【何カ所か18禁】鎮守様と異世界に

国興し

６２ ビクトリー国都聖騎士団

　ビクトリー王国都防護壁からは程遠い、森に囲まれた低木がチラホラと生い茂った草原に、白い爆撃機はゆっくりと降下していった。
低木が生い茂った草原では、まとまりのない鎧を着用した五百人ほどの武装集団全員は馬に乗ったまま上空の白い鳥を眺めていた。

　爆撃機が着陸すると、馬に乗っていた全員は急ぎ馬から降りて片膝をついた。

　爆撃機のドアがタラップになると、サニーは翅を広げて五百人ほどの集団上空を飛翔しだした。
五百人ほどの武装集団は誰一人と口を開く者はいなく、神々しく飛翔しているサニーを瞼に焼き付けようと見入っていた。

　鹿島はサニーの思考をすぐに理解した様子で、苦笑いしながらタラップを降りだした。
鹿島の後ろからは、ヒカリ王女と十人の白い衣装を着た修道士や修道娘たちが続き、金糸で刺繡したガウンをまとったシンデレラが五人の護衛を引き連れて下りてきた。
シンデレラが指名した五人の護衛たちは、元冒険者傭兵仲間でリーダーは兄であった。
五人の護衛たちは黒光りする鱗甲冑を身に着けていて、腰には尾刃剣をも差していた。

　鹿島が地面に降り立つと、サニが側に降り立った。
「われらが主にして、聖騎士団長お待ちしていました。私はクレイジー.タイガーと、申します。」
「クレイジー.タイガーとは、二つ名持ちか？」
「お恥ずかしながら。」
「これからは、タイガー.コウセイと名乗る気はないか？」
「クレイジーと呼ばれるよりも、公正と呼ばれ等ございます。」
「では、名前負けしないよう、がんばってくれ。」
「肝に銘じます。」

　鹿島がサニーに頷くと、サニーは再び爆撃機に飛翔していった。

　サニーは武具と槍に剣を一抱えにして帰って来た。
「タイガー殿の、黒鱗甲冑に黒尾刃剣と黒尾刃槍だ。」
と、サニーは武具類をタイガーの前に並べた。
「まさか？ボーボアの鱗と尾刃でしょうか？」
「タイガー殿に装備していただく品は、全て特異質、黒ボーボアからの材料で兎亜人職人が製作しました。」
「普通、ボーボアの鱗は虹色に輝き、白い尾刃剣は発動すると赤く光ると、聞き及んでいますが、黒ボーボアからの材料からだと、どのような違いがあるのでしょうか？」
「神器だと思ってくれ。」
と、鹿島は自慢げに微笑んだ。

　鹿島は爆撃機で運んできた八百人分の武具類を運び座すよう命じた。
「残りはまだ製作中なので、取り敢えず、鱗甲冑と鱗縁側剣に尾刃槍で皆に装備させてくれ。」

　森に囲まれた草原では、鱗甲冑に鉄製の剣で切りかかると、電撃を受けた悲鳴と共に弾かれている光景があちらこちらで始まり、鉄製鎧を鱗縁側剣や赤く発動した尾刃槍で細切れにしている者達もいた。

　タイガーもやはり、鉄製鎧を相手に黒尾刃剣を青く輝かせて両断にし終えると、黒尾刃槍をも青く輝かせてやはり真二つにしていた。

　そんな光景に溶け込むことなく、サニーは王女に何やら指導していた。
王女の腕には白い長手袋を着用して黒い尾刃剣を腰に差している。
鹿島は鱗甲冑をまとっている聖騎士団の訓練を見ていたが、大木が倒れる音でサニーと王女に気が付いた。
「何かやった？」
「別に。」
とサニーは微笑んだが、鹿島はそれ以上の追及はしないで、王女の腰に差している黒い尾刃剣をちらりと見ただけであった
しかしながら、大木が倒れた原因には納得してない様子であった。

　鹿島とサニーにヒカリ王女達が馬にまたがると、シンデレラと十人の白い衣装を着た修道士や修道娘たちも幌馬車に乗り込みだした。
元冒険者傭兵達は急ぎ馬に乗り幌馬車周りを取り囲んだ。

　黒鱗甲冑を装着したタイガーを先頭に、一行は虹色に輝く鱗甲冑たちに守られビクトリー王国都防護壁門に向かった。

　タイガーは、防護壁門番衛士兵とは顔なじみの様子で、和気あいあいと話をしていた。
門番衛士兵との話を終えたタイガーは鹿島のそばに来て、
「指示通り、ヒカリ.オハラ王女が護衛を伴い、御忍びで訪問してきたので、ホルヘ公爵へのつなぎを頼みました。」
「ありがとう。では、俺とサニーは王女様の護衛として残る。タイガー殿は司祭長を教会まで案内してくれ。」
「何人かお付けしましょうか？」
「それには及ばない。」
「畏まりました。お気を付けて。」
と言って、幌馬車を護衛する隊列で門の中に入っていった。