ようこそ幼い嫁候補たち ②

龍之介21時

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化け物たちとの遭遇編

【マッド・ツェペリオン】

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【都内某所 ビルの屋上】
「七精守護霊(ハーロウィーン)!」

テレビにはたった1人でファルバァスと戦う有栖の姿が映し出されていたが、大迫力の映画の様な戦闘が行われている中…何とか優位に戦っている有栖

「あれが…娘の魔法(チカラ)なのか!?【消去の魔女】か…本当に凄いんだな…」

東京都民を未曾有の危機に陥れたファルバァスを、単独で圧倒する娘の姿に誇らしい。を通り越して、ただ驚く徳川パパだった
ついでに佐々木は腰を抜かしていた



【禁呪】
腰から胸の谷間にかけて、有栖の魔法に貫通されたファルバァスは悶絶していた。その隙に有栖は獣神の上を取り詠唱を始める

「天界を統べし者達よ。古の契約に従い我が名の元に天界のチカラを示せ!我は徳川有栖なり!【天王封界(マッド・ファラリオン)】!」
 

天空に向けて両手を添える有栖の腕を通して、赤黒い霧がファルバァス目掛けて飛んでいく。その霧は巨体を誇る獣神の体を包み込んだ

「ギギッ!?」

何かを感じるファルバァスだが、有栖の【七精守護霊(ハーロウィーン)】に貫かれた痛みで触手に上手くチカラが入らなかった

「勝った!」

有栖はこの禁呪に打ち勝てるタイミングが、ココしかない事を知っている。それ故にココで結界が破壊されなかった事で勝利を確信した
ファルバァスを包んだ赤黒い霧が、硬質化していきクリスタルの様に固くなった。有栖に勝つには硬質化する前に、結界を破壊するべきだったのだ

「さぁてファルバァス、たっぷり味わいなさいな…「【天王滅鬼(マッド・ツッペリオン)】!!!」

ファルバァスを包む結界の上部に黒い次元の穴が空いた

「キキキキキキキキっ!」

その穴から3頭身くらいの魔界の小鬼がウジャウジャと現れた。その数およそ2000匹。それらがファルバァスの肉体を食べ始めた

「ソイツらは無限の食欲を持つ天界の働き小鬼よ。細胞の欠片も残さず食い尽くされなさい!」

何でも食べる天界の小鬼。彼らには空腹感は存在しても満腹感は存在しない。オマケに好き嫌いせずに何でも喰らう
更に彼らは、自分の体積と同じくらいの食事をすると…鏡に映したかの様に背中から、もう一体の自分を生み出すのだ。その分裂行為に食したエネルギーを大量に注ぎ込む為、彼らには満腹感が永遠に訪れないのだ

東京千代田区上空に浮かび都民を恐怖のどん底に叩き落とした巨大な化け物を、たった1人で圧倒する【消去の魔女】の戦いに都民も優輝達も国会議員たちもただ、固唾を飲んで見守っていた

「ふぅー、ふぅー……流石にこの結界と天界を繋ぐGATEの維持に、凄まじく精神力を持ってかれちゃうなぁ…」

「ギギャアァァァァ!」

5分後くらいには増殖し過ぎた小鬼達の姿で、結界内部は真っ黒になり、巨大なファルバァスの姿でさえ見えなくなっていた



【20分後】
「ギッ…ギギェェ…」

ファルバァスの悲鳴がかなり、か細くなってきていた

「はぁ…はぁ…そろそろ良いかな?私の精神力ももうスグ尽きそう…ね」

有栖は両手を広げ深呼吸して、乱れ始めた魔力を整える

「【天王滅炎(マッド・ゲレリオン)】!」
 

自分の周りに灼熱の業火を発生させる有栖。ソレを天界とを繋ぐ黒いGATEから流し込んだ!大量に降り注ぐ赤黒い炎が小鬼達もろとも、ファルバァスを焼き始めた

「結界内の全てを焼き尽くす天界の炎よ。この2段攻撃なら流石にファルバァスでも終わり…よね?…これ以上の攻撃は私には無いんだからね…」

先程まで阿鼻叫喚の騒々しさだった千代田区に、かつて経験した事もない程の静寂が訪れていた



【惑星エリスア】
こちらでも陽が沈む寸前だ

「良し!民達よ良く働いてくれた!もう陽が沈む。本日の作業はここまでにしよう!崩れ落ちなかった場内に食事と風呂を用意した。明日の作業に向けて、ゆっくり休んで欲しい!」

キングス王子は普段、少しナルシストな面もあるが…今日は全員に的確な指示を出しながらも、自分も率先して汗を流して作業していた

「キングス王子、お疲れ様です」
「ご苦労さまでした!」
「皆も良く働いてくれたな」

その姿は絶望しかけていた国民の心に、希望という灯火を感じさせていた

「アリス、カルーア、サーシャ、コハラコ!俺達も今日は休もう!」

「ぷひゅー、帰っていきなり疲れたよぉー」
「やれやれ、大変な1日だったね」
「疲れましたの…寝たら3日は起きないかも?なのです…」
「コハラコ、お腹ペコペコ!」

とりあえずヒイロは4人を連れ、食事をする事にした

…………………………………………

宙に浮く獣神を叩き落としたアリス
獣神への攻撃を見出したカルーア
重傷者を直し続けたサーシャ

その働きの大きさに場内での彼等への待遇は、飛び抜けて高いモノだった。城の使用人たちも「自分こそが!」と三姉妹に奉仕していた

食事を終えると、カルーアはヒイロを無言で眺める。それに彼が気付きアイコンタクトをすると…

「サーシャ、コハラコ。シャワーを浴びに行こうか?」

「サーシャは茂みの奥でお姉様と2人っきりでも良いですの(笑)」

「茂み???何するの?」

カルーアは軽くサーシャの頭を叩いた「痛いですの…」カルーアはコハラコを連れて大浴場に向かう

「あーん、待ってですの!」

サーシャは小走りで2人を追いかけて行った。残ったヒイロとアリス

「あ、あのね…お兄ちゃん…アタシ…あのね…」

アリスは上手く言いたい事を言葉に出来なかった。がヒイロは優しく微笑むと、両腕でアリスを抱き締め一言添えた

「おかえり。心配したんだぞ」

「うわあああ、お兄ちゃぁん!」

アドルの時と同じように、また流されるように佐々木と関係を持ってしまったアリス。その事自体は後悔していないのだが…家族の元に帰るとヒイロが素敵な兄として接してくれる
その優しさに、自分のした事への申し訳なさが込み上げてくるアリスだった



【東京千代田区】
「くっ…維持がもう…無理だわ…」

結界内からは獣神の声も、小鬼の声も聞こえなくなっていた。隠れて様子見している東京都民も、戦いが終わったのだろうと感じていた

「ぷはぁ!…はぁはぁはぁ…解除っ!」

顔にビッシリ汗をかいた有栖は、禁呪を解除した…中からは真っ黒になった物体が地上に落ちる
「バッキャァァンッ!」
丸焦げの炭が衝撃で砕ける様な音がした。魔力切れの近い有栖も、ソレから少し離れた位置に降り立った


「うおぉぉ!」
「助かったぁ!」
「ありがとうっ!!」
「救いの女神様だぁ!!」

遠巻きに見ていた都民達が歓喜の声を上げた。それを見て微笑んだ有栖。都民が彼女に感謝を述べようと近付いて行こうとした時だった

「バシッ!!」真っ黒い鞭の様な物が有栖の首に巻き付いた!

「あっ!?ぐあぁ…嘘でしょ?」

魔力が尽き掛けている有栖が、苦悶の表情で苦しんでいる。まだファルバァスは死んで居なかった



続く
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