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化け物たちとの遭遇編
リキュールが次に望みしモノ
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【エルドラド王国跡地】
「さて、皆さん。帰りましょうか」
「お兄ちゃんたちの待つ家へぇ、帰るよぉ!」
「暗くならない内に帰りますの♪」
「サーシャって結構タフだよね…」
三姉妹たち4人が全ての段取りを済ませ、昼前には【ヘルメスの街】への帰路に入った
その頃……
【アルバート工房】
庭では昨日と同じくヨシュアが師範代としてコハラコとカナタンに剣の稽古を付けていた
「くぎゅっ!…ヨシュア、強い…」
「ま…ひゃあぁ…まだですー…」
2人がかりでも相変わらず、元魔王の息子であるヨシュア1人に翻弄されてはいたが、必死に食らいついて頑張っていた
【工房内】
「カツーン!カキィーン!」
ヒイロが汗を流しながら、アドルから預かったクレリアアーマーの最終調整に入っていた
「コハラコちゃ~ん。紅茶とお菓子の用意が~できました~食べましょうか~」
エルデスとミルがみんなの為に、飲み物を用意してくれた。ミルは余った材料を片付け、エルデスが外で訓練中のヨシュア達に声を掛けに行ったので、リキュールは工房に居るヒイロに持っていこうと決めた
「ヒイロに渡してくる」
進化型超人類の生き残りのひとりであるリキュールは、素体dataとなったカルーアの事を最優先に考えているが…
彼女は今、エルドラ山脈に行っているので、代わりにカルーアが1番大切にしているヒイロの事を観察していた
その為、自分が茶菓子を持って行ったら…どんな反応を見せるのか?どんな言葉を言うのか?それらに興味を抱いていた
「ヒイロ…少し休憩しよ?」
「カルー……リキュールか。…そうだな、アドルさんのはもう終わりだし、ひと息入れるか!」
ヒイロはリキュールが差し出した紅茶と茶菓子を手に取った
「ヨシュアくん達はどうしてる?」
「今日も朝ごはんの後から、ずっと剣の稽古をしているよ」
「そうか、熱心だな…」
ヒイロはリキュールと2人っきりになると会話に困っていた。彼女との出会いからはまだ数日なので、彼女の事をよく知らない
ましてや普通の女の子でもない
おまけにヒイロはまだ、言うほど異性慣れしていないのだから話題が見つからず、沈黙の時間がキツかった
しかし、当のリキュールはそうでもないようだ。もともと数百年も古代遺跡内の生物を、ただ眺めて過ごしていたのだから、仮に沈黙が数日に及んでも彼女は退屈しないだろう
「……人間たちって大変なのね」
「えっ?何故だい?」
「だって生まれてから死ぬまで、ずっと修練の日々なのよね?それかヒイロみたいに仕事に明け暮れているじゃない?…お姉様や私みたいに生命が長くないから、少ない時間ではあまり学習出来ないんだよね?」
「そうだな…そう考えると大変かもな…けどな。少しずつでも新しい事を知ったり、覚えたりするのは楽しいもんだよ…リキュールは何かしたい事は無いかな?」
そう言われてリキュールは考え込んだ
「そうなんだ…新しい事は楽しいんだ…そう言えば…エリエスもアリスとクエストに行くの楽しみって…サーシャもカルーアと一緒だ!って嬉しそうに言ってたね。何かをしてるのは楽しいんだね…」
「そういう事さ。もっと言えば、好きな人と一緒に何かするのは更に楽しいのさ!」
更にリキュールは考え込んだ。今度はさっきよりも長い時間、考え込んでいた。そして…
「ねぇヒイロ。私と出掛けよう!」
「えっ!?」
「私も楽しいを知りたいの。でも今は何をしたいのか?は分からないから、取り敢えずヒイロとお出掛けしてみたいな!」
「そうか…それなら俺も息抜きを兼ねてリキュールのエスコートをさせてもらおうかな♪」
長く亡き父親と2人で暮らしていたヒイロだが…三姉妹と出会い同棲を始めてから、人との出会いを大切にする重要性を知っていた。なら、リキュールにも優しく付き合うべきだろうと判断したのだ
【ヘルメスの繁華街】
「くぁー、高難易度のクエストを、やれどもやれども…ちっとも無くならない…本当にもう疲れたわっ!」
シェリーとシャルルの美人姉妹に、ガルダンのAランクパーティがクエストを終えギルドに帰還する途中のようだ
「シャルル。文句言わないの!アドルさん達【聖騎士勇者隊】が居なかったら…」
「自分たちは帰る暇も無いほど、働き詰めになっているハズですからね」
連日の楽ではないクエストの日々に、疲れたシャルルが愚痴を漏らしている。ソレを諌(いさ)めるシェリーとガルダン
「おや?ソコに居るのはヒイロくんじゃないですか、それと…」
「えっ?ウソウソ!?ヒイロが居るの?どこよ?何処ー!」
「やぁ。皆さん、お久しぶりですね…でも、ないかな?ははは」
シャルルたちの前方にヒイロが居た。が、彼は1人ではない
「むうっ!?」
「皆さん、こんにちは」
ヒイロを見付けたシャルルは途端に元気を取り戻したのだが…彼の横に、ベッタリ引っ付いて歩くリキュールが居る
「ちょっとエルフっ娘!あんた採掘の為にエルドラ山脈に行ってるんじゃなかったの?姉妹を働かせておいて、自分はヒイロと出掛けてるなんて良いご身分じゃないの!」
「あっ!」
ヒイロはシャルル達にはまだ、リキュールや超人類についての事を話して居なかった事に気が付いた
【喫茶店】
ヒイロはカルーアやリキュール、それとエリエスが古代人たちの研究の遺産である事を、掻い摘んで3人に説明した
「へー!滅亡した古代人たちの研究遺産だったんだ。それで、その娘はカルーアちゃんじゃなくて…見た目をコピーしたリキュールちゃんなんだー」
「自分も驚きました。本当にソックリですね!」
ヒイロがくだらない嘘の類(たぐ)いは絶対に言わないことを知っている彼らは、内容的にはとても信じられない話だが、疑うこと無く信じて聞いている
「そうだったんだ。ごめんな…エルフっ娘。真面目に働いているのね。で、今日はそのリキュールちゃんに、街の案内でもしているのかしら?」
たった今、ヒイロの口からリキュールが個体として生まれたばかりだと聞かされた3人は、当然そういう目的だと思ったのだが…
「違います。ヒイロは私とデートをしています♪」
「えっ!?」
「なんと!」
「はあぁ!?やっぱりアンタもカルーアと大して変わらないじゃないのよ!」
初めてカルーアと会ったあの日、シャルルは背伸びしたカルーアからも「デートしてるんだよ!」と、言われた日のことを思い出した
「むっきー!超人類って性格わるいんじゃないの!?アンタといいカルーアといいさ!」
カルーアと見た目がソックリなリキュールにまで、同じセリフを言われてしまったシャルルは、周りの目も気にせずに癇癪(かんしゃく)を起こしていた
(やれやれ、またかよ…)
不意のデートで、また似たような目に会ったヒイロは、長い時間の仕事の後、ということもあり余計に疲れてしまったw
続く
「さて、皆さん。帰りましょうか」
「お兄ちゃんたちの待つ家へぇ、帰るよぉ!」
「暗くならない内に帰りますの♪」
「サーシャって結構タフだよね…」
三姉妹たち4人が全ての段取りを済ませ、昼前には【ヘルメスの街】への帰路に入った
その頃……
【アルバート工房】
庭では昨日と同じくヨシュアが師範代としてコハラコとカナタンに剣の稽古を付けていた
「くぎゅっ!…ヨシュア、強い…」
「ま…ひゃあぁ…まだですー…」
2人がかりでも相変わらず、元魔王の息子であるヨシュア1人に翻弄されてはいたが、必死に食らいついて頑張っていた
【工房内】
「カツーン!カキィーン!」
ヒイロが汗を流しながら、アドルから預かったクレリアアーマーの最終調整に入っていた
「コハラコちゃ~ん。紅茶とお菓子の用意が~できました~食べましょうか~」
エルデスとミルがみんなの為に、飲み物を用意してくれた。ミルは余った材料を片付け、エルデスが外で訓練中のヨシュア達に声を掛けに行ったので、リキュールは工房に居るヒイロに持っていこうと決めた
「ヒイロに渡してくる」
進化型超人類の生き残りのひとりであるリキュールは、素体dataとなったカルーアの事を最優先に考えているが…
彼女は今、エルドラ山脈に行っているので、代わりにカルーアが1番大切にしているヒイロの事を観察していた
その為、自分が茶菓子を持って行ったら…どんな反応を見せるのか?どんな言葉を言うのか?それらに興味を抱いていた
「ヒイロ…少し休憩しよ?」
「カルー……リキュールか。…そうだな、アドルさんのはもう終わりだし、ひと息入れるか!」
ヒイロはリキュールが差し出した紅茶と茶菓子を手に取った
「ヨシュアくん達はどうしてる?」
「今日も朝ごはんの後から、ずっと剣の稽古をしているよ」
「そうか、熱心だな…」
ヒイロはリキュールと2人っきりになると会話に困っていた。彼女との出会いからはまだ数日なので、彼女の事をよく知らない
ましてや普通の女の子でもない
おまけにヒイロはまだ、言うほど異性慣れしていないのだから話題が見つからず、沈黙の時間がキツかった
しかし、当のリキュールはそうでもないようだ。もともと数百年も古代遺跡内の生物を、ただ眺めて過ごしていたのだから、仮に沈黙が数日に及んでも彼女は退屈しないだろう
「……人間たちって大変なのね」
「えっ?何故だい?」
「だって生まれてから死ぬまで、ずっと修練の日々なのよね?それかヒイロみたいに仕事に明け暮れているじゃない?…お姉様や私みたいに生命が長くないから、少ない時間ではあまり学習出来ないんだよね?」
「そうだな…そう考えると大変かもな…けどな。少しずつでも新しい事を知ったり、覚えたりするのは楽しいもんだよ…リキュールは何かしたい事は無いかな?」
そう言われてリキュールは考え込んだ
「そうなんだ…新しい事は楽しいんだ…そう言えば…エリエスもアリスとクエストに行くの楽しみって…サーシャもカルーアと一緒だ!って嬉しそうに言ってたね。何かをしてるのは楽しいんだね…」
「そういう事さ。もっと言えば、好きな人と一緒に何かするのは更に楽しいのさ!」
更にリキュールは考え込んだ。今度はさっきよりも長い時間、考え込んでいた。そして…
「ねぇヒイロ。私と出掛けよう!」
「えっ!?」
「私も楽しいを知りたいの。でも今は何をしたいのか?は分からないから、取り敢えずヒイロとお出掛けしてみたいな!」
「そうか…それなら俺も息抜きを兼ねてリキュールのエスコートをさせてもらおうかな♪」
長く亡き父親と2人で暮らしていたヒイロだが…三姉妹と出会い同棲を始めてから、人との出会いを大切にする重要性を知っていた。なら、リキュールにも優しく付き合うべきだろうと判断したのだ
【ヘルメスの繁華街】
「くぁー、高難易度のクエストを、やれどもやれども…ちっとも無くならない…本当にもう疲れたわっ!」
シェリーとシャルルの美人姉妹に、ガルダンのAランクパーティがクエストを終えギルドに帰還する途中のようだ
「シャルル。文句言わないの!アドルさん達【聖騎士勇者隊】が居なかったら…」
「自分たちは帰る暇も無いほど、働き詰めになっているハズですからね」
連日の楽ではないクエストの日々に、疲れたシャルルが愚痴を漏らしている。ソレを諌(いさ)めるシェリーとガルダン
「おや?ソコに居るのはヒイロくんじゃないですか、それと…」
「えっ?ウソウソ!?ヒイロが居るの?どこよ?何処ー!」
「やぁ。皆さん、お久しぶりですね…でも、ないかな?ははは」
シャルルたちの前方にヒイロが居た。が、彼は1人ではない
「むうっ!?」
「皆さん、こんにちは」
ヒイロを見付けたシャルルは途端に元気を取り戻したのだが…彼の横に、ベッタリ引っ付いて歩くリキュールが居る
「ちょっとエルフっ娘!あんた採掘の為にエルドラ山脈に行ってるんじゃなかったの?姉妹を働かせておいて、自分はヒイロと出掛けてるなんて良いご身分じゃないの!」
「あっ!」
ヒイロはシャルル達にはまだ、リキュールや超人類についての事を話して居なかった事に気が付いた
【喫茶店】
ヒイロはカルーアやリキュール、それとエリエスが古代人たちの研究の遺産である事を、掻い摘んで3人に説明した
「へー!滅亡した古代人たちの研究遺産だったんだ。それで、その娘はカルーアちゃんじゃなくて…見た目をコピーしたリキュールちゃんなんだー」
「自分も驚きました。本当にソックリですね!」
ヒイロがくだらない嘘の類(たぐ)いは絶対に言わないことを知っている彼らは、内容的にはとても信じられない話だが、疑うこと無く信じて聞いている
「そうだったんだ。ごめんな…エルフっ娘。真面目に働いているのね。で、今日はそのリキュールちゃんに、街の案内でもしているのかしら?」
たった今、ヒイロの口からリキュールが個体として生まれたばかりだと聞かされた3人は、当然そういう目的だと思ったのだが…
「違います。ヒイロは私とデートをしています♪」
「えっ!?」
「なんと!」
「はあぁ!?やっぱりアンタもカルーアと大して変わらないじゃないのよ!」
初めてカルーアと会ったあの日、シャルルは背伸びしたカルーアからも「デートしてるんだよ!」と、言われた日のことを思い出した
「むっきー!超人類って性格わるいんじゃないの!?アンタといいカルーアといいさ!」
カルーアと見た目がソックリなリキュールにまで、同じセリフを言われてしまったシャルルは、周りの目も気にせずに癇癪(かんしゃく)を起こしていた
(やれやれ、またかよ…)
不意のデートで、また似たような目に会ったヒイロは、長い時間の仕事の後、ということもあり余計に疲れてしまったw
続く
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