ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

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第五章 魔術師のダンジョンと、伝説のガイコツ剣士

第47話 王子の過去

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 グミスリル鋼の騎士は、全身が青黒い。
 ヨロイの表面を、怨念で固めているかのようだ。
 
 青黒い騎士の周りには、冒険者たちの死体が転がっている。
 ボスである騎士を、討伐しに来たのだろう。すべて、返り討ちにあったか。

「彼らの無念は、我が晴らす。キャル殿、手出し無用」

「うん。でも危なくなったら、こっちが勝手に動くね」

 いくら使い魔といっても、死なれたらたまったもんじゃない。

「魔女を倒すまでの、契約だろうからな」

「違うって。ずっといっしょに、旅をするつもりだよ」

 わたしがいうと、フルーレンツさんは一瞬固まった。

「永久的な、契約だとは。こういうのは、目的を果たすまでのものだと」

「いえいえ。剣術でも、参考になる点は多いからね。レベッカちゃんの助けになってよ」

「……御意っ」
  
 ボス騎士と、フルーレンツ王子が対峙する。

 両者、同時に動いた。

「ぐあ!」

 インパクトの瞬間、フルーレンツさんが弾かれる。
 
 相手はミノタウロスより、背が高くない。
 だが、あんな巨人より腕力が強かった。

 王子の一撃を、騎士は軽くいなす。

 まさに、魔剣に操られていたときの王子を思わせた。

「ならば!」

 王子が、戦法を変える。
 両手剣を直し、ショート―ソードでの切り合いにシフトした。
 円形盾で敵の攻撃を受け流し、懐に飛び込む。
 
「そこ!」

 どうにか王子は、敵の顔面に剣を突き刺す。

「むっ!?」

 すぐに、王子は相手から飛び退いた。
 
「こやつも、スケルトンか」
 
『だったら、炎が効くはずだよ! 喰らいな!』

 レベッカちゃんが、わたしと意識を交代する。

 炎をまとった魔剣を振るって、魔物に叩き込む。

『なんだってんだ!?』


「あれは、スケルトンではありませんわ」

 たしか、デーモンっていっていたっけ。こんなに強いんだ。

『じゃあ、【ライカーガス】ってわけかい』
 
 ライカーガスとは、「どこぞの国の王族」という意味である。
 アンデッドの姿をとっているが、正確には魔族だ。

「来るよ!」

 アンデッドになった冒険者が、わたしたちに襲いかかってきた。

雷霆蹴りトニトルス!」

 ジグザグ状に、雷光が轟く。

 アンデッド冒険者を、クレアさんが片っ端から破壊していた。

「ザコはこちらに任せて、キャルさんはボスをお願いします!」

「わかった! わたしが正面で相手をするから、フルーレンツさんは側面から!」

「うむ! この際、共闘する!」

 フルーレンツさんが、こちらの指示通りに側面から敵に切りかかる。
 
 サシの勝負にこだわっていたフルーレンツさんも、さすがに勝てないと思ったか。
 
 二対一になっても、相手の優勢は変わらない。
 こんなに、強いのかよ!

「さすがデーモン! やる!」

 フルーレンツさんにとっても、相手にとって不足なしと言ったところなのだろう。
 苦戦しつつも、高揚している。

「ドワ!」

 真正面から、騎士に斬りかかられた。

 おお。無事である。あってよかった、第三の腕。

「からの! 【ブレイズ】!」

 相手の剣を持つ手を抱え込み、一緒に火だるまに。

『炎属性は効かないだろうけど、ずっと燃え続けて焼け死なないってわけじゃないだろうよ!』

 ましてレベッカちゃんには、【原始の炎】がある。

 黙っていても、ダメージが通るはずだ。
 
『しぶといね!』

 いくら燃やしても、ライカーガスは倒れない。

「決定的な一撃が、足りないみたい」

『くそ! 面倒だねぇ!』

 レベッカちゃんは、一旦魔物から離れる。

「グミスリルに、相殺されているのかも」
 
『そんな効果が、あるようだね』

 グミスリル製の実力を、垣間見た。
 たしかに、この防御力は凄まじい。
【原始の炎】さえも、軽減するとは。
 
 本格的な防具の調節をされると、レベッカちゃんでも苦戦するようだ。

 かといって呪い焼きなんてしたら、せっかくのグミスリルさえ破壊してしまう。

 おそらくあのヨロイに、グミスリルは使い込まている。

 魔女なら、それくらいの悪行はするはず。

「特にこれといって弱点もなさそうだし、動力がグミスリルなのはわかってるんだけど」

……っ!

「わかった。脆いところを狙おう」

『秘策を、見つけたんだね?』

「うん! フルーレンツさん!」

 わたしは、フルーレンツさんに指示を送った。

「承知した!」

 フルーレンツさんとライカーガスが、切り合う。

 懐に飛び込めないほどの、激しい武器同士のぶつかり合いが続いた。

「今だよ、レベッカちゃん!」

『おう! おおおおお!』

 レベッカちゃんが、騎士を背中から切りかかった。
 ただ、相手の身体を斬るわけじゃない。

 狙うのは、ヨロイとヨロイを結ぶ、魔力の繋ぎ目だけ。

 さすがレベッカちゃん。慎重にスパッと、金色の装飾だけを剣先で切った。

 それだけで、あれほどの猛威を振るっていた騎士の体勢が崩れる。

「フルーレンツさん!」

 同じように、フルーレンツさんもショートソードをふるった。
 魔力同士の繋ぎ目を、スパスパと切り捨てる。

 二人の器用さがなければ、できない芸当だ。

 騎士ライカーガスが、戦闘不能になる。
 ヨロイをすっかり失った敵が、弱点の魔法石を露出した。

『トドメだよ!』

 ドスン、と、レベッカちゃんが剣を魔法石に突き立てる。

 どうにか、ボスを退治することができた。

『ところで、フルーレンツ。このヤロウは、知り合いかい?』

 レベッカちゃんが、ライカーガスのカブトを剥ぎ取る。

「むう。やはり、デーモンの顔にしか見えぬ。我が配下や、敵の部隊にも、このような者はいなかった気がする」

『そうかい』

 魔女イザボーラは、デーモンすらも操るのか。
 
  
                                      *

 
「そんなに調べても、資料なんて出てこないでヤンスよ」

 リンタローは、本の虫になったヤトに辟易する。

 二人は未だに、港町ファッパに腰を据えていた。
 魔女イザボーラについて、調べるためだ。 
 
 風魔法で一冊ずつ本のホコリを払い、そのまま魔法で本棚にしまう。
 その度にヤトが別の本を棚から出すものだから、片付けが終わらない。

 財団の書庫を片付けることを条件に、蔵書や資料類を借りているだけだと言うのに。

 こちらがいくら整理しても、ヤトが散らかしてしまう。

「まって。もうすぐ出てくる。あんたは、魔女について調べて」

 ヤトは、コーラッセンについて調べ物をしていた。

「魔女イザボーラの伝説なんて、ソレガシたち天狗イースト・エルフでさえ知ってるでヤンス。エルフ界隈で、知らないヤツはいないでヤンスよ」

 イザボーラは、エルフのハミ出し者だ。
 自分の力を過信し、自らを「魔王をも超える最強の魔女だ」といい出し、里を飛び出したのである。イザボーラの故郷が宗教色の強い、閉鎖的な地域だったのもあるだろうが。
 当時からイザボーラは、闇に魅入られた厄介オタクとして有名だったが、余計にタチが悪くなったようである。

 魔剣の流通ルートなどの情報から、リンタローはおそらくツヴァンツィガーを狙っているのがイザボーラだと気づく。
 ファッパの財団に聞いたところ、やはりイザボーラが各地で悪さをしていることがわかった。
 本当にイザボーラは、魔王に取って代わろうとしているに違いない。
 
 しかし、ヤトはもっと遡って、コーラッセンの情報を集めだしたのだ。

「どうしてイザボーラが、ツヴァンツィガーにこだわっているのか。どうしてあの王子を手下にしたのか、これでわかるかも」

 本のページを、ヤトが指さしている。

 勇者の特徴、剣術の内容などが、記されていた。
  いずれも、フルーレンツと共通するものばかり。
 となれば、なぜフルーレンツがあそこまで強かったか説明がつく。

「なるほど。フルーレンツ殿は、勇者の父親でヤンしたか」

 勇者の強さは、フルーレンツ・コーラッセンの血を引き継いでいたいからなのだろう。
 その血脈は、今も。

「たしかツヴァンツィガーには、小さい王女がいた。ツヴァンツィガーは代々、勇者の血族」

 だとしたら、狙われるのは……。
 
 リンタローとヤトは、資料庫を飛び出した。
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