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紅蓮の烈火の章
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扇をポケットにしまい、廊下を歩き、ロビーに向かう階段の手前で二組の男女がいて不思議と目を引く。
明らかに格式高いドレスの格好をしたエルフ族の仮面の女性。
ローブのフードを深々と被り、仮面をしていて見えている瞳と口元だけで相当な美丈夫だろうとわかる男性。
その人に何故か懐かしく感じてしまい、どこかで見たっけ?と思い出そうとしていた。
ギュッと腰を引き寄せられ、フードの耳元辺りで低く魅力的な声で、まるで睦言の時の様な妖艶さを醸し出したユリウスに私は焦った。
「俺以外を見つめるなんて、悪い子だね?」
「ち、ちがうからぁ」
その衝撃に私は口元に手を当てて、顔に熱が昇っていき、腰砕けそうになってユリウスに抱きしめられる。
「顔に出てるよ、今日はたくさん遊ぼうね」
妖艶に笑って、ユリウスは昏い双眸を見せながら言われた。
「だめなの、勘違いだから……ちがうの」
「へー?本当に?」
ユリウスは面白がる様に笑っていて信じきってない。
そう…ジークフリードの絵画の時もボーっと見てしまったので、アレはまぁユリウス自身の過去でもあるから少しまだ釈明の余地はあるが、今回は流石に完全に他人なのでやばい。
その時番だから好意は抱かないが、私がなぜか気にしていたのはわかってしまったのかもしれない。
私はユリウスの嫉妬アンテナ……私の浮ついた思考を読むのが段々とレベルが上がってきてる気がする。
目の前にいる二人組に関わりたくないと思いながら避けようと思ったがどうしてもそこを通らずに行くのは無理であった。
彼等は私達と目が合い、二人と後ろに控えている一人の冒険者だろうか。
剣帯に剣が下げられている青年がただずんでいる。
「やぁ、またあったね」
「お、お前は。」
離れ離れになった原因の冒険者と同じ声がして私は驚いた。
そういうことかとユリウスは理解して青年をみると薄く笑っていた。
「その剣はもう諦めた。」
安心するがいいと笑ったが釈然としない。
なにが目的なんだろうと思った。
「少し話がしたい。」
「あら、久しぶりですわ。夕食を共に行きませんか?今度こそ聞かせて下さいね。」
ふとその声があの無くしたと言っていた厚化粧の女性だと気がついて、夕食を共にと誘われ、ユリウスと目線を交わしてどうする?と悩んだ末に彼等に連れられて馬車に乗る。
馬車はお忍び用なのか紋章が描かれてないようだ。
「お兄様がいけないのよ。私が先に声をかけようとしたのに。」
「仕方ないだろ、マークしていた人物が連れだった。」
2人は知り合い……かなり気安い仲の様でツンケンしている。
「カップル?」
私は、まるで息のあった掛け合いに聞いてしまった。
「「それは絶対にない!」」
「私達は兄妹ですわ。こっちは仮面しているけど外すと似ていますのよ。他人も居ないし、良いと思いますの。」
「だが……彼等がいるだろう。」
「竜人族は番になると他人に興味はわかないでしょう?」
「まぁ確かにな。」
ガチャリと二人は仮面を外した。
なにも起きないので、私は首を傾げてフードを深々と被っている青年を不思議に思いながら、窓から見える景色に私は焦り出した。
街の中心から奥へと向かって行っていたから。
コツンと肘で小さく叩き、隣にいるユリウスを視線で窓を見ろを言うと、ユリウスは窓の外を見て深い息を吐いた。
ユリウスは私の手を握りしめた。
これならいつでも逃げ出せる。
「なにが目的だ?」
「お前らこそ、なぜ俺たちの帝都にいるのか聞きたいぐらいだよ。遥々、竜王国から何故来た?ユリウス・アウラー。」
「……お初にお目にかかる。貴殿は第一皇子オーウェン皇子。私達の事は気にしないで欲しい。ただの観光だ。」
「言葉は俺は気にしないタチでな、もっと崩していいぞ。何故、竜王国の最後の切り札たる神剣を携えてか?」
「……これは護身用だ。」
「ッハハッ……そうか、悪漢を倒すのに街ごと破壊するなよ。」
「そんな威力はないさ、切れ味のあるただの剣だ。」
面白そうにオーウェン皇子は笑って、フードを外した。
アッシュグレイの髪に青い瞳の青年は不敵に笑っており、底知れない。
やはり、かなり目を惹きつけられる。
余り見ているとまたユリウスが機嫌悪そうになると予測して窓を見る。
その顔をどこかでみた気がするが、どこだったけと懐かしく思った事を謎だなと思いながら記憶を探る。
……オーウェン?
その名前を聞いて気がついた、私は目を見開いて隠し攻略対象キャラクターだと思い出した。
隠し攻略キャラだと知らずに2回目にノーマルエンドを行ってみようとして冒険学業をメインでしていたら、偶然発見してそれも素っ気ない選択肢を選びまくっていたらなぜかある一定の対象者達の好感度を上げていないとランダムで現れる攻略制限キャラだったらしくて、好き好きで押すと逃げられるキャラだったらしい。
冒険に遊びたいのに、関わりたくないと選んでいくと離さないと言いながら、見事に結婚式を上げられて鳶トンビに油揚げをさらわれた気分だった。
あれか……
私は遠い目をしながらあの発見を思い出してなんともいえない気分だった。
「私、名前を聞いてないわ!次会ったら教えてくれるって言ってたわよね?」
彼女は第四皇女カメロンと名乗り、私は不安になり、ユリウスの方へ視線を向けて大丈夫?それとも帰る?と聞くと大丈夫と答えた。
私のユリウスへの問いにカメロン皇女は不思議そうにしていたが、オーウェン皇子はなにか考えている。
「婚約者のシア・キャロルと申します。」
私はつまらないな、思いながら答えた。
無表情になってしまう。
さっきまでは、楽しい(色々とんでもない)観光だったけど。
お城は自宅と竜王国の王城で見飽きたんだよねと考え、せっかくの旅路の最終が厄介事になってげんなりしていた。
「……噂は聞いている竜王国の至宝と。」
「それは過分な呼び名ですわね。」
私は一応は普通の部類の人なのにねと思いながら、けらけらと軽く笑うと、馬車が止まった。
「兄様にメロメロじゃない人なんて久方ぶりねぇ!」
ピキリ
カメロン皇女が何気ない感じで発した言葉で両者共に緊張が走る。
余り、そっち側の話題は避けたい。
特にユリウスが。
手を繋いでる指の小指が弄ぶ様に私の手のひらに、カリカリと引っ掻いてくる。
チクチクと軽く怒ってるのか、手の内に見えない様に器用に小指だけ竜化しかけている為爪が食い込み痛みかゆい。
相手側からは変わっているのがわからないだろうけど。
この状況下でもイタズラしてくるユリウスをチラリと見ると見た事が無いぐらい人形の様な無表情は感情を見透せない。
カタリ、タッタッタッと外で静寂に包まれた馬車の空気を壊す様に軽快に駆けてくる軽い足音がしてバタンっと扉が開いて光が差し込む。
「兄様、お土産は!」
まだ小さい無邪気な子供が扉を開けた。
アッシュグレイの髪にオレンジ色の瞳が可愛いらしいローベント君と同じぐらいの年齢だろうか。
ハッとして知らない私達も乗っていた事に今更気がついたらしくもごもごと何か声にならない声で言っている。
「コンラッド殿下ぁぁ」
焦った声をあげ扉の向こう側から追いかけてきた侍従がぜぇぜぇと追いついた。
「お客様が乗っていると……あぁ遅かった。」
「遅かったじゃないわよッ……びっくりしたじゃないの。また世話係に2人共お説教ねぇ?」
カメロン皇女はヒヒヒッ笑いながら立ち上がり、コンラッド殿下?をひょいっと服を摘み、どかせながらスタンッと軽く降りた。
「お前等…全員説教を覚悟しとけ…」
心底だめだと呆れてる声を上げて、オーウェン殿下は降り立った。
「えっ私は関係なくてよ。」
「先に俺が降りてからだ。」
色々作法すっ飛ばしたな?とオーウェン殿下はカメロン皇女にツッコミを入れてるのが笑える。
まぁ確かに、女性がスカートを翻せて軽快にジャンプするのは、他国の礼儀作法を知らない私でさえたぶんちがうと思える。
ふふふっと私はまるでコンラッド殿下は、ローベント君2号ねと笑ってしまい、ダムが決壊した。
「………お人形さんが笑ったぁ」
ずるずるとオーウェン殿下に引きずられながら、そう溢したコンラッド殿下はなんだがぼおっとした表情を浮かべている。
殿下達は全員先へ宮殿?らしき建物へ向かって歩いている。
2人きりになった私達は動かないユリウスを不思議に思った。
「降りないの?帰りたい?」
私はなるべく優しく小さな声でユリウスに声をかけた。
沈んだ表情をして、ジッと私の瞳を見つめる無表情のユリウスはなんだが深淵の底を見ている様な危なさがあり、私は不安な気持ちでいっぱいだった。
明らかに格式高いドレスの格好をしたエルフ族の仮面の女性。
ローブのフードを深々と被り、仮面をしていて見えている瞳と口元だけで相当な美丈夫だろうとわかる男性。
その人に何故か懐かしく感じてしまい、どこかで見たっけ?と思い出そうとしていた。
ギュッと腰を引き寄せられ、フードの耳元辺りで低く魅力的な声で、まるで睦言の時の様な妖艶さを醸し出したユリウスに私は焦った。
「俺以外を見つめるなんて、悪い子だね?」
「ち、ちがうからぁ」
その衝撃に私は口元に手を当てて、顔に熱が昇っていき、腰砕けそうになってユリウスに抱きしめられる。
「顔に出てるよ、今日はたくさん遊ぼうね」
妖艶に笑って、ユリウスは昏い双眸を見せながら言われた。
「だめなの、勘違いだから……ちがうの」
「へー?本当に?」
ユリウスは面白がる様に笑っていて信じきってない。
そう…ジークフリードの絵画の時もボーっと見てしまったので、アレはまぁユリウス自身の過去でもあるから少しまだ釈明の余地はあるが、今回は流石に完全に他人なのでやばい。
その時番だから好意は抱かないが、私がなぜか気にしていたのはわかってしまったのかもしれない。
私はユリウスの嫉妬アンテナ……私の浮ついた思考を読むのが段々とレベルが上がってきてる気がする。
目の前にいる二人組に関わりたくないと思いながら避けようと思ったがどうしてもそこを通らずに行くのは無理であった。
彼等は私達と目が合い、二人と後ろに控えている一人の冒険者だろうか。
剣帯に剣が下げられている青年がただずんでいる。
「やぁ、またあったね」
「お、お前は。」
離れ離れになった原因の冒険者と同じ声がして私は驚いた。
そういうことかとユリウスは理解して青年をみると薄く笑っていた。
「その剣はもう諦めた。」
安心するがいいと笑ったが釈然としない。
なにが目的なんだろうと思った。
「少し話がしたい。」
「あら、久しぶりですわ。夕食を共に行きませんか?今度こそ聞かせて下さいね。」
ふとその声があの無くしたと言っていた厚化粧の女性だと気がついて、夕食を共にと誘われ、ユリウスと目線を交わしてどうする?と悩んだ末に彼等に連れられて馬車に乗る。
馬車はお忍び用なのか紋章が描かれてないようだ。
「お兄様がいけないのよ。私が先に声をかけようとしたのに。」
「仕方ないだろ、マークしていた人物が連れだった。」
2人は知り合い……かなり気安い仲の様でツンケンしている。
「カップル?」
私は、まるで息のあった掛け合いに聞いてしまった。
「「それは絶対にない!」」
「私達は兄妹ですわ。こっちは仮面しているけど外すと似ていますのよ。他人も居ないし、良いと思いますの。」
「だが……彼等がいるだろう。」
「竜人族は番になると他人に興味はわかないでしょう?」
「まぁ確かにな。」
ガチャリと二人は仮面を外した。
なにも起きないので、私は首を傾げてフードを深々と被っている青年を不思議に思いながら、窓から見える景色に私は焦り出した。
街の中心から奥へと向かって行っていたから。
コツンと肘で小さく叩き、隣にいるユリウスを視線で窓を見ろを言うと、ユリウスは窓の外を見て深い息を吐いた。
ユリウスは私の手を握りしめた。
これならいつでも逃げ出せる。
「なにが目的だ?」
「お前らこそ、なぜ俺たちの帝都にいるのか聞きたいぐらいだよ。遥々、竜王国から何故来た?ユリウス・アウラー。」
「……お初にお目にかかる。貴殿は第一皇子オーウェン皇子。私達の事は気にしないで欲しい。ただの観光だ。」
「言葉は俺は気にしないタチでな、もっと崩していいぞ。何故、竜王国の最後の切り札たる神剣を携えてか?」
「……これは護身用だ。」
「ッハハッ……そうか、悪漢を倒すのに街ごと破壊するなよ。」
「そんな威力はないさ、切れ味のあるただの剣だ。」
面白そうにオーウェン皇子は笑って、フードを外した。
アッシュグレイの髪に青い瞳の青年は不敵に笑っており、底知れない。
やはり、かなり目を惹きつけられる。
余り見ているとまたユリウスが機嫌悪そうになると予測して窓を見る。
その顔をどこかでみた気がするが、どこだったけと懐かしく思った事を謎だなと思いながら記憶を探る。
……オーウェン?
その名前を聞いて気がついた、私は目を見開いて隠し攻略対象キャラクターだと思い出した。
隠し攻略キャラだと知らずに2回目にノーマルエンドを行ってみようとして冒険学業をメインでしていたら、偶然発見してそれも素っ気ない選択肢を選びまくっていたらなぜかある一定の対象者達の好感度を上げていないとランダムで現れる攻略制限キャラだったらしくて、好き好きで押すと逃げられるキャラだったらしい。
冒険に遊びたいのに、関わりたくないと選んでいくと離さないと言いながら、見事に結婚式を上げられて鳶トンビに油揚げをさらわれた気分だった。
あれか……
私は遠い目をしながらあの発見を思い出してなんともいえない気分だった。
「私、名前を聞いてないわ!次会ったら教えてくれるって言ってたわよね?」
彼女は第四皇女カメロンと名乗り、私は不安になり、ユリウスの方へ視線を向けて大丈夫?それとも帰る?と聞くと大丈夫と答えた。
私のユリウスへの問いにカメロン皇女は不思議そうにしていたが、オーウェン皇子はなにか考えている。
「婚約者のシア・キャロルと申します。」
私はつまらないな、思いながら答えた。
無表情になってしまう。
さっきまでは、楽しい(色々とんでもない)観光だったけど。
お城は自宅と竜王国の王城で見飽きたんだよねと考え、せっかくの旅路の最終が厄介事になってげんなりしていた。
「……噂は聞いている竜王国の至宝と。」
「それは過分な呼び名ですわね。」
私は一応は普通の部類の人なのにねと思いながら、けらけらと軽く笑うと、馬車が止まった。
「兄様にメロメロじゃない人なんて久方ぶりねぇ!」
ピキリ
カメロン皇女が何気ない感じで発した言葉で両者共に緊張が走る。
余り、そっち側の話題は避けたい。
特にユリウスが。
手を繋いでる指の小指が弄ぶ様に私の手のひらに、カリカリと引っ掻いてくる。
チクチクと軽く怒ってるのか、手の内に見えない様に器用に小指だけ竜化しかけている為爪が食い込み痛みかゆい。
相手側からは変わっているのがわからないだろうけど。
この状況下でもイタズラしてくるユリウスをチラリと見ると見た事が無いぐらい人形の様な無表情は感情を見透せない。
カタリ、タッタッタッと外で静寂に包まれた馬車の空気を壊す様に軽快に駆けてくる軽い足音がしてバタンっと扉が開いて光が差し込む。
「兄様、お土産は!」
まだ小さい無邪気な子供が扉を開けた。
アッシュグレイの髪にオレンジ色の瞳が可愛いらしいローベント君と同じぐらいの年齢だろうか。
ハッとして知らない私達も乗っていた事に今更気がついたらしくもごもごと何か声にならない声で言っている。
「コンラッド殿下ぁぁ」
焦った声をあげ扉の向こう側から追いかけてきた侍従がぜぇぜぇと追いついた。
「お客様が乗っていると……あぁ遅かった。」
「遅かったじゃないわよッ……びっくりしたじゃないの。また世話係に2人共お説教ねぇ?」
カメロン皇女はヒヒヒッ笑いながら立ち上がり、コンラッド殿下?をひょいっと服を摘み、どかせながらスタンッと軽く降りた。
「お前等…全員説教を覚悟しとけ…」
心底だめだと呆れてる声を上げて、オーウェン殿下は降り立った。
「えっ私は関係なくてよ。」
「先に俺が降りてからだ。」
色々作法すっ飛ばしたな?とオーウェン殿下はカメロン皇女にツッコミを入れてるのが笑える。
まぁ確かに、女性がスカートを翻せて軽快にジャンプするのは、他国の礼儀作法を知らない私でさえたぶんちがうと思える。
ふふふっと私はまるでコンラッド殿下は、ローベント君2号ねと笑ってしまい、ダムが決壊した。
「………お人形さんが笑ったぁ」
ずるずるとオーウェン殿下に引きずられながら、そう溢したコンラッド殿下はなんだがぼおっとした表情を浮かべている。
殿下達は全員先へ宮殿?らしき建物へ向かって歩いている。
2人きりになった私達は動かないユリウスを不思議に思った。
「降りないの?帰りたい?」
私はなるべく優しく小さな声でユリウスに声をかけた。
沈んだ表情をして、ジッと私の瞳を見つめる無表情のユリウスはなんだが深淵の底を見ている様な危なさがあり、私は不安な気持ちでいっぱいだった。
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