136 / 164
136
しおりを挟む「普通さー、こーいうのって行事のあとじゃねーの?意味わかんねーんだけど!」
「そのとーり!!ってかそもそもテストとかいらないし!!」
「うるさい。図書室で騒ぐな」
「そうですよ。そんな暇があったら一問でも進めたらどうですか?」
「そもそもテストが先なのは君らみたいのがいるからだと思うけど」
「で、ですが……今回は範囲も少なめですし」
ブーブーと不満を声高に告げる脳筋兄弟に対し、呆れた目を返す俺ら。
唯一、リーゼロッテ様だけがフォローめいた言葉をかける。
学生お馴染みの恒例行事、その名もテスト。
勉強嫌いなカイルとアレンは騒いでいるが、レイヴァンの言葉通りそんな暇あったら勉強しろし。
「ラファエルっ!今回の山どこ?!つか俺、数学と英語ノートとってねぇ!」
……お前寝てたもんな。
「ほら、この辺。ノートもここらは出そうだからちゃんと写して。これ一年の時のテストです。リーゼロッテ様が仰ったように今回は範囲が少ないし、代わりに突っ込んだ問題とかも出やすいですよ。アレンは最低限この辺」
「「神っ!!!」」
ははっー!!って拝まんでいいから勉強しろ。
そんな風に賑やかに騒ぎつつ、俺自身も参考書に目を通す。
ノートや教科書、参考書にはマーカーや書き込みがちらほら。
いつもならさほどテスト勉強に力は入れないのだが……今回はちょっぴり気を入れている。
ほら、いまさらになって進路を迷い中だからね。
どの道を選ぶにしろ、いい成績を取ってて悪いことはねーし。
まぁ、元々成績はそれなりにいいし、わりと品行方正にやってるから問題はなさそうではあるけど。
ぐでーと机に突っ伏する緑頭が二つ。
「お待たせしました」
トレイからドリンクとケーキを配る。
「ほら、二人も」
お礼を言われつつ、屍と化しているカイルとアレンの前にも並べれば二人はのろのろと顔をあげた。
見事にげっそりしている。
激しい訓練や模擬戦でもピンピンしてる癖に、真面目に勉強を数時間の方がよっぽど消耗するようだ。
テスト期間で午後は授業なしだったためわりとガッツリとテスト勉強を行い、帰る前にと食堂に寄ることになった。
同じような理由でか、放課後にも関わらず意外と生徒の数が多い。
「あー早くテスト終わんねぇかな」
でっかい口で豪快にハンバーガーにかぶりつきつつカイルがグチる。
ケーキはとうに食べ終え、これだけじゃ足りねぇとばかりにバーガーを2セット追加。
「でも赤点とったら補習だし。学園祭前に補習とかムリ」
同じくバーガー片手にポテトをつまみ、アレンがでっかい溜息を吐いた。
テストの一カ月後には学園祭がある。
文化祭と体育祭を合わせたようなそれは外部からも人を招き結構な大規模だ。
一日目が模擬店や演劇、オーケストラなどの出し物。
二日目は闘技場で行われるトーナメント式の試合、それから魔獣を召喚した闘いなど。
三日目は締めくくりのパーティー。
さて、ここまで聞けばお分かりだろう。
脳筋兄弟のお楽しみは当然ながら二日目。
しかも学園創立25周年を記念する今年は……。
「ゲストとしてクラウ・ソラスまで来るとかマジで楽しみっ!!絶っ対に補習は回避する!!」
「訓練の時間なくなるとかマジないっ!!」
なら、最初っから真面目に勉強しろよ。
ワクテカする二人に俺らの心の声がハモった。
581
あなたにおすすめの小説
世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました
芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」
魔王討伐の祝宴の夜。
英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。
酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。
その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。
一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。
これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
炎の精霊王の愛に満ちて
陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。
悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。
ミヤは答えた。「俺を、愛して」
小説家になろうにも掲載中です。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています
水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。
「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」
王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。
そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。
絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」
冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。
連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。
俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。
彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。
これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる