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3-2 みんなでキャンプ ~シコーシ湖畔キャンプ場~

煮込みラーメン

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 ヨアンさんの後ろには、いい食材がたくさんある。彼の作る料理は、きっとおいしいのだろうけど。

 話を聞いていたチサちゃんが、ボクに目配せしてくる。どうやら、ボクと同じことを考えているみたい。

「あのさあ、ヨアンさん。ボクたちのでよければ、カレーを分けるよ。一緒に食べよう」

 ヨアンさんは、女性のように手を胸に当てる。
「そんな。皆さんから施しをいただくわけには」

「分ける前提で作るから、いいよ。みんなで食べようよ」

 ヨアンさんは、地に頭がつきそうなくらいに、腰を折り曲げた。

「まったく、なんとお礼を言ってよいのやら。こちらもお収めください」

 チサちゃんが、ヨアンさんから大量のお菓子類をもらう。これで、おやつは事欠かないだろう。

「いいの?」
「店のものをほぼ買い占めましたので」

 すごい経済力だな、ククちゃんって。

「ご武運を!」
「ありがとう。いただくね」

 ヨアンさんと分かれた後、マミちゃんのところへ荷物を置きに行く。

「チサ、ダイキ、ここよ!」

 マミちゃんのいる陣地は、ククちゃんのコテージ脇だった。

「なに、このお菓子! お店にはほとんどなかったのに!」
「ククちゃんがくれたんだよ」
「あの子が買い占めていたのね! まあ、ほとんど甘いものばかり買っていたからいいけど!」

 油菓子系やナッツ類、おつまみは大量に余っていたっけ。

「お菓子はこれでいいわ! トシコが冷やしてくれるから!」

 全員氷魔法が使えるので、溶ける心配はない。同様に、肉など、常温だと痛む食材冷やしておくという。実際、全員がヌルくなったお茶屋ジュース類を手で冷やして飲む。

「でも、スペースがないのよ!」
「ハチシャクに入れるといい」

 チサちゃんによると、ハチシャクは倉庫の役目も果たすという。置いておけば、クーラーボックスのように食材を保管できるらしい。

「そんな機能があるんだね。すごいなハチシャク」

 ボクは改めて、ハチシャクをなでた。
 食材をハチシャクに詰めていると、あることを思い出す。

「みんなにお土産があるんだ。はいこれ」
「カップ麺じゃない! カレーだけじゃ足りないかしら?」

 駄菓子コーナーで売っている程度の小ささなので、お腹も圧迫しない。

「そうじゃなくて。お山に登った後、みんなで食べようと」
「いいわね! ちょうどお腹もすくし!」

 カップ麺をみんなに配る。喜んでもらえた。

「あ、そうだ。ククちゃんとヨアンさんも誘っていいかな?」
「賛成よ!」

 誰一人、ボクの提案に反対しない。
 
「でも、ボクらが勝手に約束しちゃったんだけど」

「ダイキらしくていいじゃないか」
 そういうのは、ネウロータくんだ。

「いいんじゃない? 食べるかどうか分からないけど!」
「ぼくのキャンプメシで、あいつをうならせてやる」

 魔王組は、張り切っていた。

「ウフフ。お友達ができそうでハシャイでるわ」
「我々が手を差し伸べねば、彼は干乾しになってしまうでしょう。ぜひとも協力させていただきます」

 玉座組も、いやな感情を持っていないようである。

「みんな、ありがと」
「感謝します」

 ボクたちは、二人で頭を下げた。

 ワンタッチでテントを設営し、マキも集めた時点で、お昼になる。

「じゃあ、お昼ごはんができたわ!」
 マミちゃんが手を叩く。

 さっきから、いい匂いがしていたから、気になっていた。

「ワクワクする。マミ、料理は何?」

 土鍋が、コンロの上で軽いタップダンスを踊っている。これはまさか。

 待ちきれないボクたちの視線を釘付けにしたまま、マミちゃんが蓋を開ける。

「煮込んだ、袋入りのラーメンよ! 野菜もちょい足ししたわ!」

 鶏ガラ風味の白いスープに、太麺、キャベツともやし、薄切りのニンジンが入っていた。

 お外で煮込みラーメンなんて、最高の料理じゃないか。

 人の家にお邪魔して出されたなら、よほど気心がしれていない限り「ふざけんじゃねえ」とケンカになる。しかし、アウトドアとなると別だ! 外で食べるラーメンは、三割増しくらい味が変わる。どうしてそうなるのかは分からない。

「すげえぞマミ・ニム、お前にしてはやるじゃん」

「『お前にしては』は余計よ、ネウロータ!」
 言いつつマミちゃんはみんなから絶賛されてうれしそう。

「いただきます!」

 全員で、袋めんを取り分けてすすった。

「おいしい!」
「味がすごくしみてるね!」

 チサちゃんとうなずき合いながら、ラーメンを堪能する。

「気持ち、濃い目に煮込むのがポイントよ!」

 野菜もいい感じにふやけていて、噛みごたえが抜群だ。

「ホントはカップ麺にしようか迷ったんだけど」
「その手も、あるんだよね」
「ソロならそれでいいと思ったわ! でも、みんな集まって食べるでしょ? 同じ鍋を突きあうほうがいいと思ったの!」
 同感である。
「マミ様らしい、素晴らしいアイデアです」

 ボクは、ククちゃんたちにも分けてあげようと、ロッジに向かった。
 チサちゃんもボクの考えを察したのか、別の容器にラーメンをよそっている。

「よかったら、二人……も」

 しかし、ロッジには誰もいない。
 二人はすでに、山へ向かっていたようだ。
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