上 下
36 / 302
1-3 ボクの知っている砂遊びと違う!

第36話 冷し中華

しおりを挟む
「そうなんですね」

「その点、チサ様は好きなようになさっておられながら、良き関係を維持してらっしゃる。民のことを思っているからでしょう。あなたも、口出しなさっていない」

「いや、ボクは言う資格がないと思っているだけで」

 ボクはまったく知識がない上に、チサちゃんの自主性に任せている。

 やりたいようにするのが一番だと思っているから。
 効率を求めると窮屈かなと。

「それがいいのかもしれませんね。私も、今後は必要でない限りでしゃばらないようにしてみます。効率化だけがないせいではありませんからね」
 ケイスさんは彼なりに、色々と考えているようだ。



 せっかくだからと、夕飯も一緒に食べる。


 ボクも大歓迎だ。

 暑かっただろうからと、冷製パスタを作ってくれた。

 魚介のスープがあっさりしていて箸が進む。


「これ、冷し中華だ!」


 食感はパスタだが、味は紛れもなく冷し中華だった。
 魚醤の風味が最高!

「それにこれ、昨日煮込んだチャーシュー!」
 具の中に、刻んだチャーシューを見つける。

 火を止めてしばらく寝かせておいたら、コラーゲンたっぷりのチャーシューができあがっていた。味もバッチリである。

「おいしい」
 箸を止めようともせず、チサちゃんがはしゃぎだす。

「そうね! プリプリだけど肉って不思議ね!」
 魔王たちも、気に入ってくれたみたいだ。

 確かに、我ながらうまい。
 イノシシの臭みを消そうとチャーシューにしたのだ。

 現地の食材だけでうまくいくか正直心配だったけど。

「このチャーシューが、あの技を教えてくれた」
 チサちゃんが言っているのは、さっきのヒモ型火球のことか。

「ありがと。ダイキがチャーシューを作ってくれなかったら、わたしはマミに負けていた」
「とんでもない! あれはチサちゃんの発想の勝利だ!」
「でも、ダイキと二人で勝ててうれしい。ダイキすごい」
「ほめてもらって、ボクもうれしいよ。ありがとうチサちゃん」

 チサちゃんはチャーシューをおいしそうに頬張る。

「オノロケはそこまでよ。次は大食い対決よ!」

「望むところ」

 ズゾゾ、とすごい物音を立てて、二人の魔王が麺を吸い込んでいく。

「よく噛んで食べようよ、チサちゃん」

「ちゃんと噛んでる」
 もっもっと、頬を動かして咀嚼している。

 成人男性一〇人前食べたところで、両者ノックアウト。

 食後のデザートタイムを取る。メニューは、オレンジのパイだ。

「そういえば、アンタの玉座は戦わないの?」
 マミちゃんが、チサちゃんに問いかける。

「スキル振りすらまだしていない」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

はみ出し者とうつけ王子

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:89,809pt お気に入り:2,088

わたしが嫌いな幼馴染の執着から逃げたい。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:26,109pt お気に入り:2,768

ドラゴン☆マドリガーレ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:1,065pt お気に入り:670

短編作品集(*異世界恋愛もの*)

恋愛 / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:154

嫌われ者の僕

BL / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:1,735

処理中です...