失業暗黒騎士、勇者の姪である姫が作った街の門番に転職するも、姫様のほうが明らかに強い

椎名 富比路

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第二章 元・魔王四天王 シモン・セルバンデスの転職後の初陣

第19話 ヨロイなしでの勝利

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「ダメだ! 逃げろ!」

「シモン・セルバンデスは強すぎる!」

 隊長を失ったことで、傭兵団が散り散りになっていった。

 これは、勝利と見ていいだろう。

 まあ逃げたところで、ヤツらが無事に帰れるかどうかは謎だけど。

「お見事です。モン・バン。すばらしい働きぶりでした」

 ヒナ王女が、高いところからこちらに降りてきた。

「あんな感じで、魔物が裂け目の内外からも襲ってくるわけだな?」

「はい。裂け目からはどんな世界の化け物が来るかわからりません。その上で、地上の国家とも衝突は避けられず」

「他国との、話し合いの余地はないと?」

「話の通じる相手は、極少数です」

 ここは戦場になる際、あらゆる国にとって拠点となる。攻め込む際の基地として、絶妙な場所に位置しているのだ。
 おまけに、謎の空間から入手できる不思議アイテムまである。
 それらすべてを手に入れさえすれば、無敵の国家ができ上がるわけだ。

「この塔を狙う連中は、あわよくば異界からの侵略者を倒せる戦力さえ求めています」

「図々しいな」

「人同士が戦争を始めれば、そんなものです」

 ヒナ王女が手加減をするなというのも、よくわかる。

「なので、圧倒的な強さを示さねばなりません」

 それで、どっちも潰せるモンバンが必要なわけだな。

「わかった。協力しよう」

 一生戦って暮らせるなら、それはそれで楽しめそうだ。 

「黒Tと黒短パンだけで、戦場を駆け抜けるとはな」

 ブレンダが、俺の装備品だったヨロイを差し出す。これを届けるために、加勢してくれたのか。
 黒騎士のトレードマークであるはずのヨロイは、ヒナ王女に壊されたままだったっけ。

「傭兵団が攻め込んでくる直前に、修復は終わっていたんだ。しかし、キミが出ていくまでに間に合わなかったんだよ」
 
「すまんな」

 俺のヨロイである【黒壇のヨロイ】、完全に修復が完了していた。頼んでいないアーマーメットの修繕まで。

 というか、前より頑丈になっていないか? ヨロイが放つオーラが、前より増している。魔力の潜在値が、跳ね上がっていた。

「持っているだけで、魔物が逃げ回りそうだ。特に頭部、アーマーメットが」

「実際にそうだ。アーマーメットに、魔除けの作用はあるよ」

 弱い魔物なら、アーマーメットを見ただけで逃げ出すそうだ。

「さっきのコボルドたちも、ヨロイが放つオーラで逃げていったんだ」

 だからヤツらは、急に臆病になったのか。 

「顔部分は装備しないから、いいのに」

「ついでだ、モン・バン。キミが来てくれてから、こちらも業務が楽になった。感謝している」

「業務とは?」

 ブレンダも、塔の見張りをしているものだとばかり思っていたが。
 
「言っただろう。我々は他に仕事をしながら、見張りもしていると」
 
「そうだったな」

「ワタシの仕事は、鍛冶だ。装備を開発・強化する。キミさえよければ、装備をさらにいいものにしてやる」

「だったら、この槍を強化してくれ。こう見えて、魔力を抑えながら戦っているんだ」

 俺の魔力ポテンシャルは、槍の許容量をあっさりと超えてしまっていた。
 長年だましだまし使っていたが、見逃せないレベルまで来ている。

「わかった。しばらく門番は休むといい。その間敵襲は、ピーザンが引き受けてくれるだろう」

「よろしく頼む」

「ただ、キミも戦闘以外の職を手に入れておけよ。いつも敵襲があるとは限らないからな」

 やれやれ。

 初出勤にして、休むように言われてしまうとは。


(第二章 完)
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