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第五章 魔術師のダンジョンと、伝説のガイコツ剣士
第46話 グミスリル鉱のダンジョン
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まずは冒険者ギルドへ、鉱石関連の依頼がないか尋ねてみた。
昨日は鍛冶の見学に夢中で、すっかりツヴァンツィガーのギルドへ立ち寄るのを忘れていたんだよね。王様との話し合いもあったし。
「いらっしゃい。ツヴァンツィガーへようこそ」
受付嬢も、ドワーフさんだ。しかも、ちょっとおばちゃんである。
「鉱山ダンジョンに関連した、クエストはありますか?」
「あるとも。あの鉱山の中でも、グミスリルが取れる地帯は、閉鎖されて久しいね」
「グミスリルとは?」
「ミスリルの硬さと、溶かしたアメのような柔軟性を持つ銀を持つ金属さ。鍛冶屋垂涎のアイテムなんだよ。けどねえ。魔女イザボーラ・ドナーツが占領しちまって」
ここでも魔女! イザボーラって、かなり悪さをしてみるみたい。
「冒険者や王城のドワーフ兵たちも、あの鉱山に向かったんだけどさ。みんな逃げ帰ってきたよ」
鉱山を守るモンスターが強すぎて、勝てないという。
「ただのミスリルなら、別のポイントでも取れるんだよ」
たしかに、フルーレンツさんの剣にも、一部ミスリルが使われている。
「そっちにも、魔女イザボーラの手がかかり始めてるね。グミスリルを独占しているモンスターさえ倒せば、魔物共も撤退するだろうさ」
グミスリルを占拠しているモンスターが、配下に指示を出して鉱山を襲わせているらしい。
「わかりました。その魔物を、やっつけに行きます」
なにもヘルムートさんからは、グミスリルのダンジョンに行っちゃいけないって、言われていないもんね。
「正気かい? 相手は、デーモンだよ?」
「デーモンとは?」
「魔族さ。高位のヴァンパイアとか、魔王とか言われているよ」
話を聞く限り、かなり強そうな魔物だな。
「鉱石を使われないように、魔女がグミスリルを使ってガーディアンゴーレムを作っちまったのさ」
カリュブディスのように、不完全体でもなさそう。
なんたって、グミスリルなんて貴重な金属をエサにしているそうだもん。
「それでも行きます」
わたしたち三人は、ガーディアンを倒しに行くことにした。
せっかくだし、珍しい金属が欲しい。
邪魔な魔物も倒せて、一石二鳥だもんね。
ギルドの依頼にあった、閉鎖された鉱山へ。
道中は特になんの危なげもなく、モンスターも湧かなかった。
これも、ヘルムースさんのおかげかも。
カブトをドクロマスクにして、【王者の威厳】を持たせたのがよかったのだろう。
王者の威厳とは、弱いモンスターを遠ざけるスキルだ。
スパルトイに指示を出すのにも、ちょうどいい。
野盗ですら寄り付かないってのは、楽でいいよね。
ただ、ここから先は威厳も通じないモンスターがわんさかいる。
『ミスリルでできたボスなんて、うまそうだね、キャル』
「そうだね」
そんな感想が出るのは、レベッカちゃんくらいだよ。
「で、フルーレンツさん。剣の方は?」
「訓練用のものを、借りてきた」
フルーレンツさんの武器は、ロングソードと、ショートソードの二本差である。
背中に担いでいるロングソードは、両手持ちの大剣だ。
ショートソードの方は、ナイフほどに短い。
「魔剣一〇本をフルに使っても、敵いませんでしたわ」
クレアさんでも、苦戦するなんて。
そこまで強いんだ。さすが、歴戦の王子様である。
なお、盾は片手の上腕にのみ。相手の攻撃を受け流すための、小型の円形シールドを持ってもらった。
わたしが壁役を担当するので、大型盾は持たせていない。
「両手大剣を所持してどのように大型シールドを構えるのかと思えば、もう一本の腕を生やすとは」
背中から、魔力制御の多関節腕を展開し、大盾でみんなを守る。
「キャル殿の発想は、斜め上であるな」
「へへーん」
魔法腕の性能も向上し、より早く盾を動かせるようになった。
ヘルムースさんの技術を盗んで、応用している。
『魔物の気配がするねえ』
レベッカちゃんが、魔物を探知した。
「我に任せてくれ」
フルーレンツさんは、スパルトイ兵隊をどのように動かせばいいかも手慣れていた。王子様だったからだろうな。
『キャル。この間も話したけど、スパルトイやゴーストの統率は、フルーレンツにお願いしたよ』
「うん。同じアンデッドだから、フルーレンツさんが指揮する方がいいかもね」
斥候役をうまく使って、フルーレンツさんは敵勢力の少ないルートを探している。
弱い敵はスパルトイに任せて、障害になる大物だけをこちらで対処した。ムダな戦闘は、しない。みんな、待っているもんね。
弱い魔物を狩るのは、鉱山をある程度安全にしてからにしたい。
「この魔物がいるフロアの奥に、強い殺気を感じる」
フルーレンツさんが、警戒を行った。
「そこが、ボス部屋だね」
たしかに、フロアの端に休憩スペースもある。ここは、当たりかも。
牛頭の巨人が、わたしたちの前に立ちふさがる。
「ミノタウロス型か、悪くない」
フルーレンツさんが、背中に担いでいた両手持ちの細身剣を抜く。
「キャル殿。手出し無用で、お願いいたす」
「わかったよ。あなたの騎士道を、尊重します」
「かたじけない。てやあ!」
フルーレンツさんと、ミノタウロスが打ち合う。
ミノタウロスの巨大な斧さえ、フルーレンツさんの身体に傷一つ付けられない。
対してフルーレンツさんは、ミノタウロスに確実なダメージを与えていく。
これがアンデッドの装備かと思えるくらい、フルーレンツさんは動きが機敏だ。
もしかすると、魔剣を所持していたときより、強いかもしれない。
スケルトンキングとかリッチとかなんていう、次元を超えていた。
死神……。まさしくそう形容してもいいだろう。
「装備の硬さを試させてもらおう。来い」
ミノタウロスの実力を把握したのか、フルーレンツさんが無防備になった。
あえて魔物に、攻撃をさせる。
だが、魔力がこもったヨロイに、ミノタウロスの腕力が通らない。
「うむ。一流の腕だ。ヘルムースよ」
ミノタウロスの斧攻撃を、フルーレンツさんはラウンドシールドで軽く受け流す。
シールドは、傷一つついていない。
これが、職人の技か。
使い手もすごいが、防具を作った職人の本気度もうかがえた。
「いい戦士だった。では、さらばだ」
フルーレンツさんは、相手に敬意を評した。直後、ミノタウロスの首を難なくはねる。
あれで、訓練用の剣かよ。
ミノタウロスの首を切るなんて、それこそヤツが持っている斧でも難しいのに。
ボス部屋横のフロアで、一旦休む。
お腹が空いたので、クレアさんとお昼にする。
「何もすることが、ありませんわ。完全に、フルーレンツさんにおまかせしていますわね」
申し訳なさそうに、クレアさんがサンドイッチをつつく。
戦闘していない者が率先して食べていいものなのか、と考えているのかも。
クレアさんも戦闘に参加しようとしたが、あっという間に終わってしまった。
「どう、フルーレンツさん。ヨロイの着心地は?」
「見事だ。ヘルムースの丁寧さがうかがえる」
フルーレンツさんのヨロイは、魔力が全身にいきわたるように、所々に地獄のヒスイを流し込んである。数ミリ単位という極細の装飾に、店売りの数倍という魔力量を圧縮していた。
ヨロイ本来の硬度も、損なわれていない。
あれだけの魔力を注ぎ込むためには、多少の硬度は犠牲にする必要があるのに。
硬さを維持しつつ魔力をヨロイ全体に浸透させるには、熟練の技量が必要だ。
わたしも、錬成技術をもっと磨かないとね。
「ただ、あれは一人では骨が折れるな」
ボスの間に足を踏み入れて、フルーレンツさんがひとりごちた。
眼の前にいるのは、グミスリル鋼で身を固めた騎士である。
ひざまづいている姿だけでも、ただものではないとわかった。
昨日は鍛冶の見学に夢中で、すっかりツヴァンツィガーのギルドへ立ち寄るのを忘れていたんだよね。王様との話し合いもあったし。
「いらっしゃい。ツヴァンツィガーへようこそ」
受付嬢も、ドワーフさんだ。しかも、ちょっとおばちゃんである。
「鉱山ダンジョンに関連した、クエストはありますか?」
「あるとも。あの鉱山の中でも、グミスリルが取れる地帯は、閉鎖されて久しいね」
「グミスリルとは?」
「ミスリルの硬さと、溶かしたアメのような柔軟性を持つ銀を持つ金属さ。鍛冶屋垂涎のアイテムなんだよ。けどねえ。魔女イザボーラ・ドナーツが占領しちまって」
ここでも魔女! イザボーラって、かなり悪さをしてみるみたい。
「冒険者や王城のドワーフ兵たちも、あの鉱山に向かったんだけどさ。みんな逃げ帰ってきたよ」
鉱山を守るモンスターが強すぎて、勝てないという。
「ただのミスリルなら、別のポイントでも取れるんだよ」
たしかに、フルーレンツさんの剣にも、一部ミスリルが使われている。
「そっちにも、魔女イザボーラの手がかかり始めてるね。グミスリルを独占しているモンスターさえ倒せば、魔物共も撤退するだろうさ」
グミスリルを占拠しているモンスターが、配下に指示を出して鉱山を襲わせているらしい。
「わかりました。その魔物を、やっつけに行きます」
なにもヘルムートさんからは、グミスリルのダンジョンに行っちゃいけないって、言われていないもんね。
「正気かい? 相手は、デーモンだよ?」
「デーモンとは?」
「魔族さ。高位のヴァンパイアとか、魔王とか言われているよ」
話を聞く限り、かなり強そうな魔物だな。
「鉱石を使われないように、魔女がグミスリルを使ってガーディアンゴーレムを作っちまったのさ」
カリュブディスのように、不完全体でもなさそう。
なんたって、グミスリルなんて貴重な金属をエサにしているそうだもん。
「それでも行きます」
わたしたち三人は、ガーディアンを倒しに行くことにした。
せっかくだし、珍しい金属が欲しい。
邪魔な魔物も倒せて、一石二鳥だもんね。
ギルドの依頼にあった、閉鎖された鉱山へ。
道中は特になんの危なげもなく、モンスターも湧かなかった。
これも、ヘルムースさんのおかげかも。
カブトをドクロマスクにして、【王者の威厳】を持たせたのがよかったのだろう。
王者の威厳とは、弱いモンスターを遠ざけるスキルだ。
スパルトイに指示を出すのにも、ちょうどいい。
野盗ですら寄り付かないってのは、楽でいいよね。
ただ、ここから先は威厳も通じないモンスターがわんさかいる。
『ミスリルでできたボスなんて、うまそうだね、キャル』
「そうだね」
そんな感想が出るのは、レベッカちゃんくらいだよ。
「で、フルーレンツさん。剣の方は?」
「訓練用のものを、借りてきた」
フルーレンツさんの武器は、ロングソードと、ショートソードの二本差である。
背中に担いでいるロングソードは、両手持ちの大剣だ。
ショートソードの方は、ナイフほどに短い。
「魔剣一〇本をフルに使っても、敵いませんでしたわ」
クレアさんでも、苦戦するなんて。
そこまで強いんだ。さすが、歴戦の王子様である。
なお、盾は片手の上腕にのみ。相手の攻撃を受け流すための、小型の円形シールドを持ってもらった。
わたしが壁役を担当するので、大型盾は持たせていない。
「両手大剣を所持してどのように大型シールドを構えるのかと思えば、もう一本の腕を生やすとは」
背中から、魔力制御の多関節腕を展開し、大盾でみんなを守る。
「キャル殿の発想は、斜め上であるな」
「へへーん」
魔法腕の性能も向上し、より早く盾を動かせるようになった。
ヘルムースさんの技術を盗んで、応用している。
『魔物の気配がするねえ』
レベッカちゃんが、魔物を探知した。
「我に任せてくれ」
フルーレンツさんは、スパルトイ兵隊をどのように動かせばいいかも手慣れていた。王子様だったからだろうな。
『キャル。この間も話したけど、スパルトイやゴーストの統率は、フルーレンツにお願いしたよ』
「うん。同じアンデッドだから、フルーレンツさんが指揮する方がいいかもね」
斥候役をうまく使って、フルーレンツさんは敵勢力の少ないルートを探している。
弱い敵はスパルトイに任せて、障害になる大物だけをこちらで対処した。ムダな戦闘は、しない。みんな、待っているもんね。
弱い魔物を狩るのは、鉱山をある程度安全にしてからにしたい。
「この魔物がいるフロアの奥に、強い殺気を感じる」
フルーレンツさんが、警戒を行った。
「そこが、ボス部屋だね」
たしかに、フロアの端に休憩スペースもある。ここは、当たりかも。
牛頭の巨人が、わたしたちの前に立ちふさがる。
「ミノタウロス型か、悪くない」
フルーレンツさんが、背中に担いでいた両手持ちの細身剣を抜く。
「キャル殿。手出し無用で、お願いいたす」
「わかったよ。あなたの騎士道を、尊重します」
「かたじけない。てやあ!」
フルーレンツさんと、ミノタウロスが打ち合う。
ミノタウロスの巨大な斧さえ、フルーレンツさんの身体に傷一つ付けられない。
対してフルーレンツさんは、ミノタウロスに確実なダメージを与えていく。
これがアンデッドの装備かと思えるくらい、フルーレンツさんは動きが機敏だ。
もしかすると、魔剣を所持していたときより、強いかもしれない。
スケルトンキングとかリッチとかなんていう、次元を超えていた。
死神……。まさしくそう形容してもいいだろう。
「装備の硬さを試させてもらおう。来い」
ミノタウロスの実力を把握したのか、フルーレンツさんが無防備になった。
あえて魔物に、攻撃をさせる。
だが、魔力がこもったヨロイに、ミノタウロスの腕力が通らない。
「うむ。一流の腕だ。ヘルムースよ」
ミノタウロスの斧攻撃を、フルーレンツさんはラウンドシールドで軽く受け流す。
シールドは、傷一つついていない。
これが、職人の技か。
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「いい戦士だった。では、さらばだ」
フルーレンツさんは、相手に敬意を評した。直後、ミノタウロスの首を難なくはねる。
あれで、訓練用の剣かよ。
ミノタウロスの首を切るなんて、それこそヤツが持っている斧でも難しいのに。
ボス部屋横のフロアで、一旦休む。
お腹が空いたので、クレアさんとお昼にする。
「何もすることが、ありませんわ。完全に、フルーレンツさんにおまかせしていますわね」
申し訳なさそうに、クレアさんがサンドイッチをつつく。
戦闘していない者が率先して食べていいものなのか、と考えているのかも。
クレアさんも戦闘に参加しようとしたが、あっという間に終わってしまった。
「どう、フルーレンツさん。ヨロイの着心地は?」
「見事だ。ヘルムースの丁寧さがうかがえる」
フルーレンツさんのヨロイは、魔力が全身にいきわたるように、所々に地獄のヒスイを流し込んである。数ミリ単位という極細の装飾に、店売りの数倍という魔力量を圧縮していた。
ヨロイ本来の硬度も、損なわれていない。
あれだけの魔力を注ぎ込むためには、多少の硬度は犠牲にする必要があるのに。
硬さを維持しつつ魔力をヨロイ全体に浸透させるには、熟練の技量が必要だ。
わたしも、錬成技術をもっと磨かないとね。
「ただ、あれは一人では骨が折れるな」
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