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1-3 ボクの知っている砂遊びと違う!

第30話 リアルすぎるジオラマ

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 開始早々、勝手にコマが動く。

 戦況を、マミちゃんがニシシと笑いながら見守る。

「あのコマ一個につき、本物の兵隊一〇〇〇人分の戦力だと思っていてください」

 妙に、動きが生々しい。本当に動いているみたいだ。

 ジリジリと、お互いが陣営に近づいていく。 

 チサちゃんチームの弓兵が、いきなり飛び上がった。
 ジャンプした状態のまま弓を構え、マミちゃん陣営に向けて矢を放つ。
 しかも、一度に三本も。

「グワー!」
 マミちゃんチームの兵隊が、数名吹っ飛ぶ。

「飛距離プラス二のスキル、やるわね!」
 弓矢攻撃をすり抜けた兵隊が、弓兵を槍で突き刺す。

 だが、その槍兵も、控えていたチサちゃん側の歩兵に剣攻撃で斬られた。

「無念!」
 自軍の弓兵と、相手陣営の槍兵士が、光粒となって消える。

 ボクの知ってる砂遊びと違う!

 これが、この世界で言う戦争なのか。
 なんか、将棋だかボードゲームだかみたいだな。

「本当に、どこかで誰かが死んだりしてませんよね?」
「私も、初めて見たときに、同じような感想に至ったものです」

 ケイスさんは慣れた様子で、ストローを使ってジュースを飲む。

「あの兵隊たちは、ただのイメージをコマに吹き込んでいるだけ。魔王の魔力が具現化したにすぎません。誰も傷つかないのです」

 魔王は、魔力をおおっぴらに発動できない。
 すれば世界に影響が出てしまう。
 実にストレスがたまる環境なのだ。

 よって、このようなルールが考案された。
 これなら、好戦的な魔王も満足する。

「実際に人が死んでいないので、実に平和な戦いです」
 先輩玉座であるケイスさんの意見に、ボクもうなずく。

 見た感じは、ちっとも平和的ではないけど。

 兵力はマミちゃんの方が二割ほど上だ。
 しかし、戦略的にはチサちゃんが上回っている。
 滝の水をせき止めて相手に水攻めをしたり、森を利用したゲリラ戦法で、マミちゃん陣営を蹴散らす。

 一方、マミちゃんは玉砕覚悟の攻撃だ。
 戦略も何もない。
 兵を失いつつも、着実にチサちゃんの戦力を削いでいった。

 だが、智恵を使ったチサちゃん側が、徐々にマミちゃん側を追い詰めていく。

「押せ押せよ!」
 自軍のスフィンクスを、マミちゃんは前進させる。

「マミ様、スフィンクスは自陣営の本丸ですぞ。最強のコマでありながら、絶対に壊されてはいけない拠点です」

 動く拠点というのもあるのか。

「あなたは口を挟まないで! ようは勝てばいいのよ」

 マミちゃんがケイスさんを罵倒する。

 あそこまで言わなくても。

「ひぎいい❤」
 うれしそうだからいいか。

 何が問題なのかと言わんばかりに、スフィンクスは襲いかかってきた。

 チサちゃん陣営に控えていたドラゴンが、重い腰を上げる。
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