上 下
187 / 302
2-7 ついに勇者登場! ダイキ、フルパワー!

和解

しおりを挟む
 もう一つ、気になることがある。
 妙にネウロータくんは、ウチにお土産をくれていた。


「あのお土産ってさ、ボクたちにくれたんじゃなくて、姉であるセイさんにあげてたんじゃないかな? って思って」

「よく分かったな」と、ネウロータくんの顔に苦笑いが浮かぶ。

「そうだよ。お前の言うとおりだ」
 ネウロータくんが白状する。彼もお姉さんが大好きすぎて、玉座にさえ甘んじようとした。

「それを説得されて、ぼくはトシコさんというパートナーを得た。でも本当は、姉さんと一緒に魔王になりたかったんだ」



「ネウロータ……様、なりません」
 兄弟にひざまずきながら、セイさんは首を振る。


「お気持ちは十分分かりました。ですが私はチサ様に仕える身。魔王は引退したのです」



 セイさんが、トシコさんの方を向く。



「どうか、トシコ様。弟と末永くお幸せに」

 涙ながらに語るセイさんの訴えに、トシコさんは黙礼で応えた。

 ネウロータくんも、同様に。

「分かったでしょ? ネウロータくんだって、キュラちゃんと同じ悩みを抱えていたんだ。でも、乗り越えた。だからきっと、キュラちゃんだっていい人見つかるよ!」

 ボクはボクなりに、キュラちゃんを応援する。ボクの声なんて届くか分からないけれど。

 トシコさんが、キュラちゃんに歩み寄って、同じ目線になるようにかがむ。
「キュラちゃん、おこがましいようだけど。私、あなたのお姉ちゃんになってもいいですか?」
 本当にお姉さんのような感じで、トシコさんはキュラちゃんに語りかける。




「私は、お兄ちゃんだけでいい」

 そう言われて、トシコさんの顔が曇る。

「でも」と、キュラちゃんは続けた。






「お友だちなら、なってあげてもいい」






 素直じゃない返答。
 それでも、打ち解け合う姿勢はできたみたい。

「よかったぁ。二人とも」
 ボクは、努力が報われた気がした。

「チサちゃん、本当によかったね」
「うん。ダイキもがんばった」

「ありがとう」
 チサちゃんを抱き寄せて、ボクは涙を流す。


「すばらしい方ですね、ダイキ様は」

「うん。わたしの夫」
 はっきりと、チサちゃんはボクを夫と言い切る。

「またな。色々とありがとう、ダイキ」

「こちらこそ。またおいで」
 ボクは、ネウロータくんと握手を交わした。

「チサ。どうしてお前がダイキを選んだのか、今なら分かる気がする」
 ネウロータくんが、トシコさんとキュラちゃんと手を繋ぐ。

「他人のために涙を流せる。だから、わたしはダイキを選んだ」
 ネウロータくんに向けて、チサちゃんは語りかけた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

男は歪んだ計画のままに可愛がられる

BL / 完結 24h.ポイント:418pt お気に入り:11

リーンカーネーション 小学4年に戻ったおれ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:56

呪われた第四学寮

ホラー / 完結 24h.ポイント:1,831pt お気に入り:0

傾国の王子

BL / 完結 24h.ポイント:674pt お気に入り:12

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:631pt お気に入り:0

ここはあなたの家ではありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:31,311pt お気に入り:2,008

潰れた瞳で僕を見ろ

BL / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:21

ある工作員の些細な失敗

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:2,186pt お気に入り:0

パスコリの庭

BL / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:27

処理中です...