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28話 向こう側からの訪問 2⃣
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リンバール王国への電撃訪問より1週間が経過した。その間、レヴィン様は執政官のウィル・ターナー様と遠隔で連絡を取り合っていた。護衛が複数付いていたとはいえ、ウィル様にとっては、生きた心地のしない1週間だったように思える。
「と、いうわけでレヴィン王子殿下……リンバール王国側からはフレデリク・リンバール国王陛下とユルゲン王子殿下の二人が向かいます。それから王家以外の人物ではノイトラ公爵大臣も含まれ、リンバール王国伝統の三重の壁が見られそうですね」
「なるほど、文書に書かれていたことと、ほぼ同様みたいだな。ウィル、助かった。そのまま警戒は怠らないようにしてほしい」
「畏まりました、殿下」
「苦労を掛ける。本来ならば、すぐにでもサンマル宮殿から出たいとは思うが……」
「いえ、これも仕事の内ですので。それに、想像以上に私達の待遇は厚くございます」
「そうか、よくわかった。それではな」
「はい、それでは失礼いたします」
そこで遠隔通信は終了となった。ウィル・ターナー様と話していたレヴィン様だけれど、現在は彼の私室で私とルールーが近くに立っている状態だった。
「どうでしたか? レヴィン様」
「ああ、特にウィル側に大きな問題は起きていないようだ。一安心と言えるだろう」
「ウィル様がご無事で安心でございますね」
「そうだな。さて……リンバール王国から来る面子は大きく4人だ」
あれ? 一人多いような気がする。私はすぐに違和感を感じ、質問をした。
「主要なお方はフレデリク国王陛下とユルゲン王子殿下、ノイトラ大臣……あと1人?」
「ああそうか、ウィルとの会話では言っていなかったが、リンバール王国のトップメンバーがやってくるのだ。防衛隊長のリキッド・スネイル殿もやって来るだろう」
「リキッド・スネイル……」
私自身、影の聖女をしていた時に面識はないけれど、当時から防衛方面の責任者として、その名前が出ていたはず。聖女が行う守護方陣の管理とは関係なく、兵士を使った国の防衛管理の責任者。
レヴィン様の会話の中で出て来た「三重の壁」というのは、リンバール王国でも有名な要人を護衛する際の、鉄壁なフォーメーションみたいな物。国王陛下やユルゲン王子殿下が、公式でシャラハザードに訪れるのだから、三重の壁での防衛は当たり前というか。
「レヴィン様、メシア様はやって来るのでしょうか?」
「いや、首都の防衛形態の維持も必要だろうから、今回は参加しないのだろう」
メシア様がやってこない……それ自体は問題ないのかもしれないけど。リンバール王国は今、守りが非常に手薄になっているはず……頼みの守護方陣に難がある状況で、魔物にでも攻め込まれでもしたらどうなるんだろうと。私は良からぬ考えが頭をよぎってしまっていた。
「と、いうわけでレヴィン王子殿下……リンバール王国側からはフレデリク・リンバール国王陛下とユルゲン王子殿下の二人が向かいます。それから王家以外の人物ではノイトラ公爵大臣も含まれ、リンバール王国伝統の三重の壁が見られそうですね」
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「畏まりました、殿下」
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そこで遠隔通信は終了となった。ウィル・ターナー様と話していたレヴィン様だけれど、現在は彼の私室で私とルールーが近くに立っている状態だった。
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「主要なお方はフレデリク国王陛下とユルゲン王子殿下、ノイトラ大臣……あと1人?」
「ああそうか、ウィルとの会話では言っていなかったが、リンバール王国のトップメンバーがやってくるのだ。防衛隊長のリキッド・スネイル殿もやって来るだろう」
「リキッド・スネイル……」
私自身、影の聖女をしていた時に面識はないけれど、当時から防衛方面の責任者として、その名前が出ていたはず。聖女が行う守護方陣の管理とは関係なく、兵士を使った国の防衛管理の責任者。
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「いや、首都の防衛形態の維持も必要だろうから、今回は参加しないのだろう」
メシア様がやってこない……それ自体は問題ないのかもしれないけど。リンバール王国は今、守りが非常に手薄になっているはず……頼みの守護方陣に難がある状況で、魔物にでも攻め込まれでもしたらどうなるんだろうと。私は良からぬ考えが頭をよぎってしまっていた。
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