81 / 93
第四章 素材を求めて
第三話
しおりを挟む
「ディーテは居るかしら?」
ブラフマーはDに声をかけた。
侑達はBに回廊を繋いでもらい、ディーテの部屋の前に来ていた。
部屋の前にはDが俯き立っていた。
ブラフマーが声をかけるとDは顔を上げてブラフマーを見た。
「居りますが、機嫌が良くないですよ」
Dはブラフマーの後ろに立つ侑が気になるのかチラチラ見てくる。
「入っても良いかしら?」
ブラフマーはDのチラ見を気にとめることなく質問する。
「構いませんが、長くなると思いますよ…」
Dはげんなりした顔でドアを開いた。
「侑、覚悟を決めてね。」
「ブラフマーが一緒に居るんだろ?
逃げたら、嫌いになるからな?」
侑の言葉にブラフマーは薄い笑顔を作った。
ドアの中は薄暗く、長いテーブルがあり壁には色んなビンが並ぶ棚が圧迫感を出している。
其処はまるでドラマに出てくるスナックの様な雰囲気だった。
テーブルの一番奥に項垂れるように座っている人物が此方を見てボソッと呟いた。
「D…
何で中に入れるのよ…
今は堅物の相手をしたい気分じゃないのよ…」
座っている人物の声から女性と分かったが、部屋の中は暗くて顔は分からない。
「堅物って、私の事かしら?」
ブラフマーは侑の手を握って、ツカツカとその女性に近づいた。
「ブラフマーが何の用よ?」
その女性はかなり酔っているみたいで目が据わっている。
ブラフマーと共に近くによると侑はその顔に驚いていた。
斜め後ろからチラッとしか見えないが、その顔はエリカとそっくりだった。
「ディーテ、侑がエルフの国に行くから貴女に挨拶をしに来たのよ。」
「後ろの坊やが何しにエルフの国に行くのよ?」
ディーテは侑を見ると手に持つグラスに目を落として中の氷をクルクル回した。
「侑と申します。
薬の材料の一つである世界樹の新芽を戴きにエルフの国に行きます。」
侑はブラフマーの横に立ち、軽く頭を下げてディーテに挨拶した。
ディーテは目の前の観葉植物を触ると千鳥足で棚に向かって歩きだし、棚からビンを一つ持つと侑の前に立った。
「世界樹の新芽をあげるから早く帰って…」
ディーテは侑の前に新芽の入ったビンを突き出すと帰るように促した。
「いえ、それは受け取れません。
自分の足で現地に行き、世界樹から了承を貰って手に入れます。」
侑はビンを受け取るのを拒否した。
「貴方は何を言ってるの?
世界樹から了承?
あたしは今、世界樹に聞いてから渡したんだから良いでしょ?
さっさと受け取って帰りなさいよ。
わざわざあんな所に行く価値は無いわよ、時間の無駄よ。」
ディーテは自分の思い通りに動かない侑に苛立ちを覚えた。
「ディーテ様の座っていた場所にある植物が世界樹なのですか?
それに自分の管理している国を価値が無いとはどういう事ですか?」
「何であたしが貴方に説明しなきゃいけないのよ?
隣のブラフマーにでも聞けばいいでしょ。」
ディーテは新芽の入ったビンをテーブルの上に置いて元の椅子に戻った。
椅子に座ったディーテはテーブルの上の植物を撫でると手でシッシッと侑とブラフマーを追い出す素振りをした。
「貴女の口から説明してあげなさいよ。」
ブラフマーは椅子を二つ開けて座った。
「言ったでしょ?
あたしはあなた達の相手をする気分じゃないのよ。
出て行きなさいよ。」
ディーテはブラフマーを睨みつけるとまた目線をグラスに戻した。
「ふーん、何があったか知らないけど勿体無いわね。
まぁ、呑まないのに酔いそうだから帰るわ。」
ブラフマーはディーテが興味を引きそうな言葉を残して席を立った。
「…何よ。
何が勿体無いのよ。
貴女に何が分かるのよ…」
ディーテは呟く様に顔を上げた。
「分かるわよ?
貴女が荒れてる理由も何もかも。
それが分かるから勿体無いと言ってるのよ。
私を誰だと思ってるの?」
ブラフマーは顔を上げたディーテを全てを包み込む優しい表情で見つめた。
「そうね…
智の女神ブラフマーでしたね。
あの方のいない今、貴女以上の神は居ないしね。
分かったわ、座りなさいよ。
そっちの貴方も。」
ディーテは諦めた様に二人に席を勧めた。
二人がイスに座るとブラフマーは指をパチンと弾き風を起こした。
風は部屋の中をグルグル周りブラフマーの手の中に消えていった。
「これで少しは話しやすくなったかしら?
部屋中にお酒と貴女の負の空気が漂っていて話せる空気じゃなかったらね。」
ブラフマーはクスッと笑うと侑を肘で突いた。
「それで、エルフの国の事を教えて頂きたいのですが。」
侑はブラフマーの合図に応えるように話し始めた。
「貴方は侑って言ったかしら。
教えてあげても良いけど、お酒が抜けて少しお腹が空いたわ。
貴方は渡り人よね?
あっちの料理を食べてみたいわ。
そこにキッチンがあるから何か作ってよ。」
ディーテはテーブルの奥を指差した。
侑はキョトンとして動かない。
「えっ?
料理作れないの?」
「いや、料理は出来ますけど渡り人って言うのが分からなくて。」
「貴方、ステータス開いた事無いの?
種族の所に書かれてるでしょ?」
「種族の所には『人族?』って書かれててよく分からなかったんですよ。
ブラフマーに聞こうと思っていたんだけどタイミングが無くて。」
その言葉にディーテはブラフマーを睨んだ。
そして、何かを気付いた様に侑に言った。
「それが渡り人って事よ。」
ディーテはため息まじりに侑に言った。
「分かりました、ところで何か嫌いな物は有りますか?」
「嫌いな物は置いてないから、そこにある物で何か作って。」
ディーテは侑をキッチンに追いやった。
……後で説明して貰うからね。
ディーテはブラフマーに念話で言った。
ブラフマーはDに声をかけた。
侑達はBに回廊を繋いでもらい、ディーテの部屋の前に来ていた。
部屋の前にはDが俯き立っていた。
ブラフマーが声をかけるとDは顔を上げてブラフマーを見た。
「居りますが、機嫌が良くないですよ」
Dはブラフマーの後ろに立つ侑が気になるのかチラチラ見てくる。
「入っても良いかしら?」
ブラフマーはDのチラ見を気にとめることなく質問する。
「構いませんが、長くなると思いますよ…」
Dはげんなりした顔でドアを開いた。
「侑、覚悟を決めてね。」
「ブラフマーが一緒に居るんだろ?
逃げたら、嫌いになるからな?」
侑の言葉にブラフマーは薄い笑顔を作った。
ドアの中は薄暗く、長いテーブルがあり壁には色んなビンが並ぶ棚が圧迫感を出している。
其処はまるでドラマに出てくるスナックの様な雰囲気だった。
テーブルの一番奥に項垂れるように座っている人物が此方を見てボソッと呟いた。
「D…
何で中に入れるのよ…
今は堅物の相手をしたい気分じゃないのよ…」
座っている人物の声から女性と分かったが、部屋の中は暗くて顔は分からない。
「堅物って、私の事かしら?」
ブラフマーは侑の手を握って、ツカツカとその女性に近づいた。
「ブラフマーが何の用よ?」
その女性はかなり酔っているみたいで目が据わっている。
ブラフマーと共に近くによると侑はその顔に驚いていた。
斜め後ろからチラッとしか見えないが、その顔はエリカとそっくりだった。
「ディーテ、侑がエルフの国に行くから貴女に挨拶をしに来たのよ。」
「後ろの坊やが何しにエルフの国に行くのよ?」
ディーテは侑を見ると手に持つグラスに目を落として中の氷をクルクル回した。
「侑と申します。
薬の材料の一つである世界樹の新芽を戴きにエルフの国に行きます。」
侑はブラフマーの横に立ち、軽く頭を下げてディーテに挨拶した。
ディーテは目の前の観葉植物を触ると千鳥足で棚に向かって歩きだし、棚からビンを一つ持つと侑の前に立った。
「世界樹の新芽をあげるから早く帰って…」
ディーテは侑の前に新芽の入ったビンを突き出すと帰るように促した。
「いえ、それは受け取れません。
自分の足で現地に行き、世界樹から了承を貰って手に入れます。」
侑はビンを受け取るのを拒否した。
「貴方は何を言ってるの?
世界樹から了承?
あたしは今、世界樹に聞いてから渡したんだから良いでしょ?
さっさと受け取って帰りなさいよ。
わざわざあんな所に行く価値は無いわよ、時間の無駄よ。」
ディーテは自分の思い通りに動かない侑に苛立ちを覚えた。
「ディーテ様の座っていた場所にある植物が世界樹なのですか?
それに自分の管理している国を価値が無いとはどういう事ですか?」
「何であたしが貴方に説明しなきゃいけないのよ?
隣のブラフマーにでも聞けばいいでしょ。」
ディーテは新芽の入ったビンをテーブルの上に置いて元の椅子に戻った。
椅子に座ったディーテはテーブルの上の植物を撫でると手でシッシッと侑とブラフマーを追い出す素振りをした。
「貴女の口から説明してあげなさいよ。」
ブラフマーは椅子を二つ開けて座った。
「言ったでしょ?
あたしはあなた達の相手をする気分じゃないのよ。
出て行きなさいよ。」
ディーテはブラフマーを睨みつけるとまた目線をグラスに戻した。
「ふーん、何があったか知らないけど勿体無いわね。
まぁ、呑まないのに酔いそうだから帰るわ。」
ブラフマーはディーテが興味を引きそうな言葉を残して席を立った。
「…何よ。
何が勿体無いのよ。
貴女に何が分かるのよ…」
ディーテは呟く様に顔を上げた。
「分かるわよ?
貴女が荒れてる理由も何もかも。
それが分かるから勿体無いと言ってるのよ。
私を誰だと思ってるの?」
ブラフマーは顔を上げたディーテを全てを包み込む優しい表情で見つめた。
「そうね…
智の女神ブラフマーでしたね。
あの方のいない今、貴女以上の神は居ないしね。
分かったわ、座りなさいよ。
そっちの貴方も。」
ディーテは諦めた様に二人に席を勧めた。
二人がイスに座るとブラフマーは指をパチンと弾き風を起こした。
風は部屋の中をグルグル周りブラフマーの手の中に消えていった。
「これで少しは話しやすくなったかしら?
部屋中にお酒と貴女の負の空気が漂っていて話せる空気じゃなかったらね。」
ブラフマーはクスッと笑うと侑を肘で突いた。
「それで、エルフの国の事を教えて頂きたいのですが。」
侑はブラフマーの合図に応えるように話し始めた。
「貴方は侑って言ったかしら。
教えてあげても良いけど、お酒が抜けて少しお腹が空いたわ。
貴方は渡り人よね?
あっちの料理を食べてみたいわ。
そこにキッチンがあるから何か作ってよ。」
ディーテはテーブルの奥を指差した。
侑はキョトンとして動かない。
「えっ?
料理作れないの?」
「いや、料理は出来ますけど渡り人って言うのが分からなくて。」
「貴方、ステータス開いた事無いの?
種族の所に書かれてるでしょ?」
「種族の所には『人族?』って書かれててよく分からなかったんですよ。
ブラフマーに聞こうと思っていたんだけどタイミングが無くて。」
その言葉にディーテはブラフマーを睨んだ。
そして、何かを気付いた様に侑に言った。
「それが渡り人って事よ。」
ディーテはため息まじりに侑に言った。
「分かりました、ところで何か嫌いな物は有りますか?」
「嫌いな物は置いてないから、そこにある物で何か作って。」
ディーテは侑をキッチンに追いやった。
……後で説明して貰うからね。
ディーテはブラフマーに念話で言った。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた
Mr.Six
ファンタジー
仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。
訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。
「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」
そう開き直り、この世界を探求することに――
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる