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第二章 王都金策編
閑話 アルフレードの憂鬱
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「ブリっち、聖女様と神殿本部に行ってるからつまらない」
「聖女アンゲラ様のお付なら、ボクが喜んで行ったのに、なぜボクを誘ってくれなかったのだろうか?」
「気持悪いから?」
「ど、何処が気持ち悪いと言うのだ!」
「聖女様を見てニヤニヤしてるところ」
「それならば、ブリッツェン様とて同じではないか」
しまった、こんな失言を誰かに聞かれていたら拙い。
僕は慌てて回りを見回すが、幸い、この付近には誰もいなかった。
そもそも、誰もいないのは当然のなのだ。なぜなら、ここはフェリクス商会会頭の長男たる僕、アルフレードの私室なのだから。
「ところでエドワルダ、僕が聖女アンゲラ様を見ている時の表情はどんな感じだ?」
「ブリっちが、急にニヤニヤしてる時の顔に似てる」
「それは本当か?!」
「ん」
それは拙いぞ。
貴族に対する不敬になってしまうから、今まで思っても口に出したことはないが、妹のエドワルダなら大丈夫だろう。
「エドワルダよ」
「ん」
「ここだけの話にして欲しいのだが、ブリッツェン様についてちょっといいか」
「分かった」
「あの~だな。……ブリッツェン様は、稀にだが独り言を言っているよな?」
「言ってる」
よし、コレは僕の聞き間違えではない。
「ブリッツェン様は、唐突にニヤニヤすることがあるよな?」
「ある。だから、その顔と似てる」
いやいや、これは本人には絶対に言えないが、ブリッツェン様の表情を緩めるのを無理に我慢している風のあのニヤけた表情は、どうにも下卑た考えなり想像をしているとしか思えない。
そんな表情で僕も聖女アンゲラ様を見ているとなると、聖女アンゲラ様は僕が下卑た考えをする者として見ているのだろうか? そうだとしたら、僕は生きていくのが辛い……。
「そ、そう言えば、エドワルダはよくブリッツェン様に纏わり付いているよな」
「嫌な言い方」
「すまんすまん。で、その時のブリッツェン様は、妙に鼻の穴が広がっていたりしないか?」
僕の見間違いで無ければ、若干背伸びをして、少しでもエドワルダを見下そうとしている。その時は、鼻の下が伸びて鼻の穴が広がっているように思える。
あれは何をしているのかわからないが、やはりニヤけた表情だ。
「鼻の穴は分からない。でも、ボクが見るとサッと顔を叛ける」
まぁ、なんだ、エドワルダは小さいのに大きいから、もしかしてブリッツェン様も興味があるのかもしれないな。
だが、ブリッツェン様はお若くとも貴族なのだから、もう少し取り繕った表情ができるようになって頂きたいな。……エドワルダに言わせればボクもなのだろうが。
――コンコンコン
「入れ」
「お坊ちゃま、会頭がお呼びでございます。執務室の方へお越し頂けますか」
「わかった、すぐに行くと伝えてくれ」
「かしこまりました」
はて、僕に何の話だろうか?
「エドワルダ、僕は少し出るよ」
「部屋に帰る」
「すまんな」
こうして、僕は父の執務室に、エドワルダは自室へと戻った。
「会頭が僕に御用とは珍しいですね」
「今日は親子の関係で構わん。ヘニングもいない、お前と二人だけだ」
「重要なお話のようですね」
「重要と言うか、漏れては困る話なだけだ」
「それを重要と言うのだと思いますが」
茶化したらすごい目で睨まれてしまった。
「アルフレード、率直に聞く。お前はブリッツェン様をどう思う」
「どうと言われましても……そうですね、お若いのに知識も教養も武力のある。そして、在地とはいえ騎士爵家のご子息で肩書まである。素晴らしい方だと思いますよ」
「そんなわかりきっていることではない」
では、何が聞きたいのだろうか?
「アルフレードは”悪魔の子”というのは聞いたことがあるか?」
「噂で少々。確か、黒髪黒瞳の――ブリッツェン様が悪魔の子なのですか?」
「声が大きい!」
「失礼しました」
そんな噂は、噂にもならないほど廃れきったどうでもいい伝説だ。しかし、それがブリッツェン様に関わっているとなると……。
「父さんが昔ブリッツェン様に助けられた話は何度も聞かせたと思う」
「そうですね」
「だが、どうしてここまでブリッツェン様に力を貸しているかは話していないはずだ」
「まぁ、返しきれない恩があるとは伺っていますが」
「それもあるが、父さんはブリッツェン様のお力に期待している」
お力?
「黒髪黒瞳の悪魔の子伝説は、紆余曲折を経て忌み子として定着し、今やそれも忘れかけられている」
「確かに、僕が聞いた噂もそうでした」
「しかし、父さんが昔入手した古い文献によると、黒髪黒瞳の者が英雄であったと記されていたのだ」
「忌み子と英雄では雲泥の差ではないですか」
とんでもない話になってきたぞ。
「アルフレードよ、ブリッツェン様のような幼いうえに成長の遅い子が、魔術を使えずにあの強さがあるのを不思議に思わないか」
「それは思います」
「そして、その文献には、災いが起こる時、黒髪黒瞳の子が生まれると書いてあったんだ」
「それは、これから災いが起こると?」
「それはわからん。しかし、なんにしてもブリッツェン様のお力が平和を齎すと、初めて会ったあの日、父さんはそう感じた」
眉唾物の話だが、商人としてここまで商会を大きくした父が言うことだ、荒唐無稽な話ではないのかも知れない。
「だからな、父さんはフェリクス商会の儲けのためだけではなく、世界の平和のために既にブリッツェン様に先行投資している」
「なるほど」
「それに、ブリッツェン様は変わっているお方だろ」
「例えば?」
「何やら独り言をもぞもぞ言ってみたり」
やはり、父もそう思っているのか。
「不意にニヤけたり」
それもか。
「そうそう、エドワルダを見る目がたまに下心があるようにも見える」
「そ、そうですね」
ブリッツェン様は隠しておられるようだが、どうやらこれは周知の事実のようだな。
「しかし、ブリッツェン様がエドワルダに気があるようであれば、これはフェリクス商会としては喜ばしいことだ」
「なぜでしょう?」
「ブリッツェン様がエドワルダと一緒になってくれれば、その後に英雄となられる方が身内になるのだぞ。そうなれば、世界平和のために先行投資した分、そこで少しくらいなら良い目を見ても罰が当たらんと思うのだが」
この父は商人としてこれで良いのだろうかと心配になる程、清廉潔白な人物だと思っていたが、僅かであっても欲があってくれたことに安心してしまった。
「とはいえ、英雄になられる方がエドワルダで満足することなどないだろうからな、これは夢のまた夢だ」
「たしかに、英雄色を好むといいますからね」
「ブリッツェン様もお年頃で、色ごとに興味がおありなのかもしれないが、もう少し表情を自制してくださると助かるのだがな」
「そうですな。あの表情に比べれば、呪文のような独り言はまだ可愛気がありますね」
「うむ、従業員もたまに気味悪がっていたが、今ではそれがブリッツェン様なのだと納得しているようだ」
ブリッツェン様の部屋付きのメイドは、最近はブリッツェン様の独り言に慣れたと言っていたらしいが、部屋ではいつも独り言を言っているのだろうか。
ブリッツェン様の交友関係は知らないが、もしかして友人が少ないのではないだろうか? それゆえ、一人でいる時間が長くなり、脳内お友達と会話をしているのでは?! 何だか、少しだけブリッツェン様が可哀想になってきてしまった。
いやいや待てよ、ブリッツェン様はあのお年に似合わぬ知識をお持ちだ。常に何やら考えているようだから、それが口から漏れているやもしれん。世の中には天才には変わり者が多いと聞くし、ブリッツェン様も……。あまり考えるのは止めよう。
「そうだ、少し話を戻しますが、黒髪黒瞳の英雄は、実際にどの様な能力を持っているのですか?」
「それが、何を救った。何を倒した。と結果ばかりで、『どのように』が一切書かれていない所為で、能力は未知なんだ」
それは残念だ。だが、ブリッツェン様が英雄である可能性は、我々の夢として勝手に思っていたくもあるな。
「まぁ、言わずともわかっておるであろうが、この話は他言無用だぞ」
「心得ています」
「それから、当たり障りなく、ブリッツェン様の独り言と表情について矯正してやってくれんか」
「それは……善処します」
当たり障りなくの部分で既に厳しいが、はっきり言うのはそれこそ憚られる。これはかなりの難題だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
フェリクス商会でそんな会話が繰り広げられていたとは露知らず、俺は姉さんと神殿本部からの帰り道デートを楽しんでいた。
「ブリッツェン、この辺りは人が多くて逸れてしまいそうね。迷子にならないように姉さんに掴まっていなさい」
アンゲラ姉さんはそう言いながら、なぜか腕を組んできた。
はぅ~、当たってるぅ~。
いや、当てているのか?
俺の右上腕部にポニョンポニョンと当たる柔らかな感触に、『ここではしゃいではダメだ』とわかってはいても、自然と顔が綻んできてしまう。
「ブリッツェン、何処か体調が悪いのかしら?」
「べ、別に大丈夫だよ」
「そう? あまり言いたくは無いのだけれど、少し気持悪い表情をしているわよ」
ガーン……。
いつでも俺の全てを受け入れてくれる姉さんに、気持ち悪いと言われてしまった。
これも俺の精神力の甘さの所為か。
師匠に、『お前さんは感情がダダ漏れとまでは言わんが、感情がかなり表情に出ているぞ』と言われ、それの拙さに気付いていた俺は、精神力とともに感情の制御も直そうと努力してきたはずだが、結局はどちらもまだ甘い。
あれか、エドワルダと一緒に行動していたら、俺もエドワルダばりの鉄仮面を装備できるかな?
そんな馬鹿なことを考えつつ、俺は姉さんとのデートを楽しんだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
うぅ~、ブリッツェン様の矯正をどうやればいいのか考えていたら、今までにないくらいに胃が痛くなってきた。
僕の身体は大丈夫なのだろうか。
悩みのタネであるブリッツェンがアンゲラとの姉弟デートを満喫していることを知らぬアルフレードは、自室で一人胃の辺りを押さえて寝台の上で悶絶していたのであった。
「聖女アンゲラ様のお付なら、ボクが喜んで行ったのに、なぜボクを誘ってくれなかったのだろうか?」
「気持悪いから?」
「ど、何処が気持ち悪いと言うのだ!」
「聖女様を見てニヤニヤしてるところ」
「それならば、ブリッツェン様とて同じではないか」
しまった、こんな失言を誰かに聞かれていたら拙い。
僕は慌てて回りを見回すが、幸い、この付近には誰もいなかった。
そもそも、誰もいないのは当然のなのだ。なぜなら、ここはフェリクス商会会頭の長男たる僕、アルフレードの私室なのだから。
「ところでエドワルダ、僕が聖女アンゲラ様を見ている時の表情はどんな感じだ?」
「ブリっちが、急にニヤニヤしてる時の顔に似てる」
「それは本当か?!」
「ん」
それは拙いぞ。
貴族に対する不敬になってしまうから、今まで思っても口に出したことはないが、妹のエドワルダなら大丈夫だろう。
「エドワルダよ」
「ん」
「ここだけの話にして欲しいのだが、ブリッツェン様についてちょっといいか」
「分かった」
「あの~だな。……ブリッツェン様は、稀にだが独り言を言っているよな?」
「言ってる」
よし、コレは僕の聞き間違えではない。
「ブリッツェン様は、唐突にニヤニヤすることがあるよな?」
「ある。だから、その顔と似てる」
いやいや、これは本人には絶対に言えないが、ブリッツェン様の表情を緩めるのを無理に我慢している風のあのニヤけた表情は、どうにも下卑た考えなり想像をしているとしか思えない。
そんな表情で僕も聖女アンゲラ様を見ているとなると、聖女アンゲラ様は僕が下卑た考えをする者として見ているのだろうか? そうだとしたら、僕は生きていくのが辛い……。
「そ、そう言えば、エドワルダはよくブリッツェン様に纏わり付いているよな」
「嫌な言い方」
「すまんすまん。で、その時のブリッツェン様は、妙に鼻の穴が広がっていたりしないか?」
僕の見間違いで無ければ、若干背伸びをして、少しでもエドワルダを見下そうとしている。その時は、鼻の下が伸びて鼻の穴が広がっているように思える。
あれは何をしているのかわからないが、やはりニヤけた表情だ。
「鼻の穴は分からない。でも、ボクが見るとサッと顔を叛ける」
まぁ、なんだ、エドワルダは小さいのに大きいから、もしかしてブリッツェン様も興味があるのかもしれないな。
だが、ブリッツェン様はお若くとも貴族なのだから、もう少し取り繕った表情ができるようになって頂きたいな。……エドワルダに言わせればボクもなのだろうが。
――コンコンコン
「入れ」
「お坊ちゃま、会頭がお呼びでございます。執務室の方へお越し頂けますか」
「わかった、すぐに行くと伝えてくれ」
「かしこまりました」
はて、僕に何の話だろうか?
「エドワルダ、僕は少し出るよ」
「部屋に帰る」
「すまんな」
こうして、僕は父の執務室に、エドワルダは自室へと戻った。
「会頭が僕に御用とは珍しいですね」
「今日は親子の関係で構わん。ヘニングもいない、お前と二人だけだ」
「重要なお話のようですね」
「重要と言うか、漏れては困る話なだけだ」
「それを重要と言うのだと思いますが」
茶化したらすごい目で睨まれてしまった。
「アルフレード、率直に聞く。お前はブリッツェン様をどう思う」
「どうと言われましても……そうですね、お若いのに知識も教養も武力のある。そして、在地とはいえ騎士爵家のご子息で肩書まである。素晴らしい方だと思いますよ」
「そんなわかりきっていることではない」
では、何が聞きたいのだろうか?
「アルフレードは”悪魔の子”というのは聞いたことがあるか?」
「噂で少々。確か、黒髪黒瞳の――ブリッツェン様が悪魔の子なのですか?」
「声が大きい!」
「失礼しました」
そんな噂は、噂にもならないほど廃れきったどうでもいい伝説だ。しかし、それがブリッツェン様に関わっているとなると……。
「父さんが昔ブリッツェン様に助けられた話は何度も聞かせたと思う」
「そうですね」
「だが、どうしてここまでブリッツェン様に力を貸しているかは話していないはずだ」
「まぁ、返しきれない恩があるとは伺っていますが」
「それもあるが、父さんはブリッツェン様のお力に期待している」
お力?
「黒髪黒瞳の悪魔の子伝説は、紆余曲折を経て忌み子として定着し、今やそれも忘れかけられている」
「確かに、僕が聞いた噂もそうでした」
「しかし、父さんが昔入手した古い文献によると、黒髪黒瞳の者が英雄であったと記されていたのだ」
「忌み子と英雄では雲泥の差ではないですか」
とんでもない話になってきたぞ。
「アルフレードよ、ブリッツェン様のような幼いうえに成長の遅い子が、魔術を使えずにあの強さがあるのを不思議に思わないか」
「それは思います」
「そして、その文献には、災いが起こる時、黒髪黒瞳の子が生まれると書いてあったんだ」
「それは、これから災いが起こると?」
「それはわからん。しかし、なんにしてもブリッツェン様のお力が平和を齎すと、初めて会ったあの日、父さんはそう感じた」
眉唾物の話だが、商人としてここまで商会を大きくした父が言うことだ、荒唐無稽な話ではないのかも知れない。
「だからな、父さんはフェリクス商会の儲けのためだけではなく、世界の平和のために既にブリッツェン様に先行投資している」
「なるほど」
「それに、ブリッツェン様は変わっているお方だろ」
「例えば?」
「何やら独り言をもぞもぞ言ってみたり」
やはり、父もそう思っているのか。
「不意にニヤけたり」
それもか。
「そうそう、エドワルダを見る目がたまに下心があるようにも見える」
「そ、そうですね」
ブリッツェン様は隠しておられるようだが、どうやらこれは周知の事実のようだな。
「しかし、ブリッツェン様がエドワルダに気があるようであれば、これはフェリクス商会としては喜ばしいことだ」
「なぜでしょう?」
「ブリッツェン様がエドワルダと一緒になってくれれば、その後に英雄となられる方が身内になるのだぞ。そうなれば、世界平和のために先行投資した分、そこで少しくらいなら良い目を見ても罰が当たらんと思うのだが」
この父は商人としてこれで良いのだろうかと心配になる程、清廉潔白な人物だと思っていたが、僅かであっても欲があってくれたことに安心してしまった。
「とはいえ、英雄になられる方がエドワルダで満足することなどないだろうからな、これは夢のまた夢だ」
「たしかに、英雄色を好むといいますからね」
「ブリッツェン様もお年頃で、色ごとに興味がおありなのかもしれないが、もう少し表情を自制してくださると助かるのだがな」
「そうですな。あの表情に比べれば、呪文のような独り言はまだ可愛気がありますね」
「うむ、従業員もたまに気味悪がっていたが、今ではそれがブリッツェン様なのだと納得しているようだ」
ブリッツェン様の部屋付きのメイドは、最近はブリッツェン様の独り言に慣れたと言っていたらしいが、部屋ではいつも独り言を言っているのだろうか。
ブリッツェン様の交友関係は知らないが、もしかして友人が少ないのではないだろうか? それゆえ、一人でいる時間が長くなり、脳内お友達と会話をしているのでは?! 何だか、少しだけブリッツェン様が可哀想になってきてしまった。
いやいや待てよ、ブリッツェン様はあのお年に似合わぬ知識をお持ちだ。常に何やら考えているようだから、それが口から漏れているやもしれん。世の中には天才には変わり者が多いと聞くし、ブリッツェン様も……。あまり考えるのは止めよう。
「そうだ、少し話を戻しますが、黒髪黒瞳の英雄は、実際にどの様な能力を持っているのですか?」
「それが、何を救った。何を倒した。と結果ばかりで、『どのように』が一切書かれていない所為で、能力は未知なんだ」
それは残念だ。だが、ブリッツェン様が英雄である可能性は、我々の夢として勝手に思っていたくもあるな。
「まぁ、言わずともわかっておるであろうが、この話は他言無用だぞ」
「心得ています」
「それから、当たり障りなく、ブリッツェン様の独り言と表情について矯正してやってくれんか」
「それは……善処します」
当たり障りなくの部分で既に厳しいが、はっきり言うのはそれこそ憚られる。これはかなりの難題だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
フェリクス商会でそんな会話が繰り広げられていたとは露知らず、俺は姉さんと神殿本部からの帰り道デートを楽しんでいた。
「ブリッツェン、この辺りは人が多くて逸れてしまいそうね。迷子にならないように姉さんに掴まっていなさい」
アンゲラ姉さんはそう言いながら、なぜか腕を組んできた。
はぅ~、当たってるぅ~。
いや、当てているのか?
俺の右上腕部にポニョンポニョンと当たる柔らかな感触に、『ここではしゃいではダメだ』とわかってはいても、自然と顔が綻んできてしまう。
「ブリッツェン、何処か体調が悪いのかしら?」
「べ、別に大丈夫だよ」
「そう? あまり言いたくは無いのだけれど、少し気持悪い表情をしているわよ」
ガーン……。
いつでも俺の全てを受け入れてくれる姉さんに、気持ち悪いと言われてしまった。
これも俺の精神力の甘さの所為か。
師匠に、『お前さんは感情がダダ漏れとまでは言わんが、感情がかなり表情に出ているぞ』と言われ、それの拙さに気付いていた俺は、精神力とともに感情の制御も直そうと努力してきたはずだが、結局はどちらもまだ甘い。
あれか、エドワルダと一緒に行動していたら、俺もエドワルダばりの鉄仮面を装備できるかな?
そんな馬鹿なことを考えつつ、俺は姉さんとのデートを楽しんだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
うぅ~、ブリッツェン様の矯正をどうやればいいのか考えていたら、今までにないくらいに胃が痛くなってきた。
僕の身体は大丈夫なのだろうか。
悩みのタネであるブリッツェンがアンゲラとの姉弟デートを満喫していることを知らぬアルフレードは、自室で一人胃の辺りを押さえて寝台の上で悶絶していたのであった。
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