137 / 164
137
しおりを挟む壁に凭れ掛かって腕を組んだ姿は「なんの撮影ですか?」って聞きたくなるぐらいキマっている。
そんなイイ男が1人佇んでいれば女性が放っておくはずもなく、ナイスバディ―な美女二人組が熱心に話しかけていた。
「うっわ、モテモテ。どーする?ちょい待つか?」
あそこに割り込むのもどうなのか、と顔を見合わせていると男の視線が俺らを捉えた。
軽く上げられた手、微かに緩む口元。
そんな些細な動作にさえあちこちからきゃあと華やいだ声が上がった。
「場所はこっちで決めていいか?」
歩きながら問いかけてくる男、ゼリファンに肯定を返しその背に続く。
「別に……お詫びをしていただく必要はなかったんですが……」
もう数度目になるそんな言葉が口をついた。
「気にするな。休日に食事に付き合ってもらうだけだ。それと、勧誘もな」
ほんの少し唇を引き上げるだけで、どうしてこうも男の色気を放出できるのか。
羨ましいを通り越してもはや感心の域。
そしてゼリファンが俺へと話しかける度に握ったお手てをぎゅっとしてくるレイヴァンくんは今日も警戒MAXです。
やがて扉を潜ったのは照明が抑えめでオシャレなお店。
他の客が見当たらないこととバーのような雰囲気から、もしかしたら本来は夜だけの営業なのかも。
座った座席は俺の隣にレイヴァン、向かいにカイル。カイルの隣がゼリファンだ。
頑として俺の隣と向かいにゼリファンを据えたくなかったレイヴァンによる座席指定です。
特に不満はなかったが、ゼリファンもカイルも苦笑いだった。
「何でも好きなものを注文してくれ。先日の詫びも兼ねてるんだから遠慮はいらない」
かー!どこまでもモテ男感が溢れてやがんな、とか思いつつメニューをぺらり。
遠慮はいらないって言われてもやっぱり気が引ける小心者の俺とは異なり、「やりぃ!」と大喜びであれこれ指さしていくカイル。頼みすぎじゃね?
そしてレイヴァンも特に気にする素振りもなくメニューを決定。
こちらは奢りに喜んでるっているより、ただ慣れてんだろうな。
食事をしつつ雑談を交える。
なんで休日に俺らがゼリファンと食事をしているかといえば、先日のパーティーの詫びを兼ねてだ。
ゼリファンの申し出にカイルが一も二もなく食いつき、意外なことにレイヴァンも嫌がらなかった。
「色々と気に食わない面もありますが、あの人の実力自体は認めてますし尊敬もしてますよ。それに僕も入隊を視野に入れてますからクラウ・ソラスのことには興味があります」
ムスッとしつつそんなことを言っていた。
てっきり毛嫌いしているものと思っていたらそうでもないらしい。
とか思ったら、ものすっごく凄みのある笑顔で「貴方と二人で食事に、というのなら絶対に許しませんが」と続けられた。
要は……気に入らない面は主に俺絡みっぽいです。
ちなみに、怪我の件では近衛の隊長さんたちからもお詫びの品を贈られてしまった。
高級茶葉と菓子の詰め合わせと、駄目になった手袋の代わり。
お陰で俺が事件に巻き込まれたことが使用人たちにバレた。
髪型崩れてたから問い詰められたけど、適当に誤魔化してたのに―…………。
めっちゃ心配された。
なお、ゼリファンが俺らを食事に誘った時に最大の元凶であるスネークも「じゃー俺も」と名乗りを上げたのだが、全員一致でお断りした。
いやだって、あいつ絶対詫びの気なんてねぇし、面倒なことになる確信しかねぇ。
そんなこんなで実際には特に詫びる必要もないゼリファンだが、部下の不始末という名目で俺らに食事を奢ってくれることになったのだった。
596
あなたにおすすめの小説
世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました
芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」
魔王討伐の祝宴の夜。
英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。
酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。
その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。
一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。
これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています
水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。
「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」
王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。
そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。
絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」
冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。
連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。
俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。
彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。
これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる