ようこそ幼い嫁候補たち ②

龍之介21時

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アリス IN 異世界地球

「死香の薔薇」ファルバァス

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黒い剣でその身を貫いたオテイゥス
彼のコアを貫いたその剣から溢れる赤黒い光は、彼の身体を包み込みツタのみで形成された高さ10メートル程の木へと変化した

ソコへ神官たちを飲み込んだ赤黒い光を放つエネルギー体がやって来て、その木に飲み込まれていった
エネルギーを吸い込んだ木の頂上が、アクビをするかの様に口を開くと眩い光が大空へと伸びて行く

高さ1キロメートル辺りに光の玉が産まれる
更に光を放ち続ける元オテイゥスだった木。やがてその木は枯れ、エネルギーの放出は止まった

「お、おい!何だアレは!?」

コロシアムに居る全員が上空を見上げた
高さ1キロメートル辺りで大きくなった光の玉は、やがて形を変え大きな花の蕾(つぼみ)の様な姿になった

「何か…凄く悪い事が起きる気がしますの…」
「とんでもない魔力だよ、アレ…」
「いや、もう悪い事になってるだろ…」

上空を見上げるサーシャ、カルーア、ヒイロは言いようの無い緊張に襲われている。彼らだけではなく、コロシアムの全員が息を飲んでいた

「フヒュゥゥゥ…」

花の声か!?その音と共に蕾は開き、中からおぞましい笑顔をした巨大な女性が姿を現した

「おい、有栖!何だよアレは!?」

「たぶんだけど…古代13獣神のひとつ、植物の神【ファルバァス】だと…思うわ…」
 

優輝の問いに答えた有栖だが、いつも余裕綽々な表情の有栖が緊張で冷や汗を流している


「キシャアアアァアアアァァァァアアア!!!」

ファルバァスは人の声とも思えない甲高い大きな叫びをあげた!
コロシアムに居た観客達は、蛇に睨まれた蛙の如く初めてファルバァスを見たのだが、全員自らの死を直感した

「おい!消去の魔女さんよ!あのクソデカい化け物は何だ?」

「私も見聞きした覚えが無いわよ。何なのアレ?」

有栖なら何か知ってるかもと駆け寄ってきた臥龍族の兄妹

「おそらくだけど…魔界の地下の奥深くに根を張る古代獣神の一体【ファルバァス】よ
あの数百ある触手で近くに居る生命体を、丸呑みにして養分にするらしいわ。それと厄介な事に魔法が一切通用しないらしいの。奴の身体は全ての魔法を吸収してエネルギーに変えるらしい…つまり奴を倒すには、直接的な打撃でしか敵わないらしいわ」

「あの巨大な獣神を打撃だけで、か…」

パワー自慢のドレイクも呆れてしまうようなファルバァスの防御性能に、ミンクでさえ無言だったし…【消去の魔女】も顔を曇らせていた

ファルバァスの身体は腰から上が人の女性の形をしていて、腰から下はクラゲの様に数百の触手を伸ばしている。その姿で上空約1キロメートルの位置に浮かんでいた

「シャアァァ!」

ファルバァスが奇声をあげると、彼女の下半身の直径4~5メートル、長さ2~3km程の触手が地面の人間達に向けて伸びてきた

「きゃあああっ!!」

触手は対象に近付くと、その先端を開き掃除機が吸引してゴミを吸うかの如く、人々を飲み込み始めた

「こんのぉ!止めろぉ!」

ミンクは見ていられずに、ファルバァスに向けて炎の上級魔法を放った

「馬鹿っ!魔法は駄目だって!」

ミンクの魔法がファルバァスに当たると、スポンジが水を吸うかの如く魔法は奴の体内へと消えていった


「ミアナ…アイツはマズイな。本当に魔法が一切効かないみたいだな…」

「とは言え、あんな高さに浮かばれていてはキウ様の攻撃も届きませんし…どうしたら良いのでしょうか?」

別の場所でキウとミアナも、打開策を見い出せずに居た。その間にも人々は伸びて来る触手に、どんどん飲み込まれていっている


「弓隊、構え!…撃てー!」

ロード王が率いる弓隊がファルバァスを狙ったが、触手を回転して生み出した風で簡単に弾かれてしまった

「弓も届かず上空から降りても来ない、魔法は臥龍族の放った物でも吸われてしまう…どうやって奴を倒せば良いのだ…」

「兄さん、コロシアムと城下町の人々を避難させましょう!」

ファルバァスの倒し方が解らず苦悩するロード王とキングス王子。ケイトスは被害を最小限にしようと、兄と共に部下を率いて民の避難を優先する


「これは絶対アンナが絡んでいるに違いない。私は地下牢に行くわ!」

「コレがあの女の最終目的なら、絶対に吐かないだろう?」

「拷問してでも吐かせるわよ!」

地下牢に向かおうとしてドレイクに呼び止められた有栖だが、何をしてでも吐かせる決意をし地下牢へと駆けて行った

「くそっ!一方的にヤラれるだけかよっ!」

「せめて魔法が効いてくれたら、何とかなるかも知れないけど…」

「サーシャも回復しか術が無いので、どうして良いか解りませんの…」

「凄く怖いけど…なんだか綺麗…」
 

コハラコの言う様に花の獣神ファルバァスは恐ろしいオーラを放ちつつも、その姿には何処か気品の様なものがあり、見る者を魅了していた


【地下牢】
「カンカンカン!」足早に駆け込んでくる足音が響いている

「ふふふ、来たわね。徳川有栖…」

「アンナぁ!あの花の化け物はアンタの仕業でしょっ!」

鬼気迫る表情の有栖が、まだ虫の息で身動き取れないアンナローザに詰め寄った

この日、王都クラウンは開国始まって依頼の最大の窮地を迎えていた



続く
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