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第3 嫌いではなくて、好きでした 1

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朝のご機嫌伺いのご挨拶からどれぐらい時間は経ったのでしょう?

コンコンコン。

「テディエス、居ないのか?」

ノックの音の後からアレクス様の声が聞こえたような気がします。でも一度もアレクス様が私の部屋にいらっしゃったことはございません。だからこれはきっと私の夢なのでしょう。

今回はいつもよりも何だか痛みが酷かったせいか、意識がどこかボンヤリとして、身体も上手く動きません。さっさと部屋着に着替えなくてはいけないと、ちゃんと分かってはいるのですが、まださっきアレクス様にご挨拶した格好のままで転がっています。

こんなだらしない事ではいけないのですが、寒いのに、とても熱い身体は、少しもいう事を聞いてくれないのですから、どうしようもないのです。でも。

「このまま応答がなければ、扉を勝手に開けるが良いか?」

夢の中だというのに苛立った声なのは残念ですが、アレクス様のお声が聞ける夢は貴重です。それをこんな寝苦しくて、みっともない格好だというのに、見られて得をした気分でした。

しかも返事がなければ勝手に開けるとも仰っています。そうなれば夢の中にアレクス様のお姿も現れるということかもしれません。

お側にいることができる時でも、今まで緊張で近寄ることさえできない私だったのです。ですから、せめて夢の中だけはとちょっと期待もしてしまいます。

あぁ、でも。夢の中でも冷たくあしらわれる可能性だってあるはずです。そうなればいったいどちらが良いのでしょう。私はそんなことを一瞬だけ考えて、それでもやっぱり少しでもお顔を拝見したいと思ってしまいました。

「入るぞ」

だから、入ってくるアレクス様のお姿をだいぶ楽しみにしていたのです。

「テディエス!? どうした!?」

それなのに近付いて来たはずのアレクス様のお顔が私にはなぜか見えないのです。そこで初めて私は夢の中のお部屋が真っ暗なのだと気が付きました。

いったい何時の設定なのでしょう。私の夢なはずなのに、どれだけ祈っても明るくなる様子はありません。

「聞こえるか、テディエス!?」

それでも近くで聞こえたアレクス様の声と一緒に抱き上げられた感覚が身体にあるのです。

「……温かいです」

寒かった所に感じる温もりに、私はフフッと思わず笑ってしまいます。でもこんなに近くに居れたことなんてなかったのです。

「……アレクス様、お部屋が暗くて残念です…お顔が見えたら良かったのに……」

きっと今なら優しい顔を向けて貰える気がするのです。なので、私は残念でしかたありませんでした。

「……どうしてだ? お前は俺を嫌っていたはずだろ?」

「ふふっ、おかしなことを聞くんですね」

「……」

「私の夢、なんですから…私がアレクス様を好きなことは、ご存知なはずですよ」

「それならなぜ、嫌いだと?」

「困らせて、しまうからでは、ありませんか……アレクス様はお優しいから、私の気持ちを知ってしまったら、嫌いな私相手でも、冷たくできなくなってしまうでしょう?」

好きな人は困らせたくはないものです。何度も思ってきたことなのに、どうしていまさらそんなことを聞いてくるのか分かりません。私はそんな自分の夢に少しだけ戸惑ってしまいます。
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