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3-2 みんなでキャンプ ~シコーシ湖畔キャンプ場~
ヨアンの家柄
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「ネウロータくん、そっちはどう?」
「いよいよだ。明日、楽しみにしてろよ」
みんなが夕飯を作る中、ネウロータくんは明日の朝食を仕込んでいる。
甘辛いタレで漬け込んだベーコンを小さな石窯に入れて、火で炙っていた。
おそらく、「くんせい」だろう。濃い味付けが好きなネウロータくんらしい朝ごはんである。
昼がマミちゃん、おやつがチサちゃん、夜が全員、翌日はネウロータくんが当番だ。楽しみだなぁ。
「あ、ちょっと待って。豚肉、そっちに余ってない?」
「結構あるぞ。バラもロースも」
「ちょっと、やりたいことがあるんだ」
ボクは豚肉で、あるものを作ろうと考える。チサちゃんにも手伝ってもらった。
「これって、どうなっちゃうの?」
「見てのお楽しみだよ」
みんなの喜ぶ顔が、早く見たい。
スパイスの香りにつられてか、ククちゃんが起きてきた。
「いただきます」
手を合わせる。
「カレーは、ボクたちの思い出の味だよね」
「うん」
チサちゃんと初めて会った時、一緒に食べていたのが、ファミレスのカレーだった。あれから、どれくらい時が経っただろう。
「おいしい!」
やはり、間違いなかった。カレーは正義だ。
「トマトベースなんだね?」
絶妙に、酸味が効いている。
「ククさんがいるから、赤をイメージしたの」
だが、肝心のククちゃんはというと。
「スプーンが進んでいないようだけど?」
トシコさんが、ククちゃんに問いかける。
「野菜が多いですわ」
スプーンの先で、カレーの上に乗っている素揚げの野菜を転がしていた。
「夏野菜カレーだもん」
オクラをかじりながら、トシコさんはビールを煽った。もう運転をしないからね。
トシコさん特製のカレーは、揚げたピーマンやパプリカ、ズッキーニ、ナスビが大量に入っていた。
「カレーはおいしいのです。文句はありません。ですが、お野菜が多くては」
好意はありがたく受け取っているが、野菜まで許容はできない模様だ。
「なら、こうやって食べたらどうかな?」
ボクは、二種類のカツをククちゃんのカレーに乗せる。
「カツカレーですか。おいしそうですわ」
「いただきましょう、クク様」
まずは普通のカツを、ククちゃんが口にした。
「おいひい。これなら、野菜にも合いますわ」
野菜と一緒に食べると、ひときわうれしそうな顔になる。
「もう一つのカツも、試してみて」
「こんなにおいしいカツの他に、まだありますの?」
ククちゃんは、別のカツを味わう。
「ボクたちも食べようよ、チサちゃん」
「うん。いただきます」
噛んだ瞬間、肉汁がジュワッと広がっていく。
「んんんん!」
肉汁たっぷりのカツを噛み締めながら、チサちゃんは野菜に箸を伸ばす。ズッキーニをボリボリと砕きながら、うっとりした顔になった。
「これが、ミルフィーユカツだよ」
「お野菜との相性が、抜群ですわ!」
柔らかい分、普通のカツより野菜と混ざりやすい。
「ありがとうございます、ダイキさま。これで、お嬢様の野菜嫌いも治るでしょう」
ヨアンさんは、大げさに言っているけど。ククちゃんの表情を見ていると、ありえそうだ。
「ところでヨアン、あなたは誰の子なの?」
マミちゃんがヨアンさんに尋ねる。
「亜神の血を引いていますわ」
すごい血筋じゃないか。
「なのに、玉座なのね」
「はい。ワタシは人間なので」
人間?
「でも、たいていの場合、人間でも亜神の血さえ引いていれば」
「ただの人間なんです。親が人間だったせいかも知れません」
ヨアンさんが言うには、亜神が気まぐれで人間と交わって生まれた、という。だが、まともな能力が発動せず、魔王候補として失格の烙印を押された。
そんなヨアンさんを拾ったのが、ククちゃんだったらしい。
「波長が合っただけですわ。この子となら、一緒に旅ができると」
「でも、ワタシはうれしかったですよ。感謝しています、クク様」
二人のやり取りを見ていて、ボクは確信した。
「どうして、ククちゃんがみんなに高圧的なのか、分かったよ」
「な、なにをおっしゃいますの?」
「ヨアンさんを守ろうと、しているんだよね?」
カレーを食べる手を止めたまま、ククちゃんが硬直する。
「な、何をおっしゃっているのやら! 何を根拠にそんなことを?」
「自分が悪者になることで、ヨアンさんに向けられる好奇の視線をそらしていたんじゃないかな。違う?」
これは、実はチサちゃんの意見だった。
お風呂で話していた時に聞いたのだ。
「あたしの睨んだとおりね! そうだと思っていたのよ!」
「そうだったのですか? 後出しのご意見では」
「黙ってなさいよ!」
「ぐふうう」
マミちゃんが、薄々感じていたのは本当だろう。
チサちゃんも、なんとなく思っていたらしいから。
「お、憶測で話さないでくださる?」
急に立ち上がって、ククちゃんはロッジへ。キレイにカレーを食べ終わってから。
「休みますわ。ほらヨアン!」
「は、はい! みなさんごちそうさまでした! あと、これはキーです」
キーをボクに預け、ヨアンさんはロッジへ消えていった。
「ほらあ、ちゃんとロッジの方へ寝させるじゃないか」
このキャンプは、テントは張っていればOKらしい。どこで寝ようと、ハンモックを気に吊るして寝ようと勝手なのだ。
「いよいよだ。明日、楽しみにしてろよ」
みんなが夕飯を作る中、ネウロータくんは明日の朝食を仕込んでいる。
甘辛いタレで漬け込んだベーコンを小さな石窯に入れて、火で炙っていた。
おそらく、「くんせい」だろう。濃い味付けが好きなネウロータくんらしい朝ごはんである。
昼がマミちゃん、おやつがチサちゃん、夜が全員、翌日はネウロータくんが当番だ。楽しみだなぁ。
「あ、ちょっと待って。豚肉、そっちに余ってない?」
「結構あるぞ。バラもロースも」
「ちょっと、やりたいことがあるんだ」
ボクは豚肉で、あるものを作ろうと考える。チサちゃんにも手伝ってもらった。
「これって、どうなっちゃうの?」
「見てのお楽しみだよ」
みんなの喜ぶ顔が、早く見たい。
スパイスの香りにつられてか、ククちゃんが起きてきた。
「いただきます」
手を合わせる。
「カレーは、ボクたちの思い出の味だよね」
「うん」
チサちゃんと初めて会った時、一緒に食べていたのが、ファミレスのカレーだった。あれから、どれくらい時が経っただろう。
「おいしい!」
やはり、間違いなかった。カレーは正義だ。
「トマトベースなんだね?」
絶妙に、酸味が効いている。
「ククさんがいるから、赤をイメージしたの」
だが、肝心のククちゃんはというと。
「スプーンが進んでいないようだけど?」
トシコさんが、ククちゃんに問いかける。
「野菜が多いですわ」
スプーンの先で、カレーの上に乗っている素揚げの野菜を転がしていた。
「夏野菜カレーだもん」
オクラをかじりながら、トシコさんはビールを煽った。もう運転をしないからね。
トシコさん特製のカレーは、揚げたピーマンやパプリカ、ズッキーニ、ナスビが大量に入っていた。
「カレーはおいしいのです。文句はありません。ですが、お野菜が多くては」
好意はありがたく受け取っているが、野菜まで許容はできない模様だ。
「なら、こうやって食べたらどうかな?」
ボクは、二種類のカツをククちゃんのカレーに乗せる。
「カツカレーですか。おいしそうですわ」
「いただきましょう、クク様」
まずは普通のカツを、ククちゃんが口にした。
「おいひい。これなら、野菜にも合いますわ」
野菜と一緒に食べると、ひときわうれしそうな顔になる。
「もう一つのカツも、試してみて」
「こんなにおいしいカツの他に、まだありますの?」
ククちゃんは、別のカツを味わう。
「ボクたちも食べようよ、チサちゃん」
「うん。いただきます」
噛んだ瞬間、肉汁がジュワッと広がっていく。
「んんんん!」
肉汁たっぷりのカツを噛み締めながら、チサちゃんは野菜に箸を伸ばす。ズッキーニをボリボリと砕きながら、うっとりした顔になった。
「これが、ミルフィーユカツだよ」
「お野菜との相性が、抜群ですわ!」
柔らかい分、普通のカツより野菜と混ざりやすい。
「ありがとうございます、ダイキさま。これで、お嬢様の野菜嫌いも治るでしょう」
ヨアンさんは、大げさに言っているけど。ククちゃんの表情を見ていると、ありえそうだ。
「ところでヨアン、あなたは誰の子なの?」
マミちゃんがヨアンさんに尋ねる。
「亜神の血を引いていますわ」
すごい血筋じゃないか。
「なのに、玉座なのね」
「はい。ワタシは人間なので」
人間?
「でも、たいていの場合、人間でも亜神の血さえ引いていれば」
「ただの人間なんです。親が人間だったせいかも知れません」
ヨアンさんが言うには、亜神が気まぐれで人間と交わって生まれた、という。だが、まともな能力が発動せず、魔王候補として失格の烙印を押された。
そんなヨアンさんを拾ったのが、ククちゃんだったらしい。
「波長が合っただけですわ。この子となら、一緒に旅ができると」
「でも、ワタシはうれしかったですよ。感謝しています、クク様」
二人のやり取りを見ていて、ボクは確信した。
「どうして、ククちゃんがみんなに高圧的なのか、分かったよ」
「な、なにをおっしゃいますの?」
「ヨアンさんを守ろうと、しているんだよね?」
カレーを食べる手を止めたまま、ククちゃんが硬直する。
「な、何をおっしゃっているのやら! 何を根拠にそんなことを?」
「自分が悪者になることで、ヨアンさんに向けられる好奇の視線をそらしていたんじゃないかな。違う?」
これは、実はチサちゃんの意見だった。
お風呂で話していた時に聞いたのだ。
「あたしの睨んだとおりね! そうだと思っていたのよ!」
「そうだったのですか? 後出しのご意見では」
「黙ってなさいよ!」
「ぐふうう」
マミちゃんが、薄々感じていたのは本当だろう。
チサちゃんも、なんとなく思っていたらしいから。
「お、憶測で話さないでくださる?」
急に立ち上がって、ククちゃんはロッジへ。キレイにカレーを食べ終わってから。
「休みますわ。ほらヨアン!」
「は、はい! みなさんごちそうさまでした! あと、これはキーです」
キーをボクに預け、ヨアンさんはロッジへ消えていった。
「ほらあ、ちゃんとロッジの方へ寝させるじゃないか」
このキャンプは、テントは張っていればOKらしい。どこで寝ようと、ハンモックを気に吊るして寝ようと勝手なのだ。
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