでもないし、そう深く反省してるわけでもないが。
あ、でもレイヴァンの社交用じゃない素の表情を見られたのはちょっともったいない気がしないでもない。
うーん、やっぱ俺って結構心が狭い?
「お土産になにかいる?」
「い、いえ」
レイヴァンに尋ねるも、ふるふると首を振られた。
ならば、と自分の分だけ注文をした。
ショーケースに入ったショコラを幾つか指さば、小箱に収めた四つのショコラを確認のため見せてくるオーナーに頷き財布を取り出す。
「ああ、包装は構わない」
光沢の美しいリボンを取り出したオーナーに首を振り、そのまま紙袋に入れて貰って店を出た。
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