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第二章 配信可能なダンジョンで、ボスのVTuberと対決

第21話 アウゴと、緋依

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 男女のエルフさんたちが、草や木々に魔力を送り込んでいる。

「このエルフさんたちは、地球の制限には干渉しないんですね? 地球では魔法が使えないって聞きましたけど、」

 そういえば、ルゥさんの馬車も、空を飛んでいた。
 
「いえ。我々も、簡易的に周辺をダンジョン化させているんですぅ。そういう技術を、博士とともに開発しましたぁ」

 地球を傷つけないレベルまで力を抑え込んで、魔法を使っているらしい。

「馬車は?」

「あれも、周辺をダンジョン化して取り囲んでいるんですぅ。でも、攻撃や防御などはできません。馬車に乗って外国に行こうとしたら、戦闘機に撃ち落とされますよぉ」

 移動限定の、ダンジョン化らしい。

「この人たちは、ルゥさんのお城の関係者ですか?」

 エルフさんたちが作業しているのを見ながら、ボクはルゥさんに話をふる。
  
「いいえ。父とは、仲違いをしているのでぇ。わたしが地球で知り合ったエルフさんのお友だちを集めて、協力していただいているのですよぉ」

 それでも、彼らを通して父親に連絡はいっているという。少しずつ、信頼を取り戻しつつあるらしい。

「イナダ イクミのダンジョンもそうでしたが、かなり土地のダメージが酷いんですよねえ。それを治療するのが、我々エルフの役目でぇす」

「そうなんですね」

「カトウ アウゴは、次元をムリヤリ、異世界に合わせようとしているんですねぇ。なんというんでしょう、『オレ色に染まれ』的な? ダンジョンとは本来、そういうものではありませぇん。自然発生型なのでぇす」

 作りたくなくても、できてしまう。異世界と地球がつながってしまうのが、ダンジョンの本質だというのだ。

 ダンジョンを管理しているのが、エルフの一族なのだという。その代表が、ルゥさんのいる王族なのだ。

 ルゥさんは地球側に肩入れしすぎて、異世界側と衝突した。

「地球がピンチだというのに、自分たちの領土問題ばかりに目が行っている父と、トラブルになりましたぁ」

「でも、ありがたいです。このままいけば、地球はダメになっていったでしょう」

「もう、手遅れかもしれませぇん」

 青空を見ながら、ルゥさんはつぶやく。

「本当ですか?」

「龍脈、ってご存知ですかねえ? 地球の気……異世界で言う魔力の流れが、乱れすぎなんですよぉ

 いつ天変地異が襲ってきても、おかしくない状況らしい。

 作業を終えて、エルフさんたちが撤収していく。
 
「カトウ アウゴは、どうして、地球をこんな風にしたんですか?」

「わたしにも、アウゴの目的はわかりませぇん。博士ならなにか知っているかもしれませんがぁ。それより、ナオトさんのお友だちに聞いたらよいのでは?」
 
 そっか、ダンヌさんなら、なにかを知っているかも。
  アウゴの目的なんて聞いても仕方ないと思っていたから、スルーしていた。
 
「カトウ アウゴは、異世界からの転生者だお。だけど、望まない転生だったお」

 あちらの世界で悪逆の限りを尽くしていたせいで、魔力を発揮できない地球に転生させられたらしい。

 だとしたら、アウゴは自分の世界に帰りたいのだろうか。

「ダンジョンなら自由に魔法が使えるから、ダンジョンから出られないお」
 
「自分が住みやすいように土地を改造するより、自分が異世界に帰る手段を考えるほうが、効率的じゃないの?」

「人間に対して、それと同じことを言えるかお?」

 おお、そっか。
 たしかに人間だって、地球の環境を変えたんだよね。
 発言が、ダブルスタンダードだったか。
 
「……ナオトさんって、ときどき言動が辛辣ですねぇ」

 ルゥさんが、苦笑いを浮かべた。

「事実を述べたまでです」

 ダンヌさんの影響かもしれない。

「オイラやアウゴがいた世界は、ルゥたちが住んでる場所とも違うお。アウゴはそこで討伐されて、追放されたお」

「いわゆる、勇者的な人に倒されたと」

「ざっくり言うと、そうだお」
 
 アウゴは今でも、自分を殺した相手と追放した女神に対して、復讐を考えているという。

「カトウ アウゴと、緋依さんとの間に、どう関係があるの?」

「私が、その勇者の生まれ変わりだからよ」

 声をかけられて、ボクは思わずビクッとなる。
 意図的に声をかけようとしていなかったから、過剰反応してしまった。

「カトウ アウゴを倒したけど、勇者も死んだの。勇者の転生体が、私」
 
「いつごと気がついたの?」

「世界じゅうに、ダンジョンができてからよ」

 最初は普通の人間だったが、世界のダンジョン化に伴い、前世の記憶と力が戻ってきたという。

 緋依さんが、腰に手を当てた。ポケットに手を突っ込む。

「博士からよ」

 振動しているスマホを、緋依さんがボクに差し出す。

「どうも。無事に終わりました」
 
 チョーコ博士に、ダンジョン攻略の連絡を入れる。

『すごいでち。一日で済ませたどころか、二時間もかかっていないでち』

菜音ナオトくんの力は、計り知れません」

『でちでち。こっちも終わったでち。ダンジョンをまた一つ、潰せそうでち』

「なにが、あったんですか?」
 
『デヴァステーション・ファイブの一人が、出頭してきたでち』


(第二章 完)
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