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4-4 運命の戦い! それぞれの世界線!

イクミとルチャ

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「前を向くんだ、イクミちゃん!」

 ディエロゴのハイキックと、ボクのハイキックが、互いの首を刈り取る。

 両者とも、バタンとリングに倒れた。

 一発一発が、星さえ砕くほどの威力である。それを、プロレス技として、ボクたちはかけ合った。危険なプロレスごっこだ。プロレスとは本来、相手との信頼関係の上に成り立っている。シナリオが合って、ソレに沿わなければならない。

 だが、この戦いに筋書きなんてなかった。本気で、ぶつかるしかないんだ。互いの心が折れるまで、動けなくなるまで。

「イクミちゃんには、ちゃんと未来が待っている。ルチャがいなくたって、イクミちゃんは進めるんだ!」
「あたしは、ルチャが隣にいない未来なんて考えられない!」

 最後の一撃が、渾身の一撃がボクたちに迫った。

「ルチャを越えていけ、イクミちゃん!」

 ボクも、応える。

 ディエロゴのパンチが、ボクの頬にめり込んだ。

 ボクのボディブローが、ディエロゴのみぞおちを突き刺す。

 よろめき、ディエロゴが体勢を崩した。

 そのスキをついて、ボクはディエロゴのクビに腕を回す。

 抱えあげて、ボクはブレーンバスターを決めた。ディエロゴを、背中からマットへ叩きつける。

 ボクも倒れたまま、動けない。まぶたが、だんだん重くなってきた。



 気がつくと、ボクは見知らぬ場所に立っている。
 辺りは真っ白で、足元には蒸気のような白煙が立ち込めていた。

「ダイキ」

 ボクの隣には、チサちゃんがいる。ボクは、チサちゃんと手をつなぐ。

「負けたよ、ダイキ」

 正面には、イクミちゃんとディエロゴがいた。
 まるで鏡みたいに、ボクたちと同じ構図になっている。

「アタシたちの力を、あんたらにあげる。邪神をぶっ飛ばして」
「いや、ボクたちはみんなで一つだ。みんなでやっつけに行こうよ」

 ボクが伝えると、イクミちゃんは笑う。

「アンタには、かなわないよ。アタシの世界線は、シリアスな展開しかなかった。あんたたちみたいにコメディで振り切れていたら、アタシはこうならなかったのかな?」
「それは、わからない。パートナーがチサちゃんだから、ボクはこっちに進めたのかも」

 うん。そうとしか、考えられないよ。

「邪神に勝つよ。チサちゃんの存在を認めてもらう」
「ああ。そうなるといいな」

 ボクは、ディエロゴと握手をする。
 

 目を覚ますと、ボクはまだリングに横たわっていた。

 技をかけたまま、眠ってしまったのか。

 いつの間にか、変身も解けていた。

「勝った? 勝ったのか?」

 チサちゃんが、ボクの隣で眠っている。チサちゃんも、死力を尽くしたのだ。

 ボクたちは、勝てたようである。

「ディエロゴ、ボクの勝――」

 起き上がると、誰もいない。

 倒れているはずのイクミちゃんとディエロゴは、そこにはいなかった。

「行ってしまったのか」
「違う。イクミとディエロゴは、わたしたちの中で」

 そうだよね。二人と、ボクたちは同じなんだ。ようやく、ボクも二人の熱を実感できるようになった。

 さあ、最終決戦だ。
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