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しおりを挟む「わりとイメージ通りです」
キョロキョロと視線を部屋に彷徨わせたあと、レイヴァンがふふっと笑う。
「イメージ通り?」
「はい、ラファエルの私室は色味が少なくて整理整頓されてそうだなって。家具や調度品もセンスがいいですね」
そう言ってぽすんとソファーに腰を降ろすレイヴァンくん。
座り心地を確かめているのか、お尻をポスポス弾むように動かす姿はいつもよりもかなり幼く見える。
そんな楽しそうな彼とは反対に……俺はちょっぴり緊張気味だ。
なんせ好きな子が自分の部屋に居るわけだからね。
元々散らかっているのは気になる性質だし、それなりに小奇麗にしてるけど改めてお掃除&ファブ的なのをシュッシュしましたとも。
だって臭いとか言われたら泣くよ?
メイドがお茶を運んできてテーブルへと並べる。
侯爵家のご長男の訪問に阿鼻叫喚で屋敷を磨き上げ、現れたイケメン貴公子にお茶を運ぶ役割を賭けてし烈なジャンケン争いをしていたとはとても見えない淑やかさだ。
最後まで完璧な外面を保ったメイドに感心しつつ見送った。
静かに閉められたドア。
30秒ほどの間を置いて、俺の名を呼んだレイヴァンがソファーの隣をとんとんと叩いた。
「僕がそっちに行きましょうか?なんなら貴方の膝の上でもいいですけど」
「わかったよ」
苦笑いしつつ、大人しく彼に従う。
こども一人分ぐらいの隙間を開けて隣に腰かければ、すぐにピタリと距離を詰められた。
思わず体が強張りそうになるのを堪える。
だってさぁーー!!
密室に二人きりだよ??
しかも隣室には愛用のベッドが鎮座していらっしゃる。
落ち着け俺、童貞の中学生男子か。
あ、中学生じゃないけどこの身体は経験なしの真っさらだった。
内心動揺しつつ、平静を保っている俺はあのメイドと張れるのではないだろうか。
さて、なんでここにレイヴァンくんがいらっしゃるかというと。
今日が休日だからですね。
そして「貴方の家に行きたいです」ってオネダリされたから。
ほら、王太子殿下の生誕パーティーでエヴァンさんと会ったじゃん?
そんでエヴァンさんが家に来ることになったんだよ。
…………まさかのミハエルたちまで。
他国の王子訪問のお知らせにメイドたちが白目剥いた。
「恋人の僕が行ったことないのに」って可愛く拗ねられたら断れないよね?
レイヴァンの小悪魔度がどんどん上がってきてる気がするのは気のせいかな??
そんな小悪魔ことレイヴァンは持参した紙袋をゴソゴソし出した。
オシャレな紙袋も中身の箱もすっごい見覚えがある気がする……。
「手土産を持ってきたんです。お茶も淹れて頂いたことですし」
ふわりと漂う甘い香り。
シックな箱の蓋をレイヴァンがパカリと開ければ……整然と並ぶ美しいショコラたち。
……やたらと赤いハート率が多い気がしますが。
馴染みのカフェのロゴの入った手土産を無言で凝視すれば、綺麗な指先がオリフェリアの心臓を一つ摘んだ。
見せつけるようにやけにゆっくりと、ふっくらとした唇がそれを食む。
「んっ」と鼻に抜けるような音を漏らし、赤いショコラを半分咥えたまま上向く顔。
「どこでそんなこと覚えてきたの」
絞り出すように苦く呟き、その唇を奪えば、舌がそっとショコラを押し込めてくる。
はぁはぁと荒い息の最中、熱い吐息と声が耳元で悪戯っぽく囁く。
「貴方が、教えてくれたんでしょう?」
「……っ」
返したのは、言葉ではなく重ねた唇。
マジで小悪魔化が激しいんですが、どうしたらいいですか?
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