電車の男ー同棲編ー番外編

月世

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倉知君の ※

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〈倉知編〉

 やけに近くで見ているなと思ったら、加賀さんが言った。
「倉知君のちんこってさ」
「え?」
 一気に血の気が引いた。重大な事実を告げる前触れのような、深刻な声色だったからだ。
「え、なんですか? 俺の、なんか変ですか?」
 慌てて訊くと、加賀さんがうわの空で「うん」と言った。その「うん」は肯定の「うん」なのか、はたまた別の意味の「うん」なのか。次の言葉を待ったが、加賀さんは再び「うん」と言った。
 俺のちんこは変らしい。
 目の前が暗くなる。
「あ、ごめん、そうじゃなくて」
 俺の股間をまじまじと眺めていた加賀さんが、さっきと変わらぬテンションで、同じ科白を繰り返した。
「倉知君のちんこってさ」
「は、はい、俺のが、なんですか?」
 黒いとか、臭いとか、汚いとか、ネガティブな形容詞を予想していると、加賀さんが「大きいよね」とさらりと言った。
「……えっ」
 動揺して少し体が跳ねてしまった。
「はは、こっちも反応した」
 褒められた自覚があるのか、加賀さんの手の中でペニスがびくんを上を向く。
「俺、大きいですか?」
「うーん、正確には大きくなったなあって」
「そ……、そうですか……っ」
 大きいことがいいことなのかはわからないが、なんとなく嬉しくて、弾んだ声が出た。加賀さんが目を上げて俺を見る。
「成長したとしたら、俺のおかげだよな」
 上目遣いで俺を見ながら、裏筋に舌を当てた。根元から先端まで、ねっとりと舐め上げてから、身を起こす。
「ちょっと比べてみる?」
 俺の上にまたがって両膝立ちになると、自身のモノを、ごしごしとしごく。その動作をうっとりと見つめ、素朴な疑問を口にした。
「比べるって、どうやって」
「別にこう、くっつけて、目視で? どう?」
 上に乗った加賀さんが勃起したペニスをくっつけてくる。まるで鍔迫り合いのように、二本が擦れ合っている。
「わ、わかりません」
 声が、上ずった。加賀さんは顔色を変えずに、裏側同士をずりずりとなすりつけてくる。腹の上で極限まで膨らむ自身を、息をつめて見守った。
「これは? どう?」
「あ……っ、あの、気持ちいいです」
「そうじゃなくて」
「加賀さん、加賀さんの、先っぽから出てます」
 先走りがにじみ出て、丸い水滴になっている。目が、釘づけになった。ナイトスタンドに照らされたそれは、瑞々しい輝きを放っている。
「まるで真珠のよう……」
「ちょ、真顔でそういうのやめろって」
 吹き出して、腹を抱える加賀さんのイチモツに、素早く手を伸ばす。
「動かないで、測ります」
「お、おう」
 手のひらに、二人分のぬくもり。対面座位の体勢で、腰を浮かせ、揺すってみる。
「ん……」
 加賀さんの爪が、肩に食い込んだ。眉間の皺が色っぽい。俺の動きに合わせて、加賀さんの腰が、揺らめく。
 赤く染まっていく首筋。息を荒げ、観察する。手中には、怒張していく二人の欲望。動きが激しくなっていく。止まらない。二人の呼吸が、乱れていく。
「はあっ、あっ、あー……、やべえ、気持ちいい、……イッてもいい?」
「俺も、……もう、イキそうです」
 イクことにした。
 先に、俺が達した。吐き出される精液が、ぬちゃ、と音を立て、直後に加賀さんが「う」と小さく声を漏らした。右手の動きを、止めない。最後の一滴まで、搾り取る。
「はっ、あっ、もう、いいから」
「加賀さん、気持ちいい?」
「うん、ん……、ああもう……」
 ぎゅう、と首に抱きついた加賀さんが、俺の首に唇を押し当てて、「好き」とつぶやいた。
「またイッちゃいそうです」
 きつく抱きしめ、目を閉じた。
 心臓の鼓動を感じる。
 満ち足りて、全身に安堵が広がった。
 気持ちいい。
「加賀さん」
「ん」
「どっちが大きいか、わかりませんでした」
 何が、と言いかけた加賀さんが、思い出したように吹き出して、気だるげに息を吐く。
「うん、まあ、……どうでもいいな」
「ですね」
「とりあえず」
「はい、もう一回?」
「する?」
 復活の兆しがある。二人同時に、股間を見下ろした。
 もう一度、キスから始めよう。

〈おわり〉
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