上 下
261 / 302
4-3 ラストダンジョンへ!

しばしの休息

しおりを挟む
 ラストダンジョンに入っても、チサちゃんの食欲は衰えない。

 メニューもシャレた料理ではなく、から揚げやハンバーグなどの食べ慣れたものばかり。子どもの舌に合わせてくれている。

 チサちゃんと初めて会った、ファミレスの食べ放題を思い出す。
 あの出会いがなければ、ボクはここにはいない。

 管理者がベルガなだけあって、お刺身も大量にあった。寒ブリとか、何年ぶりだろうな。

「カレーライス、おかわり」

 チサちゃんが、空になった皿をベルガに差し出す。

「はーい」

 お皿に、ベルガがゴハンとカレーを盛った。

「ボクもおかわりを」

 想像以上に消耗していたのだろう。ボクもおかわりをもらった。

「ダイキさんも、たくさん食べてくださいねー」
「ありがとう。こういう休憩所って、各所に設けられているの?」
「はい。我々は番人を勤めています」

 フロアごとに中継地点があって、休めるという。

「だいたい、こういう広大すぎるダンジョンって、相手を消耗させるために複雑化しているはずだよね?」

 お城って本来、相手に攻め込まれることを想定して設計されているはず。

 ギリギリのところまで追い詰めて、リソースがなくなったところを撃退する。

 もしくは逃げ道を確保するため、複雑化しているものでは。

「面ごとが広大なダンジョン化しているので、ワンフロア攻略するたび回復が適切だろうと、邪神ラヴクラホテップは申していました」

 あの邪神でも、考えてくれているのか。

「邪神によると、全力で戦わないと意味がない、とのことです」

 なるほど。彼らしい。

 チサちゃんを見ると、ずっとオニオンサーモンを食べている。

 ボクも、久しぶりに食べてみた。ああ、やっぱりこれはおいしい。

 食後、ボクたちは隣の温泉へ入る。

「オンコ、強かったね」
「本気で戦うことになるなんて」

 背中を流し合いながら、感想戦を始めた。

「となると、次もパーティメンバーの誰かなんだろうね」
「パパの力を与えられて洗脳されたって設定のはず。油断できない」
「本気で戦えるってところが、ポイントだよね」

 たいていは、「仲間を傷つけるわけにはいかない!」って展開なんだろう。

 けど、相手が相手だけに「倒さないとこちらがやられる」ってわかる。全力で戦いやすい。

「チサちゃんは、お父さんである邪神と戦えそう?」

 一緒にお湯に浸かりながら、ボクはチサちゃんに聞く。

「パパもママも、それを望んでいる」

 価値観がぜんぜん違うんだな。実の両親が相手でも、チサちゃんは容赦しない。

「チサちゃんは、魔王になったらどうするの?」
「ダイキのおヨメさんになる」
「あ、ありがとう。魔王としては、どう振る舞おうって考えているの?」
「みんなと仲良くできる世界を作る」

 チサちゃんの目標は、まったくブレていなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

男は歪んだ計画のままに可愛がられる

BL / 完結 24h.ポイント:418pt お気に入り:11

リーンカーネーション 小学4年に戻ったおれ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:56

呪われた第四学寮

ホラー / 完結 24h.ポイント:1,831pt お気に入り:0

傾国の王子

BL / 完結 24h.ポイント:674pt お気に入り:12

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:631pt お気に入り:0

ここはあなたの家ではありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:31,311pt お気に入り:2,008

潰れた瞳で僕を見ろ

BL / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:21

ある工作員の些細な失敗

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:2,186pt お気に入り:0

パスコリの庭

BL / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:27

処理中です...