愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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新たな草木が靡く風の章

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「あの二人遅いですね……そろそろ私は帰りますね。後の二方に申し訳ないとお伝えください。」

少し待っていたがあの2人は来なかった。

サミュエルと話していたが、私の事を根掘り葉掘り聞いてきて、答えられる事は話していたが、サミュエルの事を聞いてみようとしたがはぐらかすばかりだ。
深海のスープと書かれていた物を飲んだけど、ココナッツの様な甘さとピリッとくるスパイス?だろうかが混ざりあって珍妙な味だった。

「そうですね……もしかしたら来れなくなったのかもしれませんね。」

私はサミュエルさんがにっこりと微笑んだ後、立ちあがろうとソファーから腰をうかそうとするとぐらんぐらんと立ちくらみが起きた。

「おっと……シアさん大丈夫です?」
「さ、触らないで」

ガシッと支えられてユリウスではない男性の身体の感触に驚く。

匂いもスパイスの様なツンとした香水だろうか。ユリウスでは無いと主張している様だった。

「……な、なにか飲み物に……ったのね」
「何の事でしょうか?具合悪そうですから近くの宿屋に行きましょうか。ここにずっと居たらお店に迷惑ですから。」

サミュエルに抱えられて、私はぐらぐらする視界の中腕輪の連絡をしようとしたが手さえ録に動けない程気持ちが悪い。
ごそりとバックからなにかを取り出し、叫ぼうと口を開きかけた私に、それを口元に咥えさせられて結ばられた。

「余り……暴れないでいたら気持ち良くなれますよ?暴れたら調教しないとだめですけどね。」
「……ぐっ……」

サミュエルは私のローブのフードを被せてきて、フードの隙間から見える道筋で連れ込み宿に向かおうとしていた。

夕暮れから夜に変わろうしている道にぴちゃぴいゃと水音がしていて、雨が降り始めていた。

「タイミング悪い雨ですが……しかし、匂いが消えて良いかもしれませんね。」
「……」

ぐらぐらと揺れる視界の中、身体を捩ると下半身が熱い。

「……っ」
「媚薬も仕込んだのですが……効き目はあった様ですね?」
「……」
「だんだんと私を誰かだと……」

ユリウス?
ユリウスでは無いはずなのに、身体を支えいるのがユリウスだと認識してしまう。

そうして興奮してくる己の身体が憎い。

匂いは違うのだというのに。
だんだんと意識が遠のき、ゆらゆらとまるで水面の様に、揺れてきてユリウスが言っていた俺の所に来てという言葉に私は思い出した。

そうだ、転移すればいい。
身体は言う事を聞かないけれど、魔力なら……

しかしながら、魔力を操作しようとするといつもなら簡単に操作できるのに、今は流れる水の中に落ちた木の葉のように荒れ狂い、全然扱えなかった。

チリッと腕輪にきた通知が来たのを感じて私は望みをかけるしかなかった。

「……」
「なぜ………っ……!」

なにかを言っている声が聞こえたが、ぐらぐらとする視界と意識は途絶えそうだ。


雨で湿り気を帯びてきて、身体は気持ち悪い。がぐんと一段と大きく揺れてびちゃと鉄の臭いがして、なんだろうと思う。

がたんと倒れたり、ガシッと震える誰かに抱きしめられて私は怖い。

「………ア」

ユリウスの声が聞こえた気がした。
あぁ、とうとう幻聴も聞こえてきた。

「………たすっ……ごほご」

するすると口元の布を取られて、私は叫けぼうとしたがごぼっこぼっと咳き込む。

「大丈夫……シア?」
「ユリウス……たすけ」

私はとうとう意識が保つ事ができなかった。


暗闇に落ちていく中、もうユリウスと出会う事はできないのかなと今回もだめだったのかと諦めていた。






「………」
「シア起きて……」






誰かに身体を触られる感覚や、身体を拭う感覚。


私は飛び起きてるといつも部屋で、隣で本を読んでいたユリウスと目が合った。

「ここ本当に……家?」
「シア大丈夫か?」

私はもう何もかもが信じられずにベッドの上を歩き、ドアへと行こうとすると背後から抱きしめられて止められた。

「シア……どこ行くの?」
「……離してっ」

この話しているユリウスも私の脳内がつくった偽物かもしれない。

「……嫌だ……また君を失う所だった。」
「……」

本当に、ユリウスなのだろうか。
もがきながら扉を開けると、いつもの室内。窓から見える景色はいつもので、私は安心してしゃがみ込んだ。

「……シア……一緒にいてくれる?」
「ユリウス……ごめんなさい。素直に頼れば良かったのかもしれない。」

扉を閉められて、身体を抱えられて運ばれる。
いつものベッドの感覚に安心した。

「私ね……変な薬?が入ったスープを飲んでしまって……わからなくなったの。ここが本当に自宅なのかと不安で。」
「反応はあるし、食べたり飲んだりする事はできるけど意思が無くて……まるで人形のようだった。」
「えっ?……私さっきまで意識無かったのよ?」

驚いてユリウスの方を見ると、抱きしめられる。
胸の辺りにユリウスの顔が埋もれて、震える彼を抱きしめる。

「鼓動しているのを確かめるのが癖になってて。」
「ユリウス、どういう事なの?」
「あぁ、君が飲まされたのは、新種で最近一部で流行っている多量含ませれば竜人族でも効果のある興奮剤の艶花と呼ばれる物や全感覚がズレが生じるシュージャ、それに意識を眠らせるザクシが含まれていたようだ。艶花は独特な甘ったるい味と反対のスパイスの様な味が印象的で、即バレるから使われないのが一般的なのだけれど、君は知らなかったよな?……余り近寄って欲しくない界隈の方だからと教えなかった俺のせいだ。」

彼がたくさん言ったのをぼんやりと聞きながら、理解するのに数秒かかった。

「えっ……と」
「最近一部の巷で扱われている薬で、危ない事からこの国でも禁止品にしようかという動きになっている。君に使われただろう薬の効果を消す薬はもう飲ませた。」

胸から彼が顔を起こして、青い瞳と目が合い、押し倒される。

「ユリウス、ありがとう……怖かったの。」
「早くに俺に頼ってくれればこんな事に繋がらなかったけれど、まさか学園の生徒まで手が及んでいるとは思わなかった。それですぐに君の所に行けなかったから……」

ポロッと涙を流している青い瞳を見て、惹きつけられる。

「なにがあったの?」
「授業終わりにリーンハルトと別れて、君が来る可能性のある塔に向かっていると、帰宅時間で混む大通りで背後から刺されたんだ。編入生の生徒で、俺に変に話しかけてくるからおかしいと思っていたが……」
「それってグライナー?さんだっけ?」
「いや、違う。あの人は編入生ではないから。別の人だ。最近編入したと言っていた。またあいつみたいな奴かと油断していた。」
「背中大丈夫なの?」

私はズレて背中を見ようとしたが、がっしりと抱きしめられていて見れない。

「あぁ、もう大丈夫だ。神官に治して貰った。」
「ユリウス、それであいつは……」
「あぁ、俺が半殺しにして事情を聞こうとしたがそいつが口を開きかけた途端自殺しやがった。」
「……街の被害は?」
「それを気にするのか?……竜化して降り立ったから一角は復旧の為に少し払ったが。将来の俺たちの子供の為に貯めていた貯金から払ったから、公的な物ではないから安心して。他に被害者は居なかったはずだ。それに、使われた薬は後遺症は残り難いのも不幸中の幸いだ、安心して。」
「………なら良かった……」
「だからこそ、巷で人気になるのも難だけどな。」

瞼を伏せた彼の表情は憂げで、民の事を案じている彼の表情を変えたいと思い、私はそっと顔を近づけて軽く唇に触れるだけのキスをした。

きょとんとした彼の顔は愛おしい。

「シア……」
「ユリウス……お願い、今してくれる?」
「……病み上がりだから……」

そう言ってどこうとして首を振った彼の首元に顔を近づけて、逆鱗を舐めた。

「っ………シア煽ると止められないからっ」

がぐっと揺れ震えた彼の青い瞳は熱がこもり、私が誘った事ですっかり熱情を孕んでいた。
両腕を押さえられてのしかかられ、ユリウスの顔が近づき、性急に奪われる様に唇を重ねられた。
私はいきなりきた事で、口を閉じていたが、唇の上をユリウスの舌が舐めて開けてと唸りながら舐められ私は、口を開いた。

していなかったからか、番の匂いが鼻腔に充満していて、私は愛おしさと失うかもと思っていたのが失われずすんで、すっかりと欲に溺れた。
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