上 下
33 / 42
第三章 魔王、本格始動

第33話 嫌な予感

しおりを挟む
「行きますわ!」

 ドラゴンの上から、マーゴットが飛びかかってくる。

「あなたとは一度、戦ってみたかったですわ! ジェンシャン・ナイト!」
「クソ!」

 マーゴットの腕へ、オレはシールドを投げた。

「フン!」

 タキがドラゴンの腕を動かし、シールドを殴って壊す。

「ジェンシャン・スラッシュ!」

 ラスボスからの攻撃に、オレも思わず大技で対抗した。

「はああ!」

 マーゴットが、腕を交差させる。両方の腕が、ドラゴンのそれへと変形した。これが、本来あるマーゴットの姿なのだろう。

 岩山のようなウロコによって、オレの必殺技は弾け飛んだ。

「刀が……っ!」

 ミスリル製の刀が、欠けた。

「痛う……くっ!」

 マーゴットも無傷ではない。両腕が、使い物にならなくなったようだ。

 ミスリルは自己修復力が高いが、相手の回復力を阻害する力もある。

「やりおるな、シェリダン!」

 魔法銃から光弾を発し、タキがこちらをけん制した。

 その間に、マーゴットがコクピットへ戻る。こちらへ「カッ!」と、火球を吐きながら。

「腕を斬られましたわ!」
「ムチャしおって! 様子見せえ、っていいましたやろうが!」

 無謀な挑戦をしたマーゴットに、タキが説教した。

「ブレスのパワーは、いくらですの? 満タンですの?」
「あかん。飛んでるだけで、手一杯や! こんなに燃費が悪いんか! 動いてるだけで消耗しとるやんけ!」

 どうも、動力に関してトラブルが発生したようだ。

「お困りのようだな!」

 手から光線を放ちながら、オレはタキのいるコクピットに詰め寄る。

「城でひと悶着あったんや。それを始末しとったら、ガス欠や」

 どうも、魔王の城でトラブルがあったらしい。タキはその騒動を収めた直後、この戦闘をふっかけたようだ。

「そもそも、どうして正面から来た? これだけの兵力があったら、王都だって消し炭じゃねえか。どうして、オレの前に?」

 タキの作ったドラゴンは、オレだけをターゲットにしている。

 だから、ライコネンにブレスを吐かなかったのだろう。放出されていれば、今頃オレたちもろとも死んでいた。

 それだけで、戦争には勝てるはず。

 なのに、タキはそれをしてこない。

「本当に、キミと戦うだけなんじゃないか?」
「いや。タキがそんなやつには思えない」

 なにか、考えがあるはずだ。オレを惹きつける理由が。自分に注目して欲しい以外にも。いや、オレを引き付けておかないといけない理由といえば?

「モモチ、私も加勢する!」

 馬に乗ったジーンが、オレの真下まで来た。

「どこを狙えばいい?」

 槍を構えながら、ジーンがドラゴンに接敵をする。

「そうか!」

 しまった。こんなことをしている場合じゃねえ!

「ジーン! 王都へ急げ! こいつはタダのおとりだ!」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:17

どうやら、我慢する必要はなかったみたいです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:72,286pt お気に入り:4,071

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:195,762pt お気に入り:12,471

皇后はじめました(笑)

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:114

ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:163pt お気に入り:285

皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:2,446

極道恋事情

BL / 連載中 24h.ポイント:1,179pt お気に入り:779

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,526pt お気に入り:301

処理中です...