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しおりを挟むなんでこんなことに…………?!
手を振り乱しながら大声で喚き立てる男。
数人の騎士がさらに駆け寄ってくる。
そんな光景を前にそう思わずにはいられない。
場所はまだ王城。
だが先程までいた大広間ではなく、休憩などのために設けられた場の1つ。
部屋の中央付近で俺たちは棒立ちしていた。
突然はじまった捕物劇。
正直、わけがわからない。
わけはわからないが……俺らがこんな状況に巻き込まれている原因だけは物凄くはっきりしている。
真っ赤なドレスを着た女を抱きしめ蛇のように嗤う男。
なにをしたのか一瞬で女の意識を奪い、力を失ったその身体を雑にソファへと横たえるスネークの所為だ。
俺は疲れていた。
やたらと大物と関わってしまったばっかりに、他の貴族どもの関心を惹いてしまった。
するとどうなるか?
まぁ、知らない貴族から値踏みがてら話しかけられるわけですよ。
一人でいるとダンスなんかの誘いも躱すのが面倒で、カイルと一緒に居た。
そこに話しかけてきたのが美人を腕に引っ掛けたスネークだ。
「よぉ、久しぶり」
愉しそうに唇をニィィと釣り上げ声をかけてきたスネークに誘われ、この場に至る。
冷静に考えれば、あれは確実に良からぬことを思いついた笑みだったし、第一こんな危険人物について行くんじゃない!!
数十分前の俺に激しくそう忠告したい。
だけど疲れてたんだよ。
「ここはウッセェし、アッチで話しねぇ?」って誘いが魅力的に感じちゃったんだよ!
一人なら断固拒否したけど、あっちは既に女連れ、しかもカイルもいるし手を出されることもないだろうって安心したのがいけなかった。
手は出されてないけど、なんか変なことに巻き込まれている。
部屋には先客が三人居た。
なにやら揉めていた男たちがスネークの目的だったのだろう。
そっからはあっという間だった。
どうやら知り合いらしい男たちとスネークの連れの女がお互いに目を見開いて驚き、ニヤニヤ笑いを浮かべたスネークが男たちに話しかけた。
この時、遅れてレイヴァンくんがご登場ー。
のこのこ怪しい男に着いてく俺を見て慌てて追いかけてきたらしい。
すんまそん。
警戒も露わな男たちと、獲物を追いつめるようなスネークの姿に「一体なにが?」って問われても、俺らもわけがわからないから首を振ることしか出来ない。
ただ「今頃屋敷に捜索が」とか「証拠」だの、不穏なワードが嫌でも耳にはいってきてはいた。
腕を振り払って逃げ出そうとした女の意識をスネークが一瞬で奪い、続けざまに背の低い男の腹に一撃をお見舞い。
男が崩れ落ちる直前、残りの二人は走り出していた。
入口へと向かう男たち、だけどその入口からは騎士の姿が……。
先を走っていた男が騎士に捕らえられ、もう一人は慌てて方向転換して他の出入り口へと向かう。
進路上こちらへ向かってきた小太りな男をカイルが軽々と締め上げる。
「よくわかんねぇけど、これでいいんスかね?」
男の首に腕を回して締め上げながらスネークに問えば、上出来とばかりにパンパンと打ち鳴らされる手。
「ソイツも落としていーや」
「うっス」
トン、と首裏に一撃を入れれば暴れていた小太りの男の身体が地に落ちる。
一件落着、かと思いきや……入口の男が暴れながら騎士の拘束から逃れた。
「はぁ?」
心底不思議そうなカイルの声。
それには俺も同意しかなかった。
手足を振り乱し走りだした男は、入口の騎士や俺たちからはやや離れた部屋の隅、ドリンクや軽食が置かれたスペースで足を止めた。
「もう観念しろよ。大事なモンだってとっくに押収されてっだろうし、逃げられねぇって」
騎士らを視線で示しながら、嘲るように口にするスネークの言葉に男がチラリと視線を動かす。
悔し気に唇を噛んだチャラそうな男は上着のポケットに手を突っ込むと、「まだだっ!」と歪んだ笑みを浮かべた。
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