おっさん、魔王の玉座になる －幼女魔王と一緒に座っているだけでレベルMAX！－

4-2 今度は団体戦だ！

キュラちゃん、心境の変化

「あそーれ、あそーれ」

　ポンポンを振り乱しながら、ロイリさんが汗を流す。
　みんなとワンテンポ遅れているのは、ご愛嬌だ。
　しかも、掛け声は一人だけ昭和である。

　とはいえ、ロイリさんにかけられる歓声は、他の誰よりも大きい。

　最後までロイリさんが足を引っ張って、チアダンスは終わった。

『ありがとうございましたー』

　応援ダンスが終わり、勇者側の応援合戦が始まる。学ランのLOが、昔ながらの応援をしていた。
　その直後、なんと学ランたちはパラパラを踊りだす。

　ダンスを終えたチア姿の面々が、こちらにやってきた。

「ママ、お疲れさま」
「ぜえ、ぜえ。どうもー」

　完全グロッキー状態で、ロイリさんがチサちゃんの隣に座る。

「大丈夫ですか？」
「当分は、ムリかも。ああ、お茶どうも」

　ボクが差し出した冷たいお茶を、ロイリさんは一気に飲む。

「みなさん、元気ですね。さすがダイキさんのご友人だけあります」
「ありがとうございます」

　友人たちを褒められて、ボクは自分のことのようにうれしくなった。

　他のみんなは呼吸を整えているだけだが、ロイリさんは一人だけ酸素缶を吸っている。

「ダイキ、あたしらのダンスどうだった？」
「すごかった！　みんないつの間に覚えたの？」
「いやなんかね、大魔王があたしたちのところに来て、『今から練習ですから』って！」

　彼女たちは無理やり、ロイリさんの手で連行されたらしい。

「まさか、こんな格好をさせられるとは。競技のリハーサルまでやらされた」

　短すぎるスカートをつまみながら、エィハスが不満を漏らす。

「しかも、呼び出した本人のダンスがズレるとか」
「寄る年波には勝てませんよぉ」

　ロイリさんは、いまだ酸素缶を手放せない。
　案外、見た目よりも体力がないのかも？

「まあいいじゃないですか。魔王様との交流は楽しいですから」
「うむ。ダイキとはまた話をしたかったからな」

　ベルガとセーラさんは、ロイリさんのサプライズに好意的だ。

「おかしどうぞ」

　チサちゃんが、セーラさんたちにお菓子をあげる。                                    

「うむ。感謝する」

　変なやつが多いLOの中でも、セーラさんは常識的だ。

「よう、ダイキ！　また会うたのう！」

　現れたのは、和太鼓担当のソーである。
　チアダンスにどうして和太鼓って必要なんだろうって疑問が払拭されるくらい、彼の太鼓はチアにマッチしていた。

「すごいものを見たよ」
「ほうか！　ほじゃったらええわい！　ガハハ！　じゃあの！」

　大量のお菓子をバリバリ食べ終えて、ソーはセーラさんと持ち場へ戻っていく。

「よかったぞ、キュラ」

　キュラちゃんは、真っ先にネウロータくんの元にやってきた。

「みんな、キュラの魅力がわかってねえな。もっと褒められるべきだ」
「にいにに見てもらったら、それでいい」

　キュラちゃんは、ヤンデレが故にLO堕ちした子である。
　兄であるネウロータくんのことが大好きすぎて、本気で結婚まで考えていた。
　そこを、勇者たちに付け込まれ、利用された過去を持つ。

　ネウロータくんは、キュラちゃんにお菓子を上げた。

「ありがと。勇者きらい。にいに、やっつけて」
「おう。兄貴に任せろ」

　次に、キュラちゃんがトシコさんの前で正座をした。

「にいにをお願い。ホントはあんたに頼むなんてヤなんだけど、勇者は何をやらかすかわからない。だから、あたしの代わりに、にいにを守って。お願いします」

　三指をついて、キュラちゃんがトシコさんに懇願する。
　あんなにトシコさんのことを嫌っていたのに。
　自分がトシコさんにキズを負わせたことを、キュラちゃんはずっと気にしていたのだろう。

「信じてくれてありがとう、キュラちゃん。お姉ちゃんに任せて。勇者になんか、ネウロータくんには指一本触れさせないから」

　トシコさんが言うと、キュラちゃんのほっぺが朱に染まる。

「あ、あんたをお姉ちゃんと認めたことなんて、い、いっぺんたりともないからっ」

　トラフグみたいにほっぺたを膨らませて、キュラちゃんがスネちゃった。
　でも、本当に嫌っている様子はない。素直じゃないだけなんだ。
　キュラちゃんにも、心境の変化はあったみたいだな。