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しおりを挟む「そーいえば、学園祭。クラウ・ソラスも招待されるって聞いたんスけど、ゼリファン様も来るんですか?」
ナイフとフォークを忙しなく扱いつつ、カイルが横を向いた。
赤ワインのグラスを手にしたゼリファンが「ああ」と頷いて芳醇な赤を煽った。
めっちゃワイングラス似合うな。
そしてそれ、確実にそんな飲み方するワインじゃねー……。
極上のフィレステーキを堪能しつつ、俺も赤ワインを口にする。
芳醇な香りと深いコクにまろやかさ、確実に年代物のお高い品だ。
「トーナメントにも参加を?」
そしてやっぱりこっちもワイングラスが絵になりすぎるレイヴァンが、白ワインのグラスをテーブルに戻しつつそう問うた。
問いかけたレイヴァンにも、カイルの瞳にもあるのは期待。
だが「いや」と軽く首を振ってゼリファンが答える。
「俺らが出ては学生たちのトーナメントではなくなるだろう?」
まぁ、そりゃそうか。
ゼリファン出場したらその時点で優勝確定だもんな。
納得した俺とは違い、クラウ・ソラスの面々と闘えると思っていたカイルはあからさまにガッカリだ。
肩を落とすカイルにゼリファンがクッと笑う。
付け合わせのブロッコリーをフォークで刺し、その先をカイルへと向けて言った。
「トーナメントへの出場はしないがな、デモンストレーションとしてクラウ・ソラスの面々との試合も予定されているぞ?」
「マジっすか?!」
「確か……上位五名だったか」
「絶対ぇ勝ち上がる!!」
渾身のガッツポーズ、気合マンマンだ。
……その前にテストで赤点クリアしろよ?
お前にとっては補習の回避の方が強敵だろうが。
「エバンスとアシュフォースも出るのか?」
「僕とアレンはエントリー予定です。ラファエルは出ないようですが……」
「私じゃ実力不足ですし」
ちょっと不満そうなレイヴァンの視線に苦笑いしつつそう告げた。
チーム戦ならともかく、トーナメントは個人戦。
とても俺では太刀打ち出来ない相手ばかりだろう。
俺の勇姿を見たかったらしいレイヴァンには悪いが期待に応えられそうもない。
代わりに「応援してるよ」とにっこりと笑みを送る。
「なんだ、残念だな。殿下も今年は参加を見送るのだろう?」
「ええ、観戦に徹するみたいですよ。ラインハルトは違う未来も模索し始めているようですし」
白身魚のムニエルを口に運んだレイヴァンの視線がチラリと向いた。
「そのようだ。クラウ・ソラスとしては殿下の戦力にも期待していたんだがな。その責任もとってエバンスには是非入隊して欲しいものだ。もちろん、アシュフォースも卒業後に歓迎するぞ」
そして斜め前からも飛ぶ視線。
待って、何の話??
王子がトーナメントに参加しない、って話じゃなかった??
なぜ未来だの入隊だのって話になった?
え、俺なんか話聞き逃してた?
責任って何のことですかー???
ハテナマークを頭にいっぱい浮かべながら首を傾げる俺。
だけどレイヴァンもゼリファンも特に答えをくれなかった。
その後はこのやたら目立つメンツでそこら辺の店をひやかしたり、武器屋に足を運んだりした。
どこへ行っても視線と歓声が絶えなくて、人気アイドルグループの中にモブが1人紛れ込んじゃったみたいな感じで居心地が悪いことこのうえなかったです。
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